第14話 江戸話その5


お伊勢参りじゃ、おぬけまいりじゃ。

 


ええじゃないかとお伊勢参りに加わった、着の身着のままの村人達や無頼漢らは、佐吉に取り憑く魔のせいで、あちらこちらで盗みや叩き押し込みをして、金銭を奪い、伊勢までの旅を続けた。

 

それらは、途中道中で仲違いや役人に捕われ、お伊勢参りはできんかった。



しかし、中には信心深く、魔に誘われながらも、旅を続け、なんとか伊勢まで辿り着く。


着物は破れボロボロに、腹は減りアバラが浮きでる。


やっとの思いで鳥居を潜るも、お伊勢さまの御札はもう無い。


お参りだけはと手を合わせ、作務所へ向かって御朱印を、御布施は無いがお願いします。


哀れに思う作務所の宮司、これは横浜保土ケ谷の佐吉さんからの施しですよと信心深い人々へ預かる小判一枚を分けて与えた。


それが魔には気に食わない。


受け取り手を合わす輩には、いつか我の下僕となって、おリョウの元へ手足、首、目を伴い、おリョウの仕返し復讐を手伝させるぞ、観念せい。


そうとは知らず参拝人は貰った小判で着物と食い物買って、家路を戻って行った。


見附に着くとひとり減り、掛川でまたひとり…小田原ではひとりがおらはここで暮らすから、最後は平塚で嫁を貰い、商いしますと住み家を見つけた。


残った人々は散り散りになるがいつかあの魔に蝕まれ、血筋は消えていなくなる。


女陰が谷の魔は、あぁ恐ろしや…。

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