夢の中にて 8

 世界を振るえさす灼熱の太陽が、涼香りょうかの目の前に広がっているはずの海を干上がらせていた。


「海が……干上がっているわ……⁉」


 あまりの光景に口が塞がらない涼香であったが、ピチピチと跳ねる魚を目にすると開いた口から涎が溢れかけていた。


「ちょっと先輩、涎ヤバいですよ」


 隣にいる涼音すずねから注意されてそれに気づいた涼香は口を閉じたが、また違うことに気づいて口を開いてしまう。


「夢なのにその呼び方なの……⁉」

「なに言ってるんですか?」


 夢なら『涼香ちゃん』と呼んでくれるはずなのだが、なぜか今回の夢の中の涼音は『先輩』呼びだった。


「もしかしてこれは現実なのかしら?」


 もしかするかもしれない。


 それを確かめるために涼香はイメージする。


「……夢みたいね」


 目の前に現れたビキニ姿のスイカを見ながら呟く。


「うわぁ……」


 なんでビキニなんですか? と言いたげな涼音。


「涼音。いつもみたいに甘えてもいいのよ?」

「いつもみたいってなんですか⁉」


 両手を広げる涼香に戸惑いを隠せない様子の涼音である。


「ぎゅってしてあげるわ!」

「仕方ないですね……」


 嫌な顔をしながらも、涼香にぎゅっとされる涼音であった。

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