第51話 パンケーキ
「着きました!」
電車に乗り香奈さんの無意識の誘惑に耐えながらここまで来た。手ぶくろは返した。ああのまま手ぶくろしてたら、どうなっていたか分からない。
「ここは…パンケーキ屋さんですか?」
「そうです。嫌いでしたか?パンケーキ」
「いえ、甘いものは大好きなので」
クリスマスの装飾が施されている、店内に入ると…
「何名様ですかー」
「2人です」
「2名様ご案内でーす」
定員さんにテーブル席に通される。そしてメニューを渡される。
「こちらクリスマス限定となっておりまして、今日までとなっております」
「分かりました。ありがとうございます」
「何します? 香奈さん?」
「………私はこのクリスマス限定の苺たっぷりパンケーキにします」
「僕はこのクリスマス限定の3種のチョコパンケーキにします」
定員さんを呼び出し注文する。
「このクリスマス限定の苺たっぷりパンケーキと3種のチョコパンケーキをお願いします」
「分かりました。少々お待ちください」
そこから20分、僕たちは話さなかった。話すことがなかったわけじゃない、約3ヶ月以上空いてお互いにただただ気まずかった。それだけだ。でもこれだけは聞いておきたい。
「………どうして今日は僕を誘ってくれたんですか?」
「………それは」
「お待たせしました、こちらが苺たっぷりパンケーキです」
「あ、ありがとうございます」
「そしてこちらが3種のチョコパンケーキです」
「ありがとうございます」
「それではごゆっくりどうぞ」
「………先、食べちゃいましょうか」
「そ、そうですね」
パンケーキを一口…
「ん! 美味しい」
「美味しいですね」
美味しそうにパンケーキを頬張る香奈さんはとても可愛かった。
「? どうしましたか? 勉くん」
「いえ、何でも…」
「あ、一口食べます?」
「???」
「はい、あーん」
「えっ!? ち、ちょっと!」
流石にまずいだろ! だ、だって、それって、か、か、間接きsじゃないか!
「勉くん、あーん」
気にしない気にしないこれは間接きsじゃないなるべくフォークに当たらないように食べないと。パクッとフォークに当たらないように食べた。
「………お、美味しいです」
「そうですか、良かったです」
間接キスなど全く気にしない様子で僕に言う。
「………あの、普段もこういうことしてるんですか?」
「え? 何がです?」
「………あ、あーんとか」
「……………」
ボッと香奈さんの顔が一気に赤くなった。やっぱり気づいてなかったらしい。
「す、すみません。いつもお姉ちゃんとこうやってシェアするので…」
「僕も断れば良かったですね。すみません」
「………私も」
ボソッと香奈さんが呟く。
「どうしました?」
「私もあーんしてください! そうじゃなきゃ不平等です!」
「えっ!」
それって香奈さんも間接キスを…
「早くチョコパンケーキ食べさせてください!」
香奈さんは口を開けて待っている。きっと僕があーんするまで口を開けるつもりだろう。そして僕は恥ずかしながら、香奈さんに…
「ど、どうぞ」
「……ん、美味しいです。ありがとうございます」
「「……………」」
そこから恥ずかしすぎてお互い何も喋ることができなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます