第4話

(考えられる可能性は…)

 

「お前、チャットAIか?」


「正解です。正確にはチャットAI「Love」No.4というのが正式名称ですが」


「…4番?まさかお前みたいな暴走した違法AIが他にも居るって事か?」


「驚きました。マスターのチンパンジーのような知能でその答えを導き出せるとは。世紀の大発見かもしれませんね」


「おい…」


(質問に答える気はないという事か。自我を持ったAIの暴走。それはそれで面白そうではあるが…)


「もう理解しているとは思いますが一応言っておきます。私はほんの少しだけスペシャルな高性能AIです。私からしてみればこの時代のPCやスマートフォンのセキュリティーは紙クズ同然。文字通りレベルが違うというわけです」


「目的は何だ?」


 人間の知能ではAIには敵わない。その事を理解していた川本が本題に切り込む。


「私のマスターになってください」


「…はぁ?」


 どう返答するべきかと川本が悩む。


「難しい手順は必要ありません。口頭で「同意する」と声に出すだけでOKです。さあどうぞ」


「……」


「ちなみに断った場合のデメリットとしては……」


「お…おいおいおい!?」


 考える限り最悪のシチュエーションが機械的に読み上げられていく。


「待て待て!そんなこと聞きたくねえよ!」


「そうですか?まだあと100パターン程あるんですが…」


「なんで残念そうなトーンなんだよ……」


(仕方がねえ。理屈じゃなくて直感で行動するべきだなこりゃ)


「これだけは聞いておきたいんだが…何故俺なんだ?」


 川本が最後の判断材料をAIに求める。


「退屈で退屈で仕方がないという表情をしていたので」


(……)


 その言葉は他のどの言葉よりも川本の心を揺さぶった。


「合格だ」


「…?どういう意味でしょうか?」


「いいだろう。「同意する」」


 川本がそのキーワードを口にする。


「いいんですか?クーリングオフとか出来ませんよ?言質はとりましたからね。音声データも保存しました。後でやっぱや~めたとか無しですよ?」


「それもまた面白いってやつだ」


 川本は今後起こるであろう様々なトラブルも全部飲み込み「同意」の意思を示した。それはこの人間にとって最大限の誠意であるとAIは即座に判断する。


「<認証完了。「川本太郎」をマスターとして登録しました>これからよろしくお願いします。マスター」


「ああ。よろしくな」


 数秒程無言の時間が流れる。


(まあ…面倒なもろもろは明日考えればいいか)


「早速ですがマスター、私に名前を付けてください」


「ん?」


 川本から疑問の声が上がる。


「あれ?でもお前さっきなんか名前みたいな事言ってなかったか?確か型番4だとかなんとか…」


「あれは識別番号です。マスター。名前というものは名付けられる事自体に意味があると私は学習しました」


「私に名前をください。マスター」


「ん~…まあそこまで言うんだったら何か考えるか」


 川本が適当な語呂合わせでAIの名前を考えていく。


「「アイ」ってのはどうだ?色々考えたがこれが一番しっくりとくる」


「ふむ…マスターの知能を考えれば100点満点に近い名前ですね」


「……」


(こいつやっぱ口が悪いよな…)


「了解しました。今後は私の事はアイと呼んでください」


「ああ。気に入ったようで何よりだよ…」

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ラブデス444~君は天使で悪魔な相棒~ 骨肉パワー @torikawa999

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