#49 悩めど今日も自由な邦画研究部
邦画研究部が僕の家に集まり、映画製作の作業をするようになって数日が経った。
作業の方は順調だし、母さんとの約束の勉強に関しても3人ともちゃんとやっているし、普段の部活と同じように気楽に過ごしている。
というか、相変わらず佐倉さんが僕の布団に対して強い執着心を露わにするので、作業の合間に僕に断りもせずに布団を敷いてお昼寝の休憩タイムを過ごすのがたった数日で定番となってしまった。
男の汗臭い布団なんてキモイだけだとと思うのだけど、もしかしたら佐倉さんは変態なのかもしれない。
それと、『僕の家で部活する時は制服か学校指定のジャージ』というルールにしたのは失敗だったかもしれない。
ジャージと言っても真夏なので、下はジャージでも上はTシャツとなる。
そしてTシャツだと、佐倉さんもミイナ先輩も部屋着感覚なのか、スクール水着の時は控えめなスキンシップに遠慮が無くなっている。
そして何よりも、Tシャツだと胸の柔らかさがダイレクトだし、身に着けているブラジャーも透けて見えてしまっている。
因みに、今日の佐倉さんの下着の色は水色で、ミイナ先輩は黒だ。
「ミイナ先輩、それは部活に着てくる下着の色として、如何なものなの?」と問い詰めたくなったけど、それはセクハラだし、もし本当にそんなこと言ったりしたら、多分ミイナ先輩は調子に乗って「そんなに下着の色が気になるのぉ?」とか言って、面白がって揶揄ってくるだろう。
僕はその手には乗らない。
ツインテールの美少女ロリ先輩が顔に似合わない黒い下着を身に着け、後輩男子の部屋で透け透けに透けさせていようとも、一切そのことに触れてなどやるものか。こちとら、同性の友達の前ですらシモネタなど言ったことが無い真面目キャラで通して来たんだ。
と、僕は悶々としてても、二人はいつも通りだ。
「そういやさ、ウチの学校って遠足ないじゃん?」
「そうですね。中学の時は、長距離歩かされたり、バスで寂れた動物園とかに行ったりしましたね。 ああいうのって、友達居ないと凄く辛いんですよね。一人だと何もすること無いけど、時間潰せるようなものないし、僕の時は、集合場所が見えるベンチに座って、文庫本読んで一日過ごしましたよ。 あれは中々辛い時間でした」
「いや、そーゆー話じゃなくてさ、遠足行きたいから、3人で行かない?って聞きたかったのに、そんな話聞いたら、遠足行こう!って言えなくなっちゃったじゃん」
「そんなことありませんよ!私たちが居るから、もう一人ぼっちじゃないです!」
「でも、暑くないですか? 映画の作業だってまだまだ残ってるし。 夏合宿で我慢しましょうよ」
「それもそーだね」
「ではお弁当作って、お外で食べませんか!?」
「いや、佐倉ちゃん、お料理出来ないじゃん。お弁当作るとなったら、私とアラタが作ることになるじゃん」
「それに、外は暑いし」
「じゃあ、お家で食べましょう!お弁当作ってココで食べて遠足気分だけでも味わいましょう!」
そこまで言うのなら、佐倉さんもお弁当作るの手伝うという条件で、今からお弁当作って家で食べることになった。
今日は特に気温が高くて朝から暑かったので、お昼はそうめんにしようと思ってたのに。
時計は既に11時を回っていたので、作業は一旦中断して直ぐに弁当作りを始めることになった。
まずはご飯を炊く為に洗米から。
佐倉さんに手取り足取り教えながら洗米をしてもらい、炊飯ジャーにセットして炊飯をスタートすると、湯気が立ち始める。
ミイナ先輩は、手慣れた様子で玉子をボールにいくつも割り、砂糖と醤油を加えると撹拌を始めた。
次に、冷蔵庫からウインナーを取り出して、再び佐倉さんに手取り足取り教えながら、包丁で切れ目を入れると、フライパンで炒め始める。
そして、佐倉さんがフライパンでウインナーを炒めている横で、ミイナ先輩が四角いフライパンで玉子焼きを焼き始めた。
ミイナ先輩は、器用にフライパンを扱いながら綺麗に巻いていき、ほんのり甘い香りのする綺麗な玉子焼きを2本分作ってくれた。
その様子を見ていた佐倉さんは、ミイナ先輩の玉子焼きの様にひっくり返そうとしたのか、止せばいいのにウインナーを焼いているフライパンを激しく動かし、ウインナーが数本フライパンの外に飛び出した。
「コラ!」と怒りたいのをグッと我慢して、無言で飛び出したウインナーを素手で拾い、水洗いしてからフライパンに戻した。
チラリと佐倉さんに視線を向けると、僕に怒られるとでも思ったのか、しょっぱそうな愛想笑いをしていた。
それにしても、コンロの前に立ちっぱなしだから暑いな。
僕だけじゃなくて佐倉さんもミイナ先輩も額や頬に汗が流れている。
次に、ミイナ先輩はスパゲティを茹で始めたので、僕と佐倉さんはポテトサラダを作ることにした。
佐倉さんにはピーラー(皮剥き器)を使って皮を剥いて貰い、剥き終わった物を僕が包丁で芽を取り除いていく。
3個分を終えると、角棒状にカットしていき、水にさらしてデンプンを洗い流してから茹で始める。
佐倉さんには茹で過ぎない様に注意して、まだ硬さが残る状態で火を止めザルにお湯ごと流して、茹でたポテトをキッチンペーパーで水分を吸い取り、ボールに入れて、カットしたハム、マヨネーズ、マスタード、胡椒を入れて、箸でかき混ぜて貰う。
均等に混ざってきたら、ポテトを1本取り出して味見してみると、美味しく出来てたので、佐倉さんにも味見してもらおうともう1本取り出して顔に向けると、佐倉さんはいつだかのタコ焼きの時と同じように僕の腕を持って、ポテトをパクリと頬張った。
やっぱり佐倉さんのこの表情は、エロいな。
しかも、先ほどから額や首筋が汗で濡れてるせいで、セクシーさが増している。
「美味しい!!! 私の知ってるポテトサラダと違うけど、美味しいデス!」
「ああ、普通はジャガイモは形崩れるまで茹でるし、ゆで卵も混ぜるからね。今日は面倒だったから、ゆで卵なしの簡単ポテトサラダにしたの」
「こんな料理まで作れるとは・・・やっぱりアラタくんの妹になりマス!私をこの家の子にしてください!美味しい食事を毎日食べさせてくだサイ! お母様帰ってきたら、もう一度交渉しなくては」
「料理出来ない佐倉さんを妹にするくらいなら、料理上手のミイナ先輩にお姉ちゃんになって貰いたいんですけど」
「えぇ!?なんで!?」
「ふっふっふっ、ココにきて女子力の差が出ちゃったね」
「それに佐倉さん、僕の布団に潜って変な声出してて怖いし。そんな子がウチに居たら怖くて夜も眠れないじゃん」
「いえアレは!沸き上がる喜びと興奮が抑えられないんデス!私は悪くないデス!お布団が悪いんデス!」
「じゃあ、これからは佐倉さんは僕の布団使うの禁止ね。なにせ悪いお布団だし」
「ひ、酷い!今日のアラタくん、イジワルですよ!ミイナ先輩からも何か言って下さいよ!」
「いや、佐倉ちゃんの自業自得なんじゃ?アホなことばかりしてるからじゃん」
「ミイナ先輩まで、酷い!もうグレちゃいます!盗んだバイクで走りだしちゃいます!」
どうしてオタクってイチイチこうリアクションが大げさなんだろうか。
タダでさえコンロの前に立ちっぱなしで暑くて汗が止まらないのに、騒ぐ佐倉さんが暑苦しい。
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