第40話 夏休み⑩+⑩
「結構重たいな…」
1人でラーメンを取りに行ったが、正直なところ、結構腕が辛い。
「よく香奈さんはうどん1人で持ってこれたな」
と思い、香奈さんたちが待っているキッズルームに着く。
「ラーメン! ラーメン!」
と言いながら、陸くんが僕に向かって走ってくる。
そこまでは良かった。
陸くんは走りながら僕にぶつかってきたのだ。
1人で2人分のお盆を持っている→陸くんがぶつかる→体勢が崩れる→ラーメンをこぼす→熱々のラーメンが陸くんたちにかかる→火傷する
この流れが1番まずいと本能的に理解し、どうにかしてラーメンをこぼさないようにしたかったが、現実は無情だ。
陸くんがぶつかった反動で体勢が崩れ、自分の体がもう倒れる体勢に入ってしまっている。
「勉くん!」
香奈さんがそう叫ぶが、
もうダメだ…おしまいだぁ…
と思っていたが、救世主が現れた。
そう、香奈さんだ。
咄嗟に席から立った香奈さんが、僕が持っていた2人分のお盆を持ち、
僕は倒れた
「だ、大丈夫です……か?」
「は、はい、なんとか……」
倒れたまま答える。
「あの、ラーメンは…」
「大丈夫です。こぼしていません」
「そうですか、良かった…」
陸くんを見ると、少ししょんぼりとした顔で僕を見ている。
「ごめんなさい、勉兄ちゃん」
「まぁ、幸い怪我もないし、大丈夫だよ、さぁ、ラーメン食べよう」
「うん!」
ラーメンを食べ終わったが、陸くんとうみちゃんは、まだ遊具で遊びたそうだったので、キッズルームの遊具でもう少し遊ばせるようにした。
「あの! 陸くんって弟さんですか?」
「いえ、陸くんは僕の母さんの妹の子供なので、まぁ、簡単に言うと従弟ですね」
「香奈さんは前に4人家族だと聞いていたんで、うみちゃんも従妹ですか?」
「ま、まぁ、一応、従妹と言えば従妹ですけど……」
「? 何かあるんですか?」
「えっと、実は……」
「うみちゃんとは血が繋がってないんです」
「えっ! ど、どうしてですか?」
「うみちゃんの本当の両親はもう……」
ちょっと私の家族から離れた話をするんですけど、と言い。
そこから香奈さんはうみちゃんの生い立ちについて話してくれた。
香奈さんのお父さん、誠太さんには弟がいて、その弟さんには幼馴染がいたこと。その人とは誠太さんもよく遊んでいて、その幼馴染の人をよく知っていたこと。その人がうみちゃんの父親だったこと。誠太さんの弟さんとうみちゃんのお父さんは大人になってからも、頻繁に連絡を取り合いっていて、何か困ったことがあった時は、必ず相手を助けると約束していたこと。
しかし悲劇は起こる。
元々、体が弱かったという、うみちゃんのお母さんは出産後の疲れから、体調を崩して、入院してしまう。そしてそのまま体調が良くなることなく………
そこにさらに追い打ちをかける出来事が続く、
うみちゃんが保育園で預かってもらっているときに、うみちゃんのお父さんはトラックに轢かれるという交通事故に遭ってしまったらしい。
すぐに緊急搬送され、治療が行われた。
誠太さんの弟さんはすぐに病院に向かい、うみちゃんのお父さんの安否を祈ったが、
うみちゃんのお父さんが助かることはなかった。
うみちゃんのお父さんを担当した、医者の人が、
「最後の最後に、1度、意識を戻したんです。そしたら」
「うみのことを……頼む……幼馴染からの……最後の……頼みだ……」
と、誠太さんの弟さんに言ったらしい。
そのことから誠太さんの弟さんはうみちゃんを引き取り、幼馴染の代わりに育てることを決意したらしい。幼馴染からの最後の頼みを……
「私がうみちゃんと会ったのは、うみちゃんが3歳の時でした。うみちゃんは警戒心が高く、なかなか保育園でも友達ができなかったみたいなんですけど、初めて会った時に何故か妙に懐かれてしまって……そこから、たまに一緒に遊びに行くんです」
「なんかすみません、軽く話を聞いてしまって…」
「いえ、そんなことないです。最初に言っておけば良かったですよね」
「どうしたの香奈お姉ちゃん?」
遊具で遊ぶのは飽きたらしく、うみちゃんと陸くんがテーブルに寄ってきた。
「ん? なんでもないよー」
「でも、悲しいお顔してる」
「大丈夫だよ、うみちゃん、香奈お姉ちゃんは元気モリモリだから」
「本当?」
「本当、本当、大丈夫だから、心配してくれてありがとうね」
香奈さんがうみちゃんの頭を撫でる。
そこで香奈さんたちとは別れ、
僕たちはゲームセンターに戻り、レースゲームとかをしていたのだが、
「あれ?また会いましたね、香奈さん」
「そ、そうですね。勉くん」
「うみちゃん! 遊ぼ!」
「うん! 陸くん!」
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