第13話 江戸話その4


伊勢の神宮の鳥居の前で、佐吉に取り憑いていた女陰が谷の魔は、天照大神の御札に蹴散らされ、霧となったが、邪悪な念はまだ漂っていた。

 

せっかく憑いた佐吉から追い出され、憎きは御札、アマテラス。


いずれその加護を受けた者らは、子孫に至り、血筋が薄まりか細くなれば、その時こそは、そやつら共を殺してくれようぞ…。


女陰が谷の魔の念は、理不尽ならがも怨みを残し、風に吹かれ、雨に流され消えて行った。



ここは女陰が谷、魔がまた産み出され、おリョウの身体に取り憑いた。


首無し、手足無しのおリョウの身体に取り憑いて、首と手足が、戻るのを陣ヶ下の渓谷の深く暗い底で待っていた…。


私が動ける様になったなら、佐吉や佐吉の血筋を殺してやるぞぇ。


手足よ、首よ早く来い…。

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