第6話 2人きりで

「お邪魔します」


「うん、入って入って」


なぜか松海さんに誘われて松海さんの家で勉強することになった。

普通の男子だったら、何か期待することがあるかもしれないが、それよりも僕は怖くて仕方がなかった。なぜならあの松海さんのことが大好きな渚咲さんがいるからだ。

あの人に見つめられると、蛇に睨まれた蛙のようにすくんでしまい、汗を尋常じゃないほどにかいてしまう。


「あれ、お姉ちゃんいるー?」

家のどこからも返答はない。ということは…


「今、お姉ちゃんいないみたい」

よし、と心の中でガッツポーズをする。


「お姉さん、いないんだ」 


「うん、いないみたい。どこ行っちゃったのかな」


「さ、勉強しようか」


松海さんにどこかわからないところはあるかと聞かれたが、基本的に自分の中では、完璧にしているつもりだったので、特にないなと言ったら、まぁ学年2位だもんね。と返ってきた。

明日のテストで絶対に学年1位になってやる。

その後松海さんとワークの復習をして一息ついたところで松海さんがお茶にしましょうかと言って、紅茶とマーマレード?まぁお茶菓子を持ってきてくれた。松海さんが淹れてくれた紅茶は今までに飲んだ紅茶の中で一番美味しかった。松海さんは市販品を淹れただけだと言っていたが、後日同じように市販品を買って淹れてみたが、渋みがすごく、飲めるもんじゃなかった。


「ただいまー」


渚咲さんが帰ってきた。


「あれー誰かいるの?」


「お姉ちゃんおかえりなさい」


「ただいまーで誰がい、少年、今日はどうかしたの?また傘間違えちゃった?」


急に渚咲さんの雰囲気が昨日会った時と同じような感じになった。


「あれー本当に香奈と少年は付き合ってないんだよねぇ」


「だから、付き合ってないよ」


松海さんが返すが、


「じゃあ何で2日も連続で家にいるの?」


ごもっともである。付き合ってない男女が2日連続で家にいるなんて、

幼馴染でもない限りないだろう。


「そ、それは、私が呼んだから」


それだけの理由で渚咲さんが納得するかと思ったら。


「香奈が呼んだんだ。なら少年、ゆっくりしてっいってね」


やっぱりそうだ。渚咲さんは、彼氏じゃないことがわかると圧がなくなり、

急に怖く無くなる。

その後1時間ぐらい勉強したあと、


「そうだ少年、いつ家にご飯食べに来る?」


「今日、今日とかどう?」


そして僕のことを彼氏じゃないとわかれば、結構気に入っていると思う。

だってさ、気に入ってない奴をグイグイご飯誘わないよね。


「今日も家でご飯があると思うので」


「えぇー残念」


「今日はこれでお開きにしましょうか」


その言葉で今日の勉強会?は終わりになった。

今日は昨日と違って渚咲さんはすんなりと家に返してくれた。

よし、最後の追い込みだ。


「明日に向けてもう一踏ん張り頑張ろう」


明日のテストで絶対に松海さんに勝ってやる。



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