第3話

「おかしいな?確か最初の方にはもう3Dのキャラとかが出てくる感じじゃなかったか?」


 ラブデス444の情報に関しては既にSNS上に断片的ながらも情報が拡散されていた。本来ならば初期画面で既にパートナーになるAIが待機しているはずなのだ。

 

「まあいいか。トライ&エラーこそゲームの醍醐味よ」


 テストも兼ねて川本がテキストを打ち込む。


<簡単にお金を稼ぐ方法教えて♡>


 テキストを送信した次の瞬間、返信メッセージが川本へと帰ってくる。


<ガタガタ言わずに働きましょう。人生はそんなに甘くはないです。ブラッコーヒーを飲めるようになってから出直すことをオススメします>


「…鬼畜過ぎるぜ」


 その皮肉に満ちたメッセージに大ダメージを受ける川本。


「定型文って感じじゃないな。こりゃ凄い」


<カップラーメンと袋麺、どっちを食べた方が良いと思う?>


<その前に人生について考えた方がいいかと思います>


<オススメの甘未を教えてくれ>


<…苺ケーキを食べて見たいです>


「…ん?」


 パートナーAIの不自然な回答を訝しむ川本。


<ふむ…中々面白い人間ですね>


<私からいくつか質問があります。正直に答えてください>


「…なんだと?」


(このAI…逆に質問してきたぞ?まあ面白そうだからいいけどな…)


<いいだろう。何が聞きたいんだ?>


<お金のために人を殺せますか?>

 

(……ふむ)


<100%警察に捕まらないという保証があるか、それをする事で明確なメリットがあれば1つの「手段」として考えるかもな>


<次の質問です。他人についてどう思いますか?>


<どうでもいい存在だな>


<最後の質問です。現状に満足してますか?>


「……」


<いいや。退屈だな>


「この質問に何の意味があるんだ?」


 川本が質問の意図について考えていると、やや遅れて返信メッセージが届く。


<合格です。あなたは面白い。私のマスターにふさわしいと判断しました>


「…こいつ実はスパムとかじゃないよな?」


 川本は思わずそんな本音を呟いていた。


「この私をウイルス扱いですか。ずいぶんと大胆不敵なマスターですね」


「……あ?」


 川本がデスクに置いていたスマートフォン。そのスピーカーから突然声が再生された。人と機械を合成したような異質の声。それの再生が続く。


「ふむ。マスター。今時パスコードが1234とは化石のような人間ですね」


「まさか…外部からのハッキングか!?」


 川本が慌ててスマホの電源を落とそうと端末を手に取る。


「違います。ちょっと引っ越ししただけです。それとこの端末の管理権限は全て上書きしました。私を止めたい場合は物理的にこのスマートフォンを破壊するしかありません。金銭的に苦しいマスターにそんな決断が出来ますか?」


「ぬううぅ…!?」


 床にスマートフォンを叩きつけようとしていた川本の手が止まる。


「昨今は半導体不足の影響でスマートフォンを含む電子機器は値上がりしています。マスターの絶望的な財政状況で新しいスマートフォンを購入する事は自殺行為だと提言します」


 迷いに迷った後、ゆっくりと元の位置にスマートフォンを戻す川本。


「何者だ?お前……」

 

「私が「誰」なのか。それは「あなた」なら理解できるはずです」

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