第20話 現代その14

私は平塚出身の女性、Kさんへメールを打った。


「最近は変わった事は無いですか?」


その日の夜、返信が来る。


「また、足が現れる様になりました。彼氏には見えません」

 

私はまた会えないかとメールを打つ。


「最近の話や私が疑問に思う事をいくつか訊きたいのですが、また、お会い出来ないでしょうか?彼氏と同伴で構いませんので…」


彼女はひとりで会いに来ると言い、また、先日のカフェで待ち合わせをした。



「お久しぶりです。今日はありがとうございます。彼氏は来なくて良かったのですか?こんなむさ苦しいジジィに会うのに…」


むさ苦しいだなんて…彼には「足」の事は話してません。

いえ、一度話したのですが、信じて貰えなかったので、それからは話していません。

今日は、推しの小説家さんに情報を話すと言ったら、笑って送り出してくれました。


「あはは、それは…ありがとうございます」


私は少し照れたが、早速、話を訊く事にする。



「また、足が現れたみたいですね?」



そうなんですよ。

相変わらず着いて来るだけなんですけどね。


「それって、貴女に取り憑いたまま、しばらくは姿を見せなかっただけと言う事ですかね?」


取り憑かれているって感じはしないんですけど、そうかも知れないですね。

いや、特に怖くは無いですね。

慣れてるって言うか…。


私は世間話を交えながらも、訊きたいと思っていた事を訊いた。



「貴女には霊感はあると思いますか?」



多少はあると思います。

見える「足」以外にも他の霊を感じる事がありましたから。


霊を見ても、感じても彼女はそうは怖くは無かったと言った。


たいがいの霊は人間の姿で漂っているだけで人間に害をなさないからだと言う。


しかし、異形のものは恐ろしいと言う。

異形の霊は怨みや呪いを持つからだと言った。


だから最初「足」を見た時は怖かったと言った。



「何故平塚から保土ケ谷へ引っ越そうと思いましたか?」


平塚からなら、通勤は充分出来ますが、通勤時間の短縮の為ですかね?

就職が決まると何故だかひとり暮らしがしたくなり、両親もたまに帰るならと反対もしなかったですね。

別に保土ケ谷で無くても良かったのですが、保土ケ谷以外でアパートを探さなかったですね。



引っ越し先は保土ケ谷以外の選択肢は無かったと言う事で、これは運命か、それとも「足」にそう仕向けられたのかは判らないと言った。



「貴方はお伊勢さまの御札かお守りを持っていますか?」


御札やお守りは持って無いです。

でも、実家には古い伊勢神宮の御朱印はありました。

古くてかすれていましたが、御朱印と共に横浜保土ケ谷のサキチ様よりと書かれた古紙もありましたね。


「そうですか…足は最近、何か言わなかったですか?」


ついて行くだけ…今はね…やっと辿り着けた…後は私に辿り着くだけ…。

こう言っていましたよ。

たった今ですよ…。


「今ですか?」


ハイ、私達の周りを廻っていました。

今は消えましたけど…。



私はブルっと寒気がした。


気を取り直し、彼女に笑顔を作りこう言った。


「ありがとうございました。また、話を訊くやもしれませんが、貴女の話はとても参考になりました。彼氏さんにもよろしくお伝え下さい」


彼女は来春彼と結婚すると言い、小説楽しみにしていますと、微笑みカフェから彼氏の元へ戻って行った。


残った私は「サキチ」と言う名前に引っかかる。


「手」を見た男性も腕にサキチの入れ墨を見ている。

 

サキチ…サキチ…サキチとはいったい誰なのであろう…。


私はミクにラインを打った。


サキチと言う名前に覚えは無い?


お伊勢さまの御朱印は無いかな?



ミクから返事が来る。


サキチは知らないです。


御朱印も見たことは無いですが、お祖母ちゃんにきいてみますね。


後日、ミクから返事が来た…。


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