第41話 エルンハストの酒場
「す、すびばせん〜ぇん」
アンネリエッタは小さい体をより小さくしている。
アナスタシアはお胸の位置の調整をしながら
乱れた髪を直している。
「でも仲直りしてよかったじゃない、将軍。あ、今はジャックか。」
マリエルは土下座したまま、無言だ。
ヘレナはちょっと気まずいようだったが何とか取り繕った。
「いいのよ、もう私、女帝じゃないし、”今”は町娘だもの。」
ユージーンは椅子に腰掛けたまま腕組みをして
何か考え込んでいる。
見られたことに関しての羞恥心は感じられない。
さすが王だ。
「ヘレナ。ー 君に説明する時が来たみたいだ。」
「何のこと?」
「3人の裸婦 ー。」
ヘレナの脳内に閃光が走る。
チュッ ドォォォォォォ〜〜〜〜ッッン。
何かものすごい爆弾が投下された様です。
その話を今、ここでする?
それって結構、際どい話なのではなくて?
ヘレナは自分の顔面から血の気が引いていくのがわかる。
ユージーンはドアの前に居並ぶ3人を見て言った。
「3人の裸婦は、彼女たちだ」
え。
私、この方たちと姉妹になるのかしら。
あら、どうなのかしら。
裸婦ってことは、その
え、なんだっけ。そういう?ー え? どういうこと?
訳がわからなくなり、涙が勝手に出てきた。
ー どうしてこんな高低差のある感情。
ヘレナは動揺の中で、逃げ出したい気持ちを抑えてる。
マリエルが顔を上げた。
「ヘレナ様。ー 私たちは、あの日任務途中で
追われていました。ー
ー娼館へ帰ることもできず、私たちは暴漢に襲われかかっていました。
私たちの存在は、機密を扱う人間ですから
死ぬ時は痕跡をを残すわけにいきません。
そして、その機密は任務が終わるまで漏らすこともありません。
その時、助けてくれたのは将軍です。
帰る場所がないことを心配した将軍は
一番プライベートな場所で私たちを匿ってくださいました。」
間髪入れずにアンネリエッタが口を挟んだ。
「そうなの、ソフィー。あ、違った、ヘレナ様。
ー めちゃんこクズの大男が、アナスタシアの服破って
私みぞおちキックしたけど全然、効かないんだもん。焦ったよ〜。
ヤヴァ谷〜って感じ。
服みんなボロボロでさ〜、おもしかったね、でも。」
「ー 不敬よ、アンネリエッタ。」
アナスタシアの一言で、アンネリエッタはしょぼんとした。
「 ヘレナ様。 ー 私たちはあなたに忠誠を誓う者。
嘘も、偽りもございません。」
マリエルが片膝をついた。
そしてアンネリエッタ、アナスタシアが姿勢を正し
片膝をつく。
首を垂れた。
この、首を垂れるという行為は
お気に召さなければどうぞ跳ねてもらって構いませんの、図だ。
ー 彼女たちに、嘘はない。
ユージーンがその横に立った。
「女性にこんな説明をさせるのは、酷だが
俺は将軍で王だ。
ー 国の機密を守るなら、これらも然るべき対応になる。
そして、俺も誓っているんだ。ヘレナ。
ー 君に忠誠を誓う者。 嘘も偽りも、ない」
そして片膝をついて首を垂れた。
ヘレナの涙は止まっていた。
なぁんだ、そんなこと、と笑ってあげられたら良かった。
けど胸の中ではごちゃごちゃ、まだ整理がついていない。
何回も何回も、言い聞かせてる。
(ー わかった。わかったわ、それなら仕方ない。)
音なく立ち上がるヘレナは、女帝のそれだった。
めんどくさい感情に完全に蓋をした。
今、目の前には
命をかけて仕事をしてきた者がいるのだ。
彼女らに報わねばならない。
褒賞に値する行為を、こちらこそ取らねばならない。
ヘレナは女帝だ。
この場で、今、するべきは ー。
「 機密部隊の仕事ぶりは、聞きしに勝るものです。
ー よく頑張ってくれました。
国に仕え、私に仕えてくれたこと、誇りに思います。
ありがとう。」
完璧な女帝のほほ笑みだ。
まるで、
人物像や、関係性を除外したような
仕事だけを評価するような
その言葉だけが、3人に落ちてきた。
冷たさはない。労いがある。
3人は顔を上げた。
ヘレナは微笑む。
「もう、行ってよろしくってよ」
ーなのに、ヘレナから謎の冷気が漂った。
3人はそーっと部屋を後にした。
再び、2人。
頭を下げたままのユージーンに、ヘレナは立ちはだかった。
見た目は町娘で、ユージーンは八百屋だから
なんだか謎のお叱りを受ける彼氏と怒れる彼女のようだ。
「ユージーン。聞かせてちょうだい。」
「なんでもどうぞ」
姿勢は片膝をつき、頭を下げたままだ。
「ー 私が女帝だった頃、娼館へは?」
「ー...一度だけ」
「金魚屋?」
「ー はい」
見えないが、ユージーンは嫌な汗をかいているだろう。
「お相手は?」
「ー アナスタシア」
ヘレナの額にもあら不思議。
血管ってホントに浮き出るんだね〜。
ほほえみは決して崩れていない。
「 ー よ か っ た ? 」
おぉ、ヘレナよ、その質問は悪手だ。
娼館へ男が行って
よくないわけがなかろう。
よくなりたくって行くのに
よくなかったなどと、どの口が言えようか。
長い沈黙だ。
ー ユージーン、答えるな、答えてはいかん。
しれっと上手くかわせ。
若気のなんとか、とか
酔っ払ってて、覚えてない、とか。
この解答次第では、ヘレナはアルデラハンへ行くことが決定するぞ。
せっかく、さっき愛の告白をお互い交わしたではないか。
それをこんなことで無為にしてはいかんぞ。
お前、王じゃん。
「...勃たなかった 」
泣いていい。
泣いていいぞ、ユージーン。
この切実な告白に、エルンハスト国の男性だけじゃなく
アルデラハンの全国民男性はきっとそう言うはずだ。
この男性の一番言いたくないし
晒したくもない事実を、ヘレナは顔を真っ赤にして聞いた。
(たっ、勃たないって、何が、あ、アレが?
ーえ。でも馬に乗ってたときは...)
ヘレナも返答に困る。
ユージーンは続けた。
「男は緊張したりすると、そういうことになることがある。
けど俺は ー 俺は
ー ヘレナじゃないと嫌だった。」
ヘレナはカッコつけてた自分をすごくすごく恥じた。
(何が、心のあり様よ。
ーただ、他の女と何かしたってのが嫌だったってだけじゃない。
心の広いフリして、本当はとっても狭い自分の心で
彼をこんな思いをさせてまで ー)
ヘレナは片膝をついて首を垂れるユージーンに膝をついて座り込んだ。
目線が合う。
ヘレナはユージーンの顔を両手でホールドした。
ユージーンは申し訳なさそうな顔をしている。
誠実な薄い青の瞳が、ヘレナを見つめた。
「ふふ、大好きよ」
ヘレナはユージーンに、接吻した。
ユージーンもヘレナを強く強く抱きしめて
ガッチリホールドを決め込んだ。
えぇ、私
はしたないでしょう?
いいの、今町娘だし。
彼を試す様なことしてしまったし
殿方のプライドを傷つけてしまったことですし。
初めての接吻でしたけど
それぐらいの価値はあるでしょう?
だから、この接吻はその ー
あの
ちょ、
なが、
長っ
長い!しっ、
い、息がっ
もがくヘレナは酸欠で本当に死にそうだ。
三途の川で誰かが手を振っている。
涙目で酸欠で死にそうな顔をしたヘレナにようやく気づいたユージーンは
小首を傾げながら、ヘレナの頬をさする。
小刻みに浅い呼吸を繰り返すヘレナにユージーンは諭すように言う。
「鼻で息をするんだよ」
そう言って、また口付けた。
ヘレナの意識は遠くなる。
初めての接吻だったし
やり方なんて知らなかったし
ただの接吻に、なんだかドゥルンとかニュルンという
不思議な物体が口の中を蹂躙してくるものだから
きっと、宇宙人がヘレナを人体実験か何かしてるんだと
そう思ったら、意識を手放した。
その認識は正しいようだ。
ヘレナの舌と意識は、煩悩炸裂破廉恥魔人に
拉致(アブダクション)されて行った。
「ねぇ、あの2人、遅くない?」
アンネリエッタは皿の上の枝豆を一つ一つ取り出している。
「ー 大人だから大丈夫よ」
アナスタシアはコップのワインを飲んでいる。
マリエルは心配そうな顔をしている。
時々、階段の方を見てはため息をついていた。
「ねぇ、ネルは?」
思い出したようにアナスタシアがマリエルに聞いた。
「あ、本当だ。ソフィーと一緒に行ったはずなんだけど」
カラン、と酒場のドアが開いた。
ネルだ。
ー?
ちょっと...というかかなり着崩れた服。
絡んだ髪に
上気した顔、潤んだ目。
首すじに残る謎の赤い斑点。
かろうじて首筋をネルは襟元で隠しながら、こちらへ来る。
こそっとアンネリエッタがアナスタシアに言う。
「あれ、やってんね」
アナスタシアは黙って頷き、タバコに火をつけた。
ネルはマリエルのそばへ来て小声で聞く。
「マリエル、ー ヘレナ様は?」
「上にいる。」
ネルは深いため息をついて安心したような顔をした。
「大丈夫?」
マリエルがネルを覗き込む。
(絶対事後だけど。絶対、大丈夫じゃないだろうけど)
ネルは頬を赤くしたまま、マリエルに耳打ちした。
「ーー、ー。」
「はぁ!!??」
「そういうわけだから、あとよろしく」
ネルはそう言って、酒場を後にした。ー 何があったんだ、ネル!?
入れ違いに入ってくる人影はサスケとルイだ。
最近顔を出すようになったらしい。
ルイはカウンターに腰掛けて、マリエルを見つけて
小さく手を振って会釈した。
マリエルもニコッと微笑む。
ここでは多少、他人行儀なぐらいがちょうどいい。
アンネリエッタがカウンターの向こうでオーダーを聞く。
「初めまして、かなぁ。
私たち、ずっと外出てたから会ったことないよね」
「うん、俺らも最近ここ来始めたし、会ったことはないね。
ね、サスケ、ー サスケ?」
サスケは反対側でタバコをふかしながら
男としゃべっているアナスタシアを見ていた。
「あ!! あ〜ぁ〜あ!!!!! ー お前!!!」
アナスタシアがサスケに気付く。
「あら」
アナスタシアはほほえんだ。
そう、サスケにお酒をたらふく飲ませたのも
お酒にたらふくなんかのお薬を混ぜたのも
アナスタシアだ。
当時、サスケはアルデラハンの密使だった。
こちらと通じていることはあらかた押さえていたが
その内容までは知ることがなかった。
アナスタシアはサスケから情報を聞き出すために
あらゆる手を使ったのだ。お酒も死ぬほど飲ませた。
でも、自白剤も催淫剤も
睡眠剤も、痺れ薬も、とにかくな〜んにも。
何も効かなかった。
アナスタシアは困りに困った。
ので。チュッとした。
コテン、とサスケはやられた。
効いたのは、ほっぺにチュウだった。
サスケはアナスタシアの前に陣取る。
「あんときは、どうも。」
アナスタシアはほほえんだままだ。
「あなた、生きてたのね、よかったわ」
タバコの煙がサスケを取り囲む。
「よく言うよ。ー 俺は忘れてねぇからな」
「ふふ、私に、会いたかったのね」
アナスタシアはサスケにウィンクしてきた。
サスケはちょっとクラッときた。
なぜって、アナスタシアは好みのど真ん中だからだ。
(お胸は大きい。そこはまぁ、どうでも。
でも、腰からお尻にかけてのカーブが黄金律だ。
ー 靡くなよ。あれは危険な女だ。)
「落とし前、つけてもらおうじゃねーか」
サスケはアナスタシアを見据えた。
「ねぇ、あなたの名前は?」
アナスタシアは顔の脇の髪を指先でどかしながら目を細めた。
そしてエロい。
「あ?ー ...サスケ」
言うと同時に、アナスタシアはサスケの耳元へ来た。
優しく撫でる小さい声。
そして、やっぱりエロい。
「私はアナスタシア。ここではカルメン」
そして、サスケの耳をアナスタシアの唇がそっと、甘く噛んだ。
「これが ”落とし前”、ー ね?」
エロい。
ー サスケ、陥落。
階段を降りてくる高貴な八百屋のジャックこと
煩悩炸裂破廉恥魔人、今は王のユージーンは1人だった。
二つ名どころか、名前が増えていく...。
マリエルが駆け寄って、尋ねてきた。
「へ、ヘレナ様は!?」
「あー...、うん、なんか疲れてたみたいだから休ませた」
ユージーンは気まずそうに言う。
マリエルはとりあえずホッとするが
すぐに心配な顔をした。
「大丈夫だ。ー ヘレナはわかってる。
俺が、責任もつから心配するな。」
マリエルは俯いたままだ。
深く深呼吸をしたユージーンは、マリエルの肩をポンと叩く。
「真面目なのはいいことだが、それで自分の首を絞めるな。
ー クレイトンが余計に心配する。
そういえば、アイツここ来てないか?」
店内を探すが、どこにも見当たらない。
「まだ、来てないのかもしれません。」
「ヘレナが起きてきたら、公園に来るよう伝えてくれ。
ー さっきみたいに覗き見はするなよ 」
そう言って苦笑いしながら、店を出た。
店を出る前、ルイと何か一言二言、喋ってからサスケをチラッと見て笑った。
マリエルは階段を駆け上がる。
ドアを開けたら、部屋の奥に置いてあるソファに寝かせられたヘレナがいた。
「ヘレナ様!!」
「ん゛っ〜、む、 ...む..り〜ぃ」
(どうしよう、ヘレナ様がうなされている。
よっぽど私たちの話が嫌だったのかも...)
それはそうだ。
自分の好きな人の寝室で裸の女が寝そべっていたら
それはカチキレ案件だ。
機密案件だからなお、その話はできなかった。
マリエルはうなされるヘレナの額を撫でた。
(お可哀想に、汗をかいて...)
ハンカチを取り出して、汗を拭う。
「っっぬあ゛っ!!」
元女帝とは思えない声を上げた。
それにもマリエルはびっくりしたが
起き上がったヘレナはなぜだか息が荒い。
まるで全速力で走った後みたいだ。
「ヘレナ様!マリエルです!!
ー 大丈夫ですか?!」
ヘレナはマリエルを見て、安心したように息を吐いた。
「ーはぁ、はぁ、あの。ー ユージーンは?」
「え、先ほど、出て行かれました。」
「そう...」
マリエルは水をヘレナに持っていった。
少し、口につけてからヘレナはポツリとマリエルに向けてか
独り言のようにも取れるように言った。
「ー 接吻があんなのだとは思わなかった...」
「はい?」
「ねぇ、マリエル。ー 接吻って、宇宙人に口の中を何かされるの?」
「 ? ? ? 宇宙人 ? 」
口の中への侵入物に関して心当たりは、ある。
先日、自分も同じ経験を初めてしたからだ。
「う、宇宙人ではないですが、お相手の、その...舌です..ね」
「舌?」
マリエルは何回も頷く。
あまり声に出したくはない。
「舌でよかったぁ〜。し、死ぬかと思ったっぁ〜ぁ」
ヘレナは初めて会った時みたいにフニャリとなっている。
マリエルの心がなぜだかドキドキしてしまう。
(舌で良かったって...いいのか?)
可愛い女の子が泣いている。
これは、なでなでを自由にさせてくれる猫と同義。
そっと、頭を撫でた。ヘレナはコップを握りしめている。
「だって、だって、なんか息苦しいし
死にそうなのに、離してくれないんだもの〜ぉ」
マリエルはヘレナを抱きしめた。
ヨシヨシしながら頭を撫でる。
(なんだか別の性癖に刺さりそうな予感...)
「怖かったですね..」
(なんだ...ヘレナ様も、普通の女の子なんだな)
マリエルは自分の腕にしがみついて喚いている女の子が
愛おしくなった。
「マリエル?」
部屋を覗いているのは、クレイトンだ。
マリエルは目配せして、お取り込み中をアピールした。
察したクレイトンは静かにドアを閉めた。
「マリエル、私、本当はとっても嫌だったわ」
「はい」
「仕事だって、わかってても、嫌だったわ」
「はい」
「クレイトンが、仕事でもし他の女性を抱きしめたら嫌?」
「...はい」
「 ーねぇ」
「はい?」
ヘレナはマリエルの目を見つめて聞いてきた。
「マリエルはクレイトンと夫婦だもの。閨を共にするのでしょう?
ー 彼は勃つ?」
マリエルの意識は別次元へワープし、戻ってきた。
まさか女帝の口から”勃つ”という言葉が
出てくるとは思わなかった。
なんでや、女帝。ー 何があったんだ...。
(腐海に沈みたい。今すぐ。精神安定剤をくれ。)
腐海事項ならすぐに対応できるのに。
「へ、ヘレナ様? あの、それは、その分野は
ー あ、アナスタシアとかアンネリエッタが得意としています。」
ヘレナは思い付いたように顔を上げ
立ち上がり、部屋を出て階段を降りていく。
(た、助かった...)
するりと、クレイトンが部屋へ入ってきた。
(あ、だめだ、これは死んだ)
ソファに座るクレイトンは足を組んだ。
「ー ヘレナ様は面白いことを聞くね」
(聞いていたとかー 死ねる)
「え、そう、で、すかね...」
「今、下にうちの騎士がいっぱいいるんだ。
ーきっと君の観察はこれ以上ないぐらい充実するだろうね。」
微笑んでいる、が、
「でも、だめ。」
「た、隊長?」
「妄想する時間はもうあげない。ー ほら、帰るよ」
マリエルは手を握られたまま立ち上がらせられた。
「でも、ヘレナ様が!」
「ー大丈夫。王がついてるから」
クレイトンの表情は見えない。
後ろをついて歩き出すマリエルは、どうすればいいかわからない。
クレイトンはドアの前に立ち止まった。
「僕は君に勃つからね」
『 〜〜〜〜〜くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!!!! 』
階段を降り切ったところで
クレイトンはマリエルを連れたままヘレナの元へ行き、告げる。
「ソフィー、 夕刻5時に大通りの公園へ」
アンネリエッタと枝豆を食べていたヘレナは笑顔で頷いた。
「僕とマリエルはここで一旦、引かせてもらうよ。
ー 夜にまた、マリエルとは金魚屋で。」
クレイトンはウィンクした。
マリエルは下を向いたままだ。ヘレナが声をかける。
「マリエル、だいじょ」
「はぁ〜い、いてら〜。何なら、金魚屋使っていいよ〜」
アンネリエッタはヘレナの声に被せて言った。
「?」
ヘレナは何のことかとアンネリエッタを見る。
2人に笑顔で手を振りながらアンネリエッタは小声で毒舌だ。
「っチ、どいつもこいつも盛りやがって」
ニッコニコで手を振っている、のに、だ。
(こわっ!!)
ヘレナはアンネリエッタのもうひとつの顔を見た気がした。
酒場のドアが開かれる。
さて、のっそりと大きな男が1人。
花束を抱えている。
「ここに、アンネリエッタは..」
ヘレナの横にいたはずのアンネリエッタはすでに
その大きな男の腕にいた。
(はっや!)
「ソフィー!、これ、彼ぴのダンテ!」
ヘレナは見上げるようにして、その男性を見た。
(あ、あの人混みで見た。)
「
「じゃぁデート行ってくる〜!!」
風のようにいなくなるアンネリエッタを見ながら
ヘレナは、枝豆を食べた。
(お見事です...)
「久しぶりです、ヘレナ様」
横に、ルイが来た。
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