第26話 現代その21


環状2号線の工事は滞っていて予定を過ぎても開通には至らなかった。


工事の為に立ち退きをした人々が残していった家屋も取り壊されず、空き家のまま朽ち果ている。


以前は小学生、中学生の通学路として、使われていた小道も、怪しげな変質者が出没する。


そして通学路も閉鎖となった。


日中、夜間を問わず、ヘビが這い、タヌキが彷徨くだけの無人の一画となり、心無い輩がゴミや不用品を渓谷に投げ捨てる様になり、川水は汚れ、ゴミの撤去も出来ぬまでに荒れ果てた。


そこで渓谷を埋め立てゴミを隠し、綺麗な小石を敷詰め、その上に山からの湧き水を流すと言う工事に変更された。


渓谷は美しく変わり、隣接する地に公園も造られ、人々が集まる憩いの場となった。


ただ、夜になるとあやかしが現れるとの噂話はあとを絶たなかった。




だから、伊勢で佐吉の施し…。


いや、私の金で救われた者らを使って蘇ったのさ…。


蘇ったおリョウが独り言ちた。




ここは女陰が谷、魔が産み出される谷…。


ここは女陰が谷、おリョウが、私が地中に深く埋まる渓谷…。


私が私を探し出し、私が私を掘り起こす。


私が私にあったなら、私は佐吉に逢いに行く。


乱れた髪を手櫛で掻き揚げ、指先噛んで血を垂らし、紅の代わりと口にひく。


目、首、手足が揃った今は、おリョウは佐吉に逢いに行く。


佐吉の血筋を絶やす為、おリョウは佐吉に逢いに行く…。


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