第38話 夏休み⑩+⑧

「松海 うみ」


「松海………うみ………」


松海って、あの香奈さんの苗字だよな……でも、 香奈さんって4人家族だったよな。

香奈さん、渚咲さん、未来さん、誠太さんの4人だったはず、じゃあ関係ないのか?


「うみか、いい名前だね」


「あ、ありがとう、えっと、陸くん」


「あの、うみちゃんのお姉ちゃんって……」


「?、なんですか?」


「松海香奈って名前じゃない?」


「そ、そうです。なんで知ってるんですか?」


「え〜っとね、香奈さんとは、同じクラスで……」


「じゃあ、電話できる?」


と、陸くんが聞いてくる。


「うん、できるよ」


「本当ですか、お願いしても…」


「とりあえず、電話かけてみるよ」


電話をかけてプルルルルと鳴るが、なかなか電話に出ない。

ガチャっと出たかと思ったが、


結果は[ただいま、電話に出ることができません]だった。


「出ないね」


「出ないなー」


「出ませんね」


「じゃあ、しょうがないから迷子センター行こうか」


「………はい」


思ったよりも近くに迷子センターがあった。

職員の人が館内放送のために何個か質問をするようだ。


「じゃあ、お名前は?」


「松海 うみです」


「うみちゃんね」


「うみちゃんはいくつ?」


「6歳です」


「6歳ね。うみちゃんは今日誰ときたの?」


「お姉ちゃんときました」


「お姉ちゃんと……オッケー、じゃあ館内放送で呼ぶね」


ピンポンパンポーンと音が鳴り、


「迷子のお知らせです。6歳の松海うみちゃんが迷子センターでお待ちです。保護者の方は迷子センターまでお越しください」


「これで、多分くると思うから」


「ありがとうございます」


それから数分後、香奈さんが迷子センターに駆け込んできた。


「はぁ、はぁ、本当にすみません」


香奈さんは少し走ってきたようで、下を向いて呼吸を整えている。


「保護者の方ですか?」


「は、はい、松海香奈で………えぇぇぇぇ!!!!!!」


息が整ったようで、こちらの方に顔を向け、そこでようやく僕たちに気付いたようだ。


「ど、どうして……ここに勉くんが……」


「それは…」


「このお兄ちゃんたちが私を助けてくれたの」


「そうなの?勉くん?」


「最初に見つけたのは陸で、一回電話したんですけど、出なかったので…」


「えっ!」


香奈さんは慌てた様子で、スマホを見る。


「本当だ!ごめん、うみ探してて、全然見てなかった」


「まぁ、見つかったから良かったじゃないですか」


「本当にありがとう、勉くん、それに陸くんも」


「ねぇ、勉兄ちゃん、お腹すいた」


「私もお腹すいた」


陸くんとうみちゃんが2人ともお腹すいたと言いはじめた。


「僕たちはこれから、ご飯食べるんですけど、それじゃあ……」


「うみちゃん、一緒にご飯食べよ」


「「えっ!」」


僕と香奈さんが同時に驚いた。


「うん、いいよ、香奈ちゃん、いいよね?」


「えっ!私たちはいいけど……勉くんたちは?」


「いいよな、勉兄ちゃん」


「ま、まぁいいけど」


「じゃあ、ご飯」


「「しゅっぱーつ」」


示し合わせたかのように息を揃えて、陸とうみちゃんが言った。








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