第2話 どうしよう
一応学校に傘を持ってきたがどうしようか。
「いつも誰かしら彼女の周りにいるからなぁ」
「まぁ人がいなくなるのを待つか」
その考えが浅はかだった。
周りから人がいなくなるのを待っていたら、いつの間にか放課後になっていた。
完全にタイミングを失った。
だってしょうがないじゃん。ようやく落ち着いたかなと思ったら、
新しい人がどんどんどんどん餌を見つけた蟻のように群がっていくんだもん。
「ずっと松海さんのこと見てどうしたんだ。勉」
「何だよ優樹、別に見てねぇよ」
「そんな無愛想だから友達ができないんだよ」
「まず友達の定義について教えてくれ」
「はいでたー。それ友達いない奴が言うんだぞ」
彼は
こいつとは切っても切り離せない仲で所謂腐れ縁ってやつだ。
中学に入って一番最初の定期テストで学年1位をとった後
すぐに勉強を教えてくれと頼んできてそこからずっと関係が続いている。
中学の最初のテストでは100位くらいだったが、元々地頭が良かったらしく、
勉強を教えたらみるみる点数が上がっていき今では10位くらいにまで順位が上がった。
「松海さんの傘を間違えて持って帰っちゃってさ」
「何でお前が松海さんの傘を?」
「コンビニにシャー芯買いに行ったらその時に間違えてさぁ」
「へぇ、そうなんだ。早く返しなよ」
「それができたら苦労しねぇよ。いつまで経っても人がいなくならないんだよ」
「まぁ、松海さんは人気だからな。勉強ができて誰にでも優しいし、それであのルックスだからなぁ。モテるんだよなぁ。高校に入ってからもう10人ぐらいから告られたらしい」
「マジかよ。もう誰かと付き合ってるの?」
「いや、全員振ったらしい。今は誰とも付き合う気はないだってよ。まぁ俺らには関係ない話だけどな」
「嘘つけ、お前モテるだろ」
そう渡辺優樹はモテる。もともとイケメンでスポーツ万能だったので
女子からの人気は高かった。しかも勉強もだんだんとできるようになり、
まさに文武両道のイケメンの完成である。告白も何回かされているらしい。
「お前も顔自体は上の方だから人当たりをよくすれば、お前も絶対モテるんだけどなぁ」
「もともとこっちからいくの苦手なんだよ」
「まぁ人それぞれだからな。少しづつでいいから頑張れよ」
「まぁ頑張るよ」
それよりもまずは松海さんに傘を返すことの方が優先だ。
松海さんの周りにはまだ人がいる。
「いつになったら一人になるんだろう」
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