涼音の用事編
休み時間にて
ある日の休み時間。
涼香のただならぬ雰囲気に、となりの席のここねと、涼香のクラスにやって来た
「そんなに考え込んでどうしたの……?」
おずおずと尋ねる菜々美にちらりと目を向けた涼香は重たい口を開く。
「最近……」
「最近……?」
涼香の言葉を繰り返しながら菜々美が続きを待つ。
「
その言葉を聞いた瞬間、菜々美が身を引く。それを見たここねが気をつかって言葉を繰り返す。
「す、涼音ちゃんの……?」
「用事が多いのよ……‼」
絞り出すように告げられた言葉に、ここねはどうすればいいのか分からなかったが、菜々美がここねを守るように優しく抱きしめる。
「彼氏じゃないの?」
菜々美は適当な言葉を返したつもりだったが。
「そんな……⁉」
涼香にクリーンヒットだったらしく、力なくうなだれる。
ちなみに涼香達の通う学校は女子校だ。彼氏となると必然的に学外の男性になる。
「でも、涼音は普段から私といるのよ、男と出会う隙なんてないわ! いえ、涼音は可愛いからそこらの男なんて一目見るだけで落としてしまうわ。悪い男に言い寄られているのだとすれば――」
相変わらずだなあ、と温度の低い目で涼香を見ながら菜々美はここねの頭を撫でている。
そろそろ休み時間が終わる頃だった。
「本人に聞いてみればいいじゃん……」
投げやりにそうい言った菜々美はここねに挨拶すると自分のクラスに戻っていった。
「涼香ちゃん、もう休み時間が終わっちゃうよ」
「え、あ、そうね。この後涼音に聞いてみるわ」
ここねは優しく微笑むと次の授業の準備を始めた。
クラスには生温かい空気が漂っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます