第57話 初詣デート

「香奈さんは大吉ですか!」


「勉くんは中吉ですね」


香奈さんと2人でおみくじを引いたのだが、僕は中吉、香奈さんは大吉だった。


「香奈さん、なんて書いてありましたか?」


そう聞くと香奈さんはサッとおみくじを隠してしまう。


「香奈さん?」


「つ、勉くんは! どんなことが書いてありましたか?」


「僕は普通のことが書いてましたよ?」


「普通って、どんなことですか?」


「無くしたものが近くにあるとか…勉学は今まで通りにすれば大丈夫だとか…」


「……恋愛の部分はどんなことが書いてありましたか?」


「恋愛…ですか…」


「も、もしかして! 悪い事が書いてあった…」


「いい人ですが…危ういと書いてありました」


「そう…ですか…。まぁ、おみくじですし、そんなに気にしない方が良いかもしれませんね」


「そうですね、ところでこの後どうします? 屋台とかたくさん出てますけど…」


「私! チョコバナナが食べたいです!」


「それじゃあ、屋台のほうに行きますか」


僕たちは神社を後にし、たくさんの屋台が並んでいるところに向かった。


「わぁ! たくさん屋台がありますね!」


「そして、結構混んでますね…」


「元旦ですからね、みなさん、お参りに来たのでしょうし」


「まずは…チョコバナナですね…」


背伸びをして、周りの屋台を見るが、チョコバナナの文字が見当たらない。


「キャッ!」


これに関しては僕たちが屋台の並んでいる通路の真ん中で立ち止まっていたのが悪いのだが、香奈さんが歩いている人に押され、転びそうになってしまった。

僕は倒れそうになっている香奈さんの


「だ、大丈夫ですか!? 香奈さん!」


「つ、勉くん! あ、ありがとうございます…」


「いえ、倒れなくて良かったです」


なんとか香奈さんが倒れる前に手を握る事ができて良かったと思い、手を離そうとしたが…


「あ、あの! ま、また、倒れそうになったらいけないので…そ、その、まだ、手、握っててもらえますか…?」


「っ! わ、分かりました…」


離そうとしていた手をもう一度握りしめる。

僕たちは恥ずかしくて互いに目を合わせられなくなる。

そして、僕たちは手を握り合ったまま歩き始め、チョコバナナの屋台を探す。


「そういえば、香奈さん。さっき、おみくじになんて書いてあったんですか?」


「………」


そう聞くが、香奈さんは答えてくれない。


「も、もしかして…僕以上に酷いことが…」


「い! いえ! 酷いことでは…」


「じゃあ…何が書いてあったんです?」


「……愛情を告げ、結婚せよと…」



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