第30話 夏休み⑩

「あのさ、私たちと一緒に遊ばない?」


「女子2人で退屈でさー」


「は?」


夏休み4人で遊びに来たら海でナンパされた。

こうなるから優樹は俺にも注意したのか、と思ったが、

2人のナンパは止まらない。


「ねぇ、いいでしょ、私たちと遊ぼうよ」


「えっと、その…」


「なになに、もしかして、照れてる?」


「ねぇ、この子可愛いんだけどー」


2人が僕を挟むように座り、どんどんと距離を詰めてくる。


「あの、少し離れてもらえませんか?」


「えぇ、いいでしょ、これぐらい」


「そうそう、これくらい大丈夫だよ」


「えっと、あの…」


さっきから全然言い返せることができないのは、

実は人見知りで、少し喋るくらいだったら、全然普通にできるのだが、

初対面で、ましてやこんなに早く距離を縮めてくる人たちに対してなので、

普通に喋ることができない状態になっている。そしてすこしパニクっている

香奈さんはこんな大変ことに何回も何回も対応していたのか。

誰か助けて!と思っていたら。

「勉くん?そちらのお2人は?」


「五十嵐くん、どうしたの、もしかして…逆ナン!」


「あの、お2人は勉くんとどういった関係で…」


「お兄さん、この2人、誰?」


「あの!お2人は…」


「私たちはお兄さんの彼女で〜す」


「「えっ?」」


「は?」


やばい、空気が変わった。

暑いから汗をかくのは当たり前だけど、

違う!これは冷や汗だ!


「勉くん、このお2人は彼女なんですか!」


「あの…」


「彼女なんですかって聞いてるんです!」


「あの、違います」


「ですよね。勉くんが浮気するはずありませんし」


「「「えっ?」」」


僕とナンパしてきた2人の声が重なった。


「ですので、私が勉くんの彼女ですので、どうか別の人をあたってください」


「な、なんだ〜お兄さんこんな可愛い彼女いるんだったら早く言ってよ〜」


と言い、僕らから離れていく。

離れぎわ、


「あ〜マジでタイプだったのになぁ。」


というような声が聞こえたが、気のせいだろう。


「勉くん、大丈夫ですか?」


「大丈夫です。初めてナンパなんかされたので、ちょっと焦ってしまって、どう対処すればいいかわからなくて、こんな大変なものを何回も対応してるなんて、香奈さんは凄いですね」


「もう慣れてしまったので」


そこで僕のナンパ騒動は終わり、飯田さんと香奈さんに荷物待ちを交代して、

さっきのことを流すかのように海に入って、

香奈さんに彼女です、と言われた時はめちゃくちゃドキドキしてた。

ラノベのヒロインの気持ちがわかった気がする。

なんてことを考えていたら、

もう、優樹と交代の時間になっていたので、

急いで戻ったら、優樹が


「大変だ!勉!香奈さんが!」


「ん?香奈さんがどうした!」


「香奈さんが流されてる!」


「どうしよう五十嵐くん、人が多かったから少し奥の方まで行ったら、流されちゃった!」


「浮き輪してるからだと思うが、浮き輪のおかげで溺れる心配はないと思うけd」

そこまで聞いた僕は海に走って行った。


「俺が香奈さんを助けるから、そこで待ってて!」


今日は香奈さんに助けられてるから、今度は…





俺の番だ

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