第46話 ちょっとまって

「うみちゃんに会いたい! うみちゃんに会〜い〜た〜い〜!」


随分肌寒くなり、冬本番の今日この頃、親戚の家で少し早いクリスマスパーティーをしていた。少しと言っているが、親戚一同の予定がなかなか合わず、クリスマスの3週間前にこのパーティーを開いている。

もちろん、そこには陸くんがいて……

ずっとうみちゃんに会いたいと駄々をこねていた。


「ごめんね〜勉くん、陸がどうしてもうみちゃんに会いたいって言うのよ〜」


「それは……ちょっと……難しいですね……」


「うみちゃんにも迷惑だと思うんだけど、電話でもいいから、少し陸に顔を見せてあげられないかな?」


「うみちゃんに会〜い〜た〜い〜!」


「松海さ…うみちゃんの従妹の人しか連絡先しか知らないので、難しいですね、すみません」


「ほら、そうだって、陸、我慢しなさい」


「うみちゃんのお姉ちゃんに電話して!」


「え〜っとね〜」


「うみちゃんのお姉ちゃんに電話して!」


曖昧な態度をとっていたら……陸くんがパッと僕の手からスマホを取り、勝手に操作をする。流石に6歳なので電話の掛け方は知らないだろうと思いながらも、何かの間違いで電話がかかってしまうかもしれないので、慌てて陸くんからスマホを取り返す。


「ちょっ、勝手に人のもの取っちゃダメでしょ、陸くん!」


「うみちゃんのお姉ちゃんに電話して!」


陸くんが同じことしか話さない、botみたいになってしまった。


「ごめんね、勉くん、1回だけそのお姉ちゃんに電話してくれないかな? それで陸も諦めつくだろうし…」


「………はぁ、分かりました」


「早く! 早く!」


香奈さんと話さなくなってから早2ヶ月、急に電話なんてしたら、どう思われるかなんて、考よりも明らかだ。絶対に変なやつだって思われる。僕が松海さんに電話をかけるのを渋っていると……


「早く! このボタン、押せばいいの?」


陸くんが通話ボタンを押そうとする。


「ち、ち、ちょっとまって! 電話かけるからちょっとまって!」


「う、うん」


ポチッと通話ボタンを押す。

押した! 押してしまった! もしも出てくれなかったらどうしよう、とか思っていたら…


『つ……勉くん……ですか…?』

 


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