第14話 文化祭デート①

「あの、松海さん」


「どうしましたか?勉くん?」


「すごい見られてる気がするんですけど…」


松海さんに誘われて文化祭を一緒に回っているのだが、案の定めちゃくちゃ見られている。


「そうですか?気のせいじゃないですか?」

松海さんはそう言うが絶対に見られてる。

というか、男子からの視線は殺気がこもってるとしか思えない。


「それで、どこ行きますか?勉くん」


「特にないので、松海さんが行きたいところで」


「それじゃあ、ここに行きたいです!」


「こ、ここですか…」


松海さんが行きたいと言ったのは、

お化け屋敷だった。


「松海さん、こういう系大丈夫なんですか」


「私、こういうの大好きなんです!」


「そ、そうですか…」


お化け屋敷に入って、数分。僕は恐怖の限界だった。

さっきの会話からわかっていたと思うが、お化け屋敷が大の苦手だ。

子供の頃、親に騙されて入ったお化け屋敷でトラウマになってしまった。

そこから、1回も入っていなかったのだが、松海さんの圧がすごくて入ってしまった。


「あの、松海さん、後どのくらいで終わりそうですか」


「まだ全然ありますよ」


「そ、そうですか」


「次はどん感じかな〜」


角を曲がった瞬間、お化けが飛び出してきた。


「わっ!びっくりした」


「っ!」


全然平気そうに見えるが、一生懸命に声を押し殺している。

松海さんに高校生にもなって、お化けが怖いなんて、絶対に馬鹿にされる。

それだけは避けたい。


「もう終わりですよ、勉くん」


「ようやく……ですか……」

と、気を抜いていたのがいけなかった。

最後の最後に後ろから驚かされた。


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」


女の人みたいな声が出てしまった。

そのまま、外に出てベンチで休むことにした。


「あの、大丈夫ですか。すみません、私、勉くんがお化け屋敷、苦手だったの気が付かなくて」


「いや、僕が言わなかったのがいけなかったんですから」


「ふふ」


「高校生にもなって、お化け屋敷が怖いなんて恥ずかしいですよね。笑ってください」


「いえ、違いますよ」


「えっ」


「勉くんにも苦手なものがあったんだなぁ、って思って」


「?」


「今までの勉くんを見てきて、ナンパとかも守ってくれたりして、怖いもの知らずなのかな、と思ってたので」


「いつもと違う、勉くんを見れて私は嬉しいです」


「そう、ですか」


「少し落ち着いたら、次はあ、あそこ行きませんか?」


少し照れくさそうに言って指差した方向には、

自分たちのクラスがやっているメイド喫茶とは違う、

明らかにカップル向けのカフェだった。

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