第45話 好きで嘘ついてるわけじゃない

週末の朝、と言ってももう9時を過ぎているのだが、最近なかなか起きても、ベットから離れられない事が多くなった。朝起きても、スマホはTwitterや、Youtubeなどの娯楽にしか使わず、あれからもLINEは家族としか使っていない。

そんなLINEに1件の通知が届く。


(優樹)今日、ちょっと遊ばない? 9:43


(勉)急になんだよ、めんどくさいから、パス 9:48


(優樹)カラオケ行こうぜ、カラオケ 9:49


(勉)めんどくさい、やだ 10:02


(優樹)松海さんの事、お前ら何かあったろ 10:04


(優樹)おーい、勉? 10:12


(優樹)おい、生きてるかー? 10:21


(優樹)午後2時、駅前のカラオケ集合 10:27






(勉)行けたら行く 12:59


結局、僕は駅前のカラオケに渋々向かった。

約束の2時の10分前に着いたのだが、優樹の姿は見えない。

もちろん約束の時間の10分に来たのは僕なので、優樹がまだ来てないからと言って、

何か言うつもりはないのだが…


そこから10分後、2時ピッタリに優樹はカラオケに来た。


「よう、勉、てっきり来ないと思ったぞ」


「カラオケ、行くんだろう」


「あぁ、行こう」


店に入り、受付で手続きを済ませ、部屋に入る。


「飲み物持ってくるけど何がいい?」


「………コーラ」


「OK」




「はい、コーラ」


「サンキュー」


「「……………」」


会話が続かず、沈黙が生まれる。

時にして約3分、部屋の中が静寂に包まれた。

そしてようやくその沈黙が破られた。


「歌おうぜ! カラオケだし」


「あ、あぁ、そうだな」


優樹がタッチパネルを操作して曲を入れる。

優樹がいれた曲は最近流行っていると聞いた事のある失恋ソングだった。


「90点超えたら、何があったか教えろ、まぁ、なんとなく想像できてるけど」


「まぁ、90点超えたらな…」


そうそう90点以上なんて出ないだろう、と思い、たかを括っていたら…


『98点すごい! すごーい!」


画面に表示されたのは90点を余裕で超えた数字が出ていた。


「お前、はかったな!」


「え? なんのことだ?」


「とぼけるな! お前が歌上手いなんて知らなかったぞ」


「そりゃあそうだ、勉とカラオケ行くの初めてだもんな」


そう、優樹は中学生からの付き合いだが、今まで一緒に遊びに行くことはあっても、カラオケに行くことはなかったのだ。実際、今日、初めて一緒にカラオケに来た。そして、初めて優樹の歌を聴いた。


「さぁ、約束は約束だ、話してもらおうじゃないか」


「………」


「どうせ、あれだろ、夏休み明けクラスで質問攻めに会った時だろ」


「………あぁ、そうだよ」


「それで松海さんに迷惑がかかってると思って、自分から松海さんと距離を置いたんだろ」


「………あぁ、そうだよ」


「ところでお前、ずっと気になってたんだけど、松海さんの事が好きなのか?」


「………いや、俺は松海さんの事…」


「嘘つけ! ……本当の事、言ってみろ!」


「…………………あぁ、そうだよ! 俺は! まt…香奈さんの事が! 好きだよ! でも…」


「でも?」


「優樹……、お前だって知ってるだろ、松海さんには好きな人がいるって!」


「あぁ、知ってる、だけど、じゃあなんで嘘ついた?」


「だからだよ! 松海さんには好きな人がいるからだよ! それで十分だろ! だから松海さんが困らないように嘘をついた! けど……俺だって好きで嘘ついてるわけじゃないんだよ!」


「そういうことか…」


「ごめん、今日無理だ、帰るわ」


「おい! 勉!」


「俺だって好きで嘘ついてるわけじゃないんだ……分かってくれ……」


そのまま、僕は部屋から出て行った。








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