第3話 ガチムチヒカル、ロリペド疑惑

 ヒカルの不純な腕立て伏せを見てから、二日たった。見た瞬間は即カーテンを閉めてみなかったフリをしたのだが、不味いな、見ていたことがバレたらどうなるんだろうか?友情に亀裂が入るのは、避けたい。

 意外なことにヒカルは、二日間何も言ってこなかった。俺が見ていたことを気が付かなかったか?

 それならそれでいい、俺から何かアクションを取らなければ友情が壊れることもないだろう。

 そして、ヒカルの奇行を覗き見して1週間、例の腕立て伏せが記憶から消え去る頃に、ヒカルから電話があった。

 “ちょっと来てくれ”

 それだけ言うと電話を切ってしまった。んー。何だろうな。などと思いつつ頭によぎったのはこの間の腕立て伏せだ。まぁ見られて良い気はしないものだしな。口止め的な何かをされるのだろうか?

 取り敢えず俺は家に置いてあったお茶受けを適当に箱に詰め、隣の誉家に行った。

「あら、辰馬。久しぶりね、元気してた?」

声をかけてくれたのはヒカルの姉の撫子さんだ。とりあえず、お持たせを撫子さんに渡すと

「あら珍しいわね、アンタから持ってくるの」

と言いながら蓋を開けると、バラバラの種類の菓子が出てきた。

「これはどう言う意味が?お菓子アソートということかしら」

などとぶつぶつ言っていたので、

「家にあった菓子を適当に詰めて持ってきたので、バラバラですみません」

正直な話、俺はこの撫子さんが苦手だ。この撫子と言う人、性に対してはとてもアグレッシヴな人で、俺の童貞をを奪って行った人でもある。あの時は酷く動揺して泣き出した、気がする。俺は小学生くらいで無理やりされたらそりゃ泣くだろう、と今にして思うが、当時はそんな事思いもよらずにただ怖かった。ただまぁ、まだ精通もしていなかった子供にする事か?と言う気は物凄くする。

「あれ?撫子さん、そろそろ夏休み終わるんじゃないですか?」

「まだ2週間くらいあるわよ」

大学の夏休みって凄く長いのよ〜と歌うように言った。俺はその歌に釣られて歌いそうになった。

それからヒカルの部屋に向かった。

「ヒカル、入るぞー」

「おう、入ってくれ」

ドアの前でちゃんと声をかけなければな。何やらしていたら、双方とも悲惨な事になる。

「それで?何の用?」俺は、そう声をかけた。

ヒカルは言い淀んだが、ついに意を決したらしく

「この間俺が腕立て伏せしているの、見ただろ」

と尋ねてきた。

「まぁ、見た」

「じっくりねっとりとか」

「いや、そこまでは見ていないけれども」

「そうか」

「うん」

「じゃぁ、机の中に隠した物も見たか?」

「…………見えた」

色々ぐるぐる考えたが、結局正直に答えてしまった。

「そうかー……」

とヒカルは答えると、言いあぐねたように黙ってしまった。

仕方ないな、と思って俺は話の水をむけた。

「ヒカルは……その、小さい女の子とか好きなの?」

直球だったらしい。それもど真ん中。いや、シンカーで内角を抉ったか。

まぁどうでも良い。俺は野球に詳しくないしな。

「……ああ、そうだ……やっぱり変か」

変というか、ヒカルがそんな発言をすると物凄い犯罪の臭いがする。

「あの。個人の性的嗜好だからとやかくは言いたく無いけど……犯罪だけは起こすなよ?お前だけでなくお前の家族も大変な事になるんだからな。それから腕当て伏せをしながら接吻はやめた方がいいぞ?キモいから」

「犯罪なんか起こさん。少女にトラウマになることなど断じてできない」

ヒカルは、しかしなぁと言って自論をぶちまけた。顔を近づけて女児の体に顔を埋めたいという欲求もあってだなそれを昇華させるには腕立てがいちばん良いと言う結論になっているんだよな腕立てより良い方法はというと

「なぁ一緒に考えてくれないか」

本音ダダ漏らししてしかも俺が聞いていると言う前提で振ってくるのは止めてくれないか。

「腕立てを辞めて普通に眺めていれば良いんじゃないか?」

「それじゃ達成感を得られないじゃないか。俺がただ自分が気持ちよくなるためだけにやっていると思うか?」

いや、相手は写真だから。お前が何か言ったって受け答えなんかしないよ。

「それはダメだ。俺は腕立てをするときに彼女達のプロフィールを考えて、どんな性格で何が好きか決めてからする事にしているんだ」

やめろよ、その性癖を披露するの。ドン引きするわ。

「うーん」と二人で唸っていると、撫子さんが入ってきた。

「麦茶とお菓子持ってきたよー」

取り敢えず水入りだ。大変変態な話を聞かされ続けていたので少し疲れた。

「で、何の話してんの?腕立て伏せがどうのとか聞こえたけど」

撫子さんの発言に俺とヒカルは硬直した。

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