第10話 文化祭準備①
「今日のLHRは一ヶ月後にある文化祭の出し物についてです。まず、文化祭実行委員を決めてください」
一年の中で一番盛り上がる行事と言えば、
そう、文化祭だ。
今日はその文化祭の出し物を決めるらしいが、その前に文化祭実行委員を決めるらしいが、僕には関係のないことだ。
「文化祭実行委員になりたい人は手を挙げて」
クラスのどこからも手は上がらない。
しかし、
「はい、私がやります」
「おぉ、松海がやってくれるのか、よろしく頼むぞ。けど、もう1人男手が欲しいな」
「はい!はい!」
「俺やります!」
「お前ら抜け駆けしてずるいぞ。俺がやります!」
うわぁ、さっきまで息を殺していたのに、松海さんが実行委員をやることがわかったらみんな立候補し始めたぞ。
「どうしようか、これじゃ埒が開かないな。松海、お前がもう1人誰にするか決めてくれ」
「私が決めていいんですか?」
「そうだ。お前が決めてくれ」
「そうですか、では…」
クラス中の男子からの視線が一気に松海さんに集まる。
「では、勉くんで」
は?とクラス中が心の中で思った。
もちろん僕もだ。
「えっ、五十嵐?」
「はい、勉くんです」
「今、名前で…」
「名前で呼んで何か悪いですか?」
あの圧、渚咲さんや誠太さんと同じ!
やっぱり同じ血なんだな。
そんなことよりも、
「あの、俺、さっき立候補してないんですけど」
「知ってますよ」
「えっ、じゃあなんで僕なんですか」
「そうですね。なんででしょう。私にもわかりません。けど勉くんがいいんです」
なんだか告白みたいだが、誰も気にする事なく。
「それではみなさん、もう1人の実行委員は勉くんでいいですか?」
また何か反発があるかと思ったが、
1人の男子が、
「まぁ、五十嵐だしな」
「そうだな、五十嵐だしな」
と、こんな感じに意味のわからない根拠でクラスが納得してしまった。
「それでは、勉くん前に」
「はい、文化祭実行委員になりました。五十嵐 勉です。よろしくお願いします」
「それではまず、出し物を何にするか決めましょう」
「はい、メイド喫茶がいいです」
出た、典型的な文化祭の出し物。必ず一回はこの案が出る。だが、まさか女子がこの案を出してくるとは思わなかった。
こういうのは男子がいうものだと思っていたけど、意外にも男子は静かだ。男子が言うとセクハラになるからだろうか。
「メイド喫茶でもいいんですが、普通のメイド喫茶だと、出し物の数は決まっているので、他のクラスに負けて、メイド喫茶ができなくなってしまいます」
「何か、他のクラスと差別化できればいいんですが」
その時、ちょうどチャイムが鳴り、今日のLHRの終わりを告げた。
「では、次のLHRまでに何か他のクラスと差別化できる案を考えてきてください」
そうして今日のLHRは終わった。
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