第39話 王妃、町娘になる

この一ヶ月は、充実した毎日だった。


ヘレナにとって、執務もなく

朝のお祈りもなく

顔面をほほえみ固定したままの1日もない。

ユージーンは王となってから忙しいのか、朝花を持ってきたら

すぐに帰るようになった。



けど、朝はやっぱり、まだ早い。4時には起きている。


理由があるのだ。

習慣となっているアルフレートがやってくるし

剣の鍛錬もある。


けれど、アルフレートは以前よりも雰囲気が柔らかくなった。

ヘレナに目を合わせて、おしゃべりをする。


鍛錬の時は厳しいけれど

ふとした時に、優しい目をする。

花も持ってきてくれる。


そして、そのアルフレートとの鍛錬に

なぜかマリエルとクレイトンも加わることになった。

ヘレナは気付いている。

マリエルには別の目的があることを。

そして、その監視をクレイトンがしていることも。



(ふふ、おかしな2人)


鍛錬が終了して、休憩に入るとき

マリエルがヘレナに近付いてきた。

「ヘレナ様。ーアルフレート様って、あの ー」


「?何かしら、アルフレートは殿方にはモテますけれど

 ご本人にはその気がないはずでしてよ。」


ヘレナは先んじて言った。


「えぇ、それは存じております。

 ー、てか、ヘレナ様知ってたんですね...」

マリエルは頬を赤らめた。


「うふふ、婦女子の願望は、美しいままであってほしいもの」


ヘレナの姿はルイが男装していた頃のままだ。

日常生活では令嬢のドレスに身を包んでいる。

鍛錬中は、この方が断然動きやすい。

足を組んで紅茶を啜っている。


「ヘレナ様...でも、アルフレート様って..」

マリエルはアルフレートを間近に観察していて最も重大なことに気づいた。

(アルフレート様は、ヘレナ様のことー)


でも、人の気持ちを勝手に決めつけるのも

それを本人じゃない誰かが言うのも、それは反則だし

やってはいけないことだ。


「?マリエル、どうしたの?」

「ー いえ。 ...あ、ヘレナ様、そういえば ー」

マリエルがヘレナに耳打ちした。


ヘレナの目が輝いた。


「行く!! 絶対行く!!!!」





ヘレナはご招待を受けた。

女子会の。


アルデラハンで大暴れだったあの三人娘に会えるのだ。

これが行かずにおられようか。

ご令嬢のお茶のお誘いだったらやんわり断るけれど

武勇伝をマリエルから聞いていたから

直接お話ししたいと思っていた。



しかも、”これから”準備してすぐに、出発だ。

まだ朝の6時前だと言うのに、なんとも騒がしいものだ。

夜は菓子をつまみながら大騒ぎしてもいい”場所”で

キャッキャウフフが待っている。



ー ヘレナは知らない。

”どこ”で、そんな乱痴気騒ぎができると言うのか。


ある。ー フィーバーしても大丈夫なところ。

機密部隊のー。



エルンハストの娼館 ー。



アンもナンシーも、眉を顰めた。だがマリエル様がいるし

他の方々も機密部隊の人間だと言うから、渋々用意をした。


トランク二個分、菓子を用意した。

(食べる用、あげる用、お土産用)

ヘレナはルンルンだ。

(初めてのお泊まり会よ!!

 ーみなさんと、仲良くなれるのかしら、ドキドキする)


マリエルと馬車に揺られること、40分。

なんとエルンハストのど真ん中に、その娼館はあった。


外観はやはり、娼館ということもあってか

それなりに妖艶な雰囲気だ。


「ふふ、ここは金魚屋って呼ばれているのです。」


「え?きんぎょ?」


「えぇ、各部屋に大きな水槽があって

 ーそこにたくさんの金魚を飼っています。 なので金魚屋。」

マリエルは説明しながら

娼館の横にある有名な高級洋装店の店の扉を開く。


「ねぇ、マリエル。ここは違うんじゃ。」


「あら、ヘレナ様。ー 

 ヘレナ様が娼館へ入ったなんて噂が立ったら私たち、クビですわ」


この高級洋装店と娼館は繋がっていた。

ご丁寧に見えない隠し扉から地下への階段を下り

そこから娼館への道を通り、また階段を登って扉を開いた。


鮮やかな朱色の壁紙には、草花が金で透かし絵になって描かれている。

辺りを漂い香る、強い白檀の香。

床は黒と白のマーブル模様の大理石。


ザ・娼館、というモデルルームのような娼館だ。

だが、その中でも一際大きく異彩を放っているのは水槽だ。

部屋の真ん中に大きな球体のガラスのような水槽に

金魚たちが悠々と水中を踊るように放たれている。


「まぁ...立派なものね...」

ヘレナは思わずため息が出る。

ここでなら一日過ごしても飽きなさそうだ。


金魚は赤や、白、黒いものもいた。


尾ひれがゆらゆらと水中で揺れているのがなんとも美しい。

ここが娼館であることを忘れてしまいそうだ。


「こっちですよ〜、ヘレナ様」


マリエルが手招きする。ヘレナはその水槽に後ろ髪を引かれつつ

マリエルの後をついていく。

途中、この娼館の女将に出会った。

「ー あら」

ヘレナはこの女将を見たことがある。


「ーヘレナ様、ようこそいらっしゃいました。

 ごゆっくりどうぞ。」



そうだ、この特徴的なほほえみと

目の下の黒子...あ!!

「ドレスの採寸していただいた...」

女将は何もいうことなく、首を軽く斜めにしただけで

深くお辞儀をした。


そのまま最上階への部屋に向かう。

「今日のためにハイ・ジュニアスイートご用意しましたぁ〜!!」


娼館とは思えない、美しい部屋だった。

ここは調度品も、それらすべては高級品で

至る所に美しい花々が飾ってある。


そして壁一面の水槽。

中には見たことのない大きな金魚たちが優雅に泳いでいる。


ヘレナは呆気に取られた。

(娼館て言うから、もっといかがわしいかと...)

部屋に入ると、正面にまた美しく着飾った令嬢が3名深くお辞儀していた。


「ようこそ、いらっしゃいました。ヘレナ様。」

1人、礼から直り、顔を上げた。

凛とした気品を持つ娘、ネルだ。


「お待ちしていました。ヘレナ様」

また1人、礼から直り、顔を上げる。

艶かしい美しさの娘、アナスタシアだ。


「お会いしたかったです、ヘレナ様」

また1人、礼から直って、花のように笑う娘

アンネリエッタだ。


ヘレナはこの3人にどうしても会いたかった。

彼女たちのおかげで作戦はうまく行ったのだ。


ヘレナはここで女帝ムーブを全開にした。

最高礼を執る。


「あなたたちのおかげで、私も国も助けられました。


 ーありがとうございます。」



ヘレナが顔をゆっくり上げると、3人は泣きそうな顔をした。

なので、わざと言う。

「ま、お堅いことは言いっこなし。

 今日はお招き、ありがとう。」

ヘレナは小首を傾げて、満面に笑った。


3人は笑った。

「うふふ、お菓子いっぱい持ってきちゃった!」

ヘレナはウィンクする。


駆け寄ってきたアンネリエッタをヘレナは見た。

お菓子を広げながら、3人は各々自己紹介をしてくれた。



アンネリエッタの瞳がキラキラしている。

お菓子大好きみたいだ。

ふわふわな金髪の髪は肩ぐらい。

瞳は薄い茶色で、猫のような形の目。

体はこの中で一番小さい。けど、すばしっこそうだ。



アナスタシアは妖艶な女性だ。

茶色がかった黒く艶めくカールを描く髪は腰まで長く

お胸なんてメロン2個が存在感アピールだ。

瞳は憂いを帯びた深い緑色で唇の形が既にエロい。

だが指先まで計算された優雅な動きは、男性の目を惹きつけそうだ。

この人こそ、悪女に名を挙げるのがふさわしいだろう。



ネルは理知的な顔をしている。

ストレートの切り揃えられた長い髪はココアの色だ。

瞳はアナスタシアと同様、緑色だが薄い。

光の当たり具合で黄緑色にも、見える。

一番年上らしいが、見た目としてはまだヘレナぐらいだ。

アナスタシアの手にしたお菓子に頷く顔は幼い。




「 ーで。」

マリエルはヘレナに向き直った。

3人は既にお菓子を食べている。

アンネリエッタなんて、いちごのポキッとをポキっとしている。


「ヘレナ様。ー 機密部隊を1日ご体験くださ〜ぁい!!」


「へ?」

(え、女子会は?)



3人とマリエルは立ち上がって、部屋から四散する。

ポツンと取り残されたヘレナは、キョロキョロしたが

仕方ないのでアンネリエッタが開けたいちごのポキっとをポキっとした。


ガサガサと音を立てながら出てきたのはネルだ。

「こちらをお召しください、ヘレナ様」


「え」

化粧箱を持って現れたのはアンネリエッタだ。

「お化粧はお任せくださぁ〜い、化けます!」


「な、何を」

これまた一際大きい箱を持ってきたのはアナスタシアだ。

「ねぇ、マリエル、小道具の箱、一つ足りないわ、アルデラハンかしら」


そしてマリエルがヘレナの首のリボンを外しながら言った。

「さぁ、メタモルフォーゼですよ、ヘレナ様!


 ー 町娘に、なりましょう」






   『 町娘、 とな 』



ヘレナはその言葉の響きについ、泣き出しそうだ。

こんな、こんなことがあるのだろうか。


誰にもこの胸の内なんてしゃべっていない。


今だって十分、自由だし

幸せなんだと思っている。


なのに、こんなキラキラした人たちが

自分のために用意してくれたことに

転生前の、あの苦しさの中で思ったことがー





願いが、ー 叶う。






みんな寄って集って

ヘレナに寄り添いつつも手は動かしている。

その所作に笑いつつ、涙が頬を伝う。


「あら、ヘレナ様ったらまだ用意もしていないのに。」

「用意前だから、ノーカン」

「私たちも一緒に用意するから、急がないと。

 ー市場って何時までだっけ」

「朝の卸は昼前までだけど、出店はオールだよ〜」


次々におしゃべりしながら手を動かす彼女たちを見て

ヘレナはマリエルが涙を丁寧に拭ってくれている手を握った。




「 ー ありがとう。」





マリエルも、みんなも、ニコニコした。


「化けるって、楽し〜もんね!つけま、つけとく?」

アンネリエッタはメイクブラシを握りしめてる。






「さぁ、準備開始よ、みんな!」








「違う、違うよ〜ぉ」

アンネリエッタはケラケラ笑ってる。

この子、本当に可愛い、雰囲気がふわふわしてる。

「な、何が違うのです?」


「お、こ、と、ば」

アナスタシアは髪を一本に縛り上げ、うなじを丸出しにしている。

もう、フェロモン全開だ。


「言葉?」

ヘレナはただいま学習中。


「長いこと砕けた会話をしてこなかったもの。

 難しいのよ」

ネルは町娘がよく履いているようなブーツの紐を編み上げながら言う。


「あ、ヘレナじゃないのよね。ー ソフィー。」

アナスタシアはどう見ても、酒場のエロい女主人だ。


ヘレナの源氏名、コードネームはソフィーになったらしい。

ー 町娘とは、砕けつつもウィットに富んだ会話スキルを持ち

お気楽に見えながらその町で逞しく生きる女性のことだ。



「そ、そうよ。私はソフィーよ。」

ヘレナ改め、ソフィーは悪戦苦闘している。

どうしても、言葉の節回しが難しい。

カタコトになりそうだ。


マリエルはヘレナの髪を三つ編みにしている。


「でもさ〜...みんな、見てよ...」

マリエルが呟く。



「 こんな高貴な町娘、いる ? 」


場が静まり返る。


「なんでかね〜?」

「世界七不思議、入れていいんじゃない」

「目かな〜?」

「だって、すっごい姿勢いいし」

「つけま、とる?元々ラクダみたいだったし意味なくね?」

「雰囲気かな〜...」


ヘレナは自分を鏡で見る。

十分、町娘っぽいのだが、機密部隊からすると及第点らしい。


「けど今日、行くとこはアレンのとこでしょ。

 なんとかなるべ」

そう言うと、マリエルはヘレナの腰にエプロンをかけた。


「ソフィー?あなたはこれから、アレンの店のお手伝いよ。

 アレンのお店は、お花を売っているの。

 愛想良く、頼んだわ」


「はい!もちろんで..がんばりま、るわ」

難しい。










花屋のアレンは初老の男性だった。


気の良さそうな中肉中背の手先が器用な人で

穏やかに花の棘を取ったり水処理をする姿は

機械みたいに正確で、真面目そのものだった。



「やぁ、我が”花”たちよ、よく来たね。」


途中、アナスタシアは別行動で機密部隊御用達の酒場へ向かった。

帰りはそこで飲み会らしい。

別れ際、アナスタシアはヘレナに耳打ちした。


「町娘の極意は、とにかく笑顔よ。

 ーここの男どもは、それだけで浮かれるもの」


「は、はぁ。」

(それは王城でもやってたことだけども...)

アナスタシアはエロい口元を少しだけ開いて言った。



「”お花買って〜ぇん”って思いながら、”笑う”のよ。ソフィー」




(おぉ、それは極意だ)


ネルも途中でまた別れた。

必要なものを買うだとかで、昼ごはんの約束だけしていなくなった。

後ろ姿を見送っていたら、既に男性に声をかけられている。

(モテるなぁ〜...)


結局、花屋ではマリエルと、アナスタシアとソフィーだけになった。

アレンは奥へ行って、朝に配達する花をまとめていた。

「ねぇ、ソフィー。ここにある花でどれが好き?」

アンネリエッタは編み込まれた自分の頭にピンクの薔薇を差し込んだ。


「これは、”幸せ”って意味」

アンネリエッタの笑顔で、ヘレナは目が眩みそうだ。


「アニー、あなた、幸せなのね」

「うふふ、わかる?ー 私、彼ぴできたの〜」

「ぴ?」

「彼ピッピは〜ぁ、友達みたいな〜、彼氏みたいな〜、そんな感じで

 彼ぴは、マジもん。すこすこのすこってこと〜」


(おぉ〜。よくわからんが、スコスコなんだな...)

ヘレナは聞きながら花屋の花を見渡した。

どれも美しい花々で、花言葉なんかを気にしていたら

選べなくなりそうだ。


そのうち、花屋に人が集まり出した。

ザワザワと騒がしい。

マリエルがアンネリエッタにコソコソと話し込んでいる。


「ソフィー」

名を呼ばれたので、マリエルのそばへ行こうとすると

周りがどよめいた。


「あの子、ソフィーっていうんだ」

「可愛いな、新人かな」

「お前、行けよ。」

「お、俺には無理だって」

「アニーちゃん、久しぶりに見たな〜、可愛いな〜」



アレンの花屋の風物詩

”花は花でも、俺らは娘の方の”花”がいい”

で、ある。




マリエルはほほえんだ。

ワラワラと、野郎どもがマリエルの前に並ぶ。

「今日はどうするの?デュラン」

「お、俺は、あ、アネモネを!き、君に!!」


「あら、ありがとう」


ヘレナことソフィーは理解した。

(ここで売れた花が、娼館に行くんだな...)


その後もアンネリエッタの列、マリエルの列に続々と並ぶ。

「ソフィー!」

マリエルの呼ぶ声が聞こえた。

(あら、お手伝いかしら)

マリエルが指を差す。その先を見た。


なんと、山のような人だかりがヘレナの前にいる。


「え?」


アンネリエッタがヘレナのそばに来て笑う。

「ソフィー、すっごいね。こんなにたくさんの人

 市場中から集まったって、いないもの。

 これ、全部ソフィー目当てよ。

 ーさぁ、頑張って花を売り切ってね!!」



(え、これ、私が捌くの?)

思う間もなく一番前の野郎がヘレナに声を張る。

「そ、ソフィー! 俺は!!君に!!!

 ーここの薔薇を全部!!」


「 ー ぜ、全部?」


その男は鼻息荒く頷く。

「俺はダンってんだ!覚えておいてくれ!!」

アンネリエッタが横から茶々を入れた。

「あ〜!カルメンにいっちゃお〜ぉ」

「あ、こら!アニー!! ーん? カルメン戻ってきてるのか!?」

「もうお店にいるよ〜」

ダンという男性は、薔薇を一本だけバケツから抜いて

走り去った。


(なんじゃ、こりゃ...)

その後も次から次へと、ソフィーとも目を合わさず

花だけ買ってその花を押しつけるようにして渡す者や

ガン見しながら、そっと手を触れてくる者やらいたが

人よりも先に、花がなくなった。


「は〜ぁい、花はもう売り切れよ!

 また、来てね!」

マリエルが手を叩いた後大手を振って、店仕舞いした。


ヘレナは放心している。

(ま、町娘って...た、大変じゃな...)

ヘレナのそばに、マリエルが水を持ってきた。

小声で目配せしながら言う。

「大丈夫ですか?ー 変なこと、されませんでした?」


「え、えぇ、びっくり...はしたけれど。」

水を飲みながら周りを見た。ー まだ野次馬がいる。

「こんなに花が早く売り切れたのは初めて。

 ーうふふ、じゃぁ、ソフィー。

 休憩するから、お使い頼んでもいいかしら?」


マリエルはガマ口のお財布と

籐(とう)で編まれたかごをヘレナに手渡しながら言う。


「八百屋で、りんご3つとオレンジ4つ。

 あれば、いちごも買ってきて」

「うん、わかった。ー 八百屋ってどこ?」

ヘレナはゆっくり話をしている。ー ボロが出ないように。


「この道まーっすぐ行ったら左手にでっかい看板あるわ。

 トマトの。ー そこよ。」




ヘレナは歩き出した。

ものすごい人の山が歩き出すヘレナを通すように

道ができる。

(わたしゃ、虫除けか。人が避けていく...)


八百屋はすぐに見つかった。

野菜が軒先に綺麗に並べられていた。

(果物は、多分店内か ー。)

ヘレナは店内に入って行った。


目当てのものも見つかり、支払いをするために

店員を呼んだ。

(これも学習済みだ。ー私、デキる子ね)



「すみませ〜ん」

ヘレナの声が店内に響いた。

出てきたのは体格のいい、中年の男性だ。

「お、噂の花屋のソフィーちゃんだね!」


「え?噂?」

「あぁ、そうさ。みんな言ってるよ。

 どえらいべっぴんがいるってね、こりゃ本物だぁ!」


(うむ。悪くなくてよ)

町娘を実感する。

その後お肉の美味しい店とか

雑貨で珍しいものがある店の話をしてしまった。


「あ、もう行かないと!」


ヘレナはカゴを持って足早に店を出た。

(どれほど話し込んでしまったのかしら。

 マリエルを待たせてしまっているわね。)


「あ、ちょっとお嬢さん!」

ヘレナには聞こえていないみたいだ。


「そこのカゴを持ったお嬢さん!」

(私か!)


振り返ったヘレナは凝固した。



















いちごを持った、”八百屋”のユージーンだ。






「そんなに急いでどちらまで?」

にこやかにほほえんでいる。



「...ちょ、ちょっと、そこまで」














こんな高貴な八百屋の兄ちゃん、いる?

後光、射してるんですけど。








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