ケーキ店にて

 ある日の休日。


「あら、美味しそうね」


 涼香りょうか涼音すずねはショッピングモールに来ていた。


 時刻は午後二時。休日ということで人は多く、二人は時間をずらして飲食店を見て回っていた。そんな涼香が足を止めたのは、あるケーキ店の前だった。


「昼ごはんにケーキですか?」

「そうねえ……」


 腕を組んでいた涼香は、あるポップを見つける。


《大好評‼ 平日十六時~ 高校生限定一日十五食》


 そう書かれたポップには、チョコでコーティングされたフルーツが乗った豪華なケーキの写真が載っていた。


「おー豪華ですね」


 学生向けということで値段の方もお手頃価格だった。


 しかし――。


「平日の十六時から、ねえ」


 販売後何分で売り切れるかは分からないが、恐らく学校帰りに寄っても残っていないだろう。


「間に合いそうにないですね」

「そうね、残念だけど諦めるわ」


 残念そうに言うと、涼香はショーケースに目を向ける。


 さっきは間に合いそうにないと言った涼音だったが、急げば残っているかもしれないと思い、一度学校帰りに寄ってみよう。そして、涼香を驚かせよう。そう決意した涼音は涼香に並んでケーキを選ぶのだった。

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