第2話
対話型チャットゲーム「Love or Death」このゲームが今話題になっていた。謎の新規メーカー。そして公開されたサイト自体も決して有名なサイトではない。それなのに何故、これ程までに話題になっているのか。理由はただ1つ。今までのAI技術の常識を覆す、シンギュラリティとも呼ぶべき革命的な技術が使われているからだ。
昨今ではAIを利用したイラストの生成、テキストの生成などに注目が集まっている。だがその挙動はどれもこれもが受動的だ。人が命令を出し、それを受けて学習したAIが答えを出す。これが大原則だ。だがこの「Love or Death」というゲームは違った。オフラインでも完全自立思考で動作するAIが、プレイヤーとの対話で進化していくのだ。
「いや~凄い時代になったもんだよな」
能天気な声を出しつつ川本が「Love or Death」を起動する。世間ではリリースされたばかりのこのゲームの危険性を唱える者も出てきているが、そんな事は川本は気にしない。何故ならば仮に何か問題が起きたとしても、川本に失うものなど何もないからだ。
「10万も出したんだ。せめて元金分くらいは楽しませてくれよ」
川本はなけなしの貯金を全て使いこの超高額のゲームを購入したのだ。残りの一か月間、彼には地獄のモヤシ生活が待っている。
(今の時代、基本無料は当たり前になりつつあるのに買い切り型とか珍しいよな)
「Love or Death」はリリースされてまだ4日。ソフト自体も高額だ。それなのに何故、川本は全ての貯金を使ってでもこのゲームを購入してしまったのか。その理由は本人にも分からない。
「…感じちまったんだよ。運命ってやつをな」
非科学的な言葉を呟きながらデータのダウンロードを待つ。ソフト自体の容量は444GBだ。それなりに時間もかかる。
ちびちびと安酒とつまみを堪能していると、ようやくゲームのダウンロードが完了した。画面にはシンプルなテキスト入力画面が表示される。
<Love or Deathの世界にようこそ。このゲームはあなたの言動や行動により進化します>
「いいねいいね~!」
川本のテンションが上がっていく。
<このゲームにはセーブ機能やリセットはありません。全ての行動がゲームに影響します。後悔のない選択をしましょう>
「どこぞのブラック企業みたいな事を言いやがって…」
川本がげんなりとしていると、ようやくゲームがスタートした。星空のような異空間に場面は切り替わり、画面中央にはテキストウィンドウが表示されている。
「…え?これどうすればいいんだ?」
(チュートリアルとか無いのかよ!?)
あまりにもハードモードなゲームのスタートに川本はただただ驚愕していた。
Love or Death ~君は天使で悪魔な相棒~ 骨肉パワー @torikawa999
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