第11話 文化祭準備②
「ちょっと、こっち手伝ってくれる?」
「それ、捨てといて。」
「誰かー、手空いてる人こっち手伝ってー」
文化祭前日、学校は最後の仕上げへと、学校全体で仕上げにかかっていた。
ちなみに、他のクラスでメイド喫茶をやるクラスがいなかったため。
みんなからいろんな案が出たが、普通のメイド喫茶をやることにした。
「松海さん、これって」
「はい、これはあっちでお願いします」
「松海さん!」
「すみません、松海さん」
「松海さん、こっち手伝ってもらえますか?」
松海さんは文化祭実行委員ということもあって、みんなから頼りにされ、クラスの中心にたち、みんなの指揮をとっている。それ自体は別にいいのだが、おかしい、同じ文化祭実行委員のはずなのに、誰からも、どうすればいいか?的なことが聞かれない。
別に聞かれないんだったら、それでいいんだが、頼りにされてないのかと思うと、ちょっと悲しい。
「勉くん、こっち手伝ってもらえますか」
「了解です。松海さん」
松海さんに呼ばれたので、行こうとしたそのとき、
「松海さん、危ない!」
「えっ!」
小道具などの入っているダンボールを持っていた女子に少しふざけていた男子がぶつかり、そのダンボールが松海さんめがけて崩れてきた。
僕は意識よりも先に体が動いていた。
松海さんに覆い被さるようにして崩れてくるダンボールから自分の体で守った。その名の通りに
「痛ってぇ。大丈夫ですか、松海さん」
「は、はい。私は大丈夫ですが、勉くんは大丈夫ですか?」
「あぁ、僕は大丈夫です。思ったよりもダンボールが軽かったので」
ごめんなさい、ごめんなさいと女子が言う。ふざけていた男子が気まずそうにこちらを見つめる。
「お前ら、文化祭の準備が楽しくて少しふざけたくなる気持ちもわかるが、周りを見て行動しないと、今みたいな事故が起きちゃうから、幸い今回は怪我人が出なくて済んだけど、次はどうなるかわからないから、気をつけて」
「すまん、五十嵐」
「俺はいいから、松海さんに謝りな」
「松海さん、本当にすみませんでした」
「いえ、幸い怪我はなかったのですから、お気になさらず。みなさん、作業を続けてください」
その一声で、クラスの作業が再開する。
いやぁ、ギリギリだけど、間に合ってよかった。自分でもなんであんなに必死になったんだろう。まぁ、松海さんに怪我はなかったし、いいか。
その後、作業は順調に進み、3時間後に全ての準備が終わった。
「みなさんお疲れ様でした。思わぬハプニングもありましたが、無事完成したので、明日の文化祭全力で楽しみましょう」
「そういえば、松海さん」
「はい、なんでしょう」
「衣装合わせの時、いませんでしたよね」
僕たちのクラスは1週間前にクラス全体で衣装合わせをしたのだが、そのとき、松海さんの姿だけが見えなかったのだ。松海さんのメイド服がいち早く見られると思っていた男子たちはすごく悔しそうにしていた。
「あぁ、その時はちょっと用事があって、着ることができなかったんです。それで明日の朝に一回着ることになっていたんですよ。まぁ、それでサイズが合わなかったら、明日はメイド服着られないんですけどね」
「えっ、それ大丈夫なんですか?」
「サイズは先に言ってありましたし、多分大丈夫だと思うんですけど。ちょっと心配なんです」
「そうです。明日の朝、勉くんも見てくれませんか?」
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