第36話 夏休み⑩+⑥

「勉くん?勉くーん」


勉くんから全く反応がない、疲れていたのだろうと思い、

1度勉くんのお母さんに寝ていると言おうと思ったが、


「ちょっとぐらい、イタズラしてもいいですよね?」


勉くんが寝ているベットに近づき、

勉くんの頬をツンツンと軽く突いてみる、


「勉くん、肌、柔らかいですね」


と喋りかけてみるも、もちろん、反応は返って来ない。


「次は…」


勉くんの顔をムニっと両手で軽く引っ張ってみる。


「ふふ、変な顔になってますよ」


勉くんから反応はない。


「もう、これでも起きないんですか?」


ここまでしても起きないなんて……なんてことを思っていると…






さっきから、なんか、触られているような気がしたので、

目を開けるとそこにはなぜか両手で僕の顔を引っ張っている香奈さんがいた。


「香奈さん?なんで、僕の顔を引っ張っているんですか?」


「あ、やっと起きましたか、ご飯ですよ、勉くん」


「わ、わかりました。ところでどうして僕の顔を?」


「晩ご飯ができたので、勉くんを部屋から呼ぼうと思い、部屋の前で呼んだんですけど、反応がなかったので、部屋には入りました」


「部屋に入って?」


「部屋に入ったら、勉くんがベットの上でスヤスヤと寝ていたので、ちょっとイタズラしてみようかと思って………嫌でしたか?」


「いや、別に嫌じゃなかったですよ」


「嫌じゃ…なかった…」


「い、いや、別に、変な意味とかで言ってるわけじゃないので」


「そ、そそ、そうですよね。勉くん、晩ご飯食べましょう」


「そうですね」


香奈さんが家にいると変な感じになる。

変な意味ではないが、自分の家なのに、

自分の家じゃないみたいで、僕ともう1人住んでいる……

まるで奥さんがいるような……

って何考えてるんだ俺は!

いくら、香奈さんのことが好きだと自覚しても、

やっていいことと悪いことがあるだろ!っていうか悪いことしかしてない!

何、変な妄想をしているんだ!!!

その後、香奈さんと母さんと晩ご飯を食べたが、最初に部屋から出てくるの遅くない?と言われただけだったが、それ以上母さんは聞いて来なかったので、そのままお開きとなった。


「勉、香奈ちゃんを家まで送ってあげなさい」


「言われなくてもそうするつもりだったけど…」


「今日は本当にありがとうございました」


「香奈ちゃん、こんな勉と友達になってくれたありがとう。またいつでもいいから、ご飯食べにきてね」


「こんなってなんだよ…」


「はい、今日はありがとうございました」


家を出て、香奈さんの家まで歩いていたが、ふいに香奈さんが、


「勉くん、私は怒っています。なぜでしょう」


「えっ!急にどうしたんですか?な、何か大変なことを……」


「い、いえ、そんな大層なことじゃ……」


「じゃあ、何をしてしまったんです?僕は」


香奈さんに嫌われるのだけは嫌だ!


「勉くん私のことを香奈って呼んでくれなくなったじゃないですか、海の時は呼んでくれたのに」


「そ、それは……恥ずかしくなってしまって…」


「は、恥ずかしい?」


「流石に、香奈さんみたいな綺麗な人の名前を呼び捨てにすると、他の人たちにどう思われるかが心配で…僕みたいな人と香奈さんについてなんか変な噂がたったって嫌ですし」


「そ、そうなんですね。分かりました。じゃあもっと親しくなればいいんですね」


「へっ?か、香奈さん」


「もっと親しくなって、名前呼び捨てでも何も言われないぐらいになればいいんですよ。

今日はありがとうございました。さようなら、勉くん」


バタンっとドアが閉まる。

いつのまにか香奈さん家の前まで来ていたようだ。


「さ、さようなら、香奈さん」












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