第52話 僕はもう嘘つきなんかじゃない
パンケーキを食べた後、僕たちは雑貨屋さんや服屋などを見て回った。
香奈さんと過ごす時間はあっという間で、気づけばもう夜になっていた。
「ここです。本当に来たかったのは…」
「クリスマスツリーですか…」
そこには巨大なクリスマスツリーがあり、周りはイルミネーションでとても綺麗だった。
「はい、綺麗ですよね」
「綺麗です…とても…」
それはクリスマスツリーやイルミネーションに対してではなく、香奈さんに言ったものだった。告白なら今しかない!
「………勉くん、今日で最後にしましょう」
「えっ? 何をです?」
「これからはもう、勉くんと一緒にどこかへ行くのをやめようと思います」
「えっ! ど、どうしてですか?」
「勉くん…好きな人がいるんですよね」
「えっ! ………はい、います。それh」
「だからです。私が勉くんといることで迷惑をかけてしまいますし、それに…」
「それに?」
「勉くんは異性として私を見ていないんですよね」
「……………聞いていたんですか」
まさかあの時の出来事が聞かれていたなんて、気づかなかった。
「はい、聞いていました」
「勉くんには好きな人がいる。けど私の事は異性として見てくれてない」
「という事は勉くんの好きな人は私ではない。だから、邪魔になっちゃうと思うんです。私という存在が…」
「だから、今日で最後にしようと思ったんです。今までいろんなところに遊びに行ってとても楽しかったです。今日は家まで送ってください。私からの最後のお願いです。それで……終わりです」
そういう香奈さんの目から涙が溢れそうだった。声も若干震えている。
僕はもう好きな人を悲しませたくない、
「………好きです」
「えっ!?」
「香奈さんのことが好きです!」
「う、嘘です! だって勉くんは…私の事…」
「それが嘘なんです!」
「クラスで噂されて香奈さんに迷惑がかかると思ったんです。香奈さんには好きな人がいるから……だから嘘をつきました」
「………そうだったんですね」
「香奈さんのことが好きです! 僕と付き合ってください!」
全力で手を差し出す。
「わ、私の好きな人は…」
そっと香奈さんに手を握られる。それで僕は上を向く。
「………勉くんです」
「勉くんが好きです」
「ぜひ、よろしくお願いします」
香奈さんの顔には涙が溢れていた。それは悲しみのものではないだろう。
僕はもう嘘つきなんかじゃない。
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