第3話 やっと

「よし、ようやく一人になった」


松海さんが一人になるまでSHRが終わってから1時間もかかった。

みんな部活があるはずなのによくこんな時間まで喋れたな。

部活よりも松海さんを優先してるのかな。

まぁそれよりも傘を返さないと。


「あの、松海さん」


「何ですか。五十嵐さん」


「実は昨日コンビニで傘を間違えて持って帰っちゃって。これ返します。

本当にすみませんでした」


「え、どういうことですか。傘は自分のだったはずでしたが」


「でも、ここに松海さんの名前が…」


「本当だ。私の物ですね。ありがとうございます。じゃあ私が昨日使った傘は誰のものなんでしょう」


「多分なんですけど僕のだと思います」


「どうしましょう。今はその傘を持ってきていないし」


「いやまぁ明日にでも返してくれればそれでいいです」


「でも明日は雨だったはずなんです。それじゃあ五十嵐さんが困ってしまいます。そうだ、今から私の家に取りに来てくれませんか」


「えっ、松海さんの家ですか」


「はい、そうです。今から取りに来てくだされば、明日雨が降っても大丈夫ですし」


「まぁ、そうですね。でもいいんですか」


「何がです?」


「家教えちゃっても。自分でいうのは何ですけど何かするかもしれないし」


「五十嵐さんはそういうことをしない人だと思っているので」


「まぁ、しないですけど」


「では、いきましょうか」


松海さんの家に着くまで松海さんといろんな話をした(主に勉強)学校から出るまでに先輩や同級生などに見られたが大丈夫なのだろうか。松海さんは、4人家族で5歳上のお姉さんがいるらしい。中学卒業と同時にこっちに引っ越してきたらしい、前は松海さんが住んでいた県で1番の女子中学校にいて高校もそのままエスカレーター式だったが、お父さんが引っ越しするとなってこっちに引っ越してきたらしい。一日の勉強時間はどのくらいかと聞くと1〜2時間ほどらしいが、予習と復習を完璧にして、ケアレスミスをなるべく少なくしようとしているらしく、そのため、全教科ほぼ満点なんだという。

予習と復習は欠かしていないはずなのに、どこで差が生まれるんだろうと思った。

そう話している間に松海さんの家に着いた。松海さんの家は僕の家から徒歩10分くらいのところにあった。傘を返してもらって帰るかと思っていたが。


「あれ、香奈お帰りー。誰連れてきたのーって、男の子じゃん!」


「はじめまして香奈の姉の渚咲です。香奈とはどういう関係ですか?」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る