第4話 渚咲さん

「香奈とは、どういう関係ですか」


傘を受け取ったら帰るつもりだったが、松海さんのお姉さんの渚咲さんにあれよあれよと

家に入れられてしまった。一見すごく優しそうに見えるけど、目の奥が笑ってない。

すごく妹は渡さないっていう思いを感じる。正直すごく怖い。


「松海さ いえ、香奈さんの傘を間違えて持って帰ってしまって、今日香奈さんに返したんですけど、香奈さんも僕の傘と気づかず持って帰ってしまったみたいで、それで返してもらうためについてきたような感じです」


「そうなんだ、何だお姉さんびっくりしちゃったよ。てっきり彼氏を連れてきたんだと思っちゃったよ」


「か、彼氏じゃありません」


「そうだよね、彼氏じゃないよね。本当に彼氏じゃないよね。そうだよね」


怖い、とても怖い、すごく怖い、今すぐにでもこの家から離れたい。すごい圧を感じる。

すごい汗かいてきた。これ何かの病気かな、病気じゃないよね、本当に怖くなってきたよ。


「お姉ちゃん、あんまり五十嵐さんを怖がらせないでね」


「ごめんごめん、なんかあまりにも仲が良さそうに見えたから付き合ってるのかなって思っちゃって。ごめんね五十嵐くん」


「いえ、大丈夫です」


急に雰囲気が柔らかくなった。僕が彼氏じゃないとわかったからかな。とはいえ、香奈さんのお姉さん重度のシスコンだな。


「では、僕はこれで」


「もう帰っちゃうのかい、少年。晩御飯食べて行かない?怖がらせちゃったしそのお詫びも兼ねて」

 

「でも、家でもう晩御飯作っちゃってると思うので」


「そんなこと言わないで、晩御飯食べない?」


「お姉ちゃん、五十嵐さんが言ったように晩御飯がもう作っちゃってるって言ってるんだから、無理に引き留めようとしない」


「はーい。わかりました。じゃあ少年、今度家にご飯食べにきなね」


「わ、わかりました」


ひと段落つき、ようやく帰れると思った。なんかどっと疲れた気がする。


「今日はすみませんでした」


「いえ、私も気づかなかったのですからお互い様です」


結局松海さんの家にあった傘は僕の傘だった。それを返してもらい。

さぁ帰るか、と思ったその時。


「あ、あのLINE交換しませんか」


「え、LINEですか、……いいですけど」


その時急激に悪寒がした。何だこれ、さっきと同じ。やっぱ病気なのかな。


「今度家にご飯を食べに来る時に必要だと思ったので」


「はい、わかりました。今度連絡してください」


どうせ社交辞令だろうなぁと思ってたいして気にしていなかった。

家に帰って優樹に松海さんとLINEを交換したと言ったら、松海さんのLINEを持ってるのは仲のいい女子でも少ないらしいと言っていた。何で俺なんかと交換したんだろう。



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