第36話
沿道の建物にはまほプリの軌跡を振り返る展示なんかが入っていて、寄り道をしながらエリアの奥へと進んでいく。一番奥にまで進むと、校舎の圧倒的存在感に思わず息を飲んだ。
「校舎の中って入れるんですか?」
「もちろん。ここが今回のイベントのメインアトラクションよ」
私達は校舎の中へと入って行った。
そこはライド型のシューティングアトラクションだった。ストーリーとしては、魔法学校の生徒である私達が王子たちとの野外魔法実習中に遭遇した、呪いで凶悪化した動物たちを魔法の力で元に戻してあげるというもの。自分が魔法を使えるという感動と、王子たちの録りおろしボイスがかなり気持ちを高まらせた。
「良かったですね! もう一回行きましょう!」
「そうね! 次はボイスの方に集中したいし!」
「最後の燿君のセリフ、かっこよかったですもんね!」
「そうそう! 『最後までよく頑張ったな。褒めてやる』って、もう最高……!」
そう言って及川先輩は噛み締めるように目を閉じた。
及川先輩の推しである周防燿くんは俺様系王子だ。王子たちの中でも1、2を争う人気キャラで、今日見た限りでも燿君のイメージカラーである赤色のブローチや小物を身に着けた人は多い。
もう一度列に並んでアトラクションを楽しんだ後、校舎の外に出た及川先輩が私の肩を叩いた。
「ねえ、あの人達見て」
「え?」
及川先輩の視線の先を追うと、頭の上に王子が寝そべった形のデフォルトぬいぐるみをつけている人たちがいた。
「すごいです! どうやってつけてるんだろう……」
「あっ! あっちに同じような人がたくさんいるわ!」
確かに、右の方の建物の近くには同じようにぬいぐるみを頭に載せた人がたくさんいた。
「行ってみましょう!」
私達は建物の方へ向かった。
「まさかこんなカチューシャがあったとはね」
「しかもさっき発売開始だったなんて! 買えてよかったです」
私達は燿君と奏多君のぬいぐるみカチューシャをそれぞれ身に着けていた。建物に行ってみると中はグッズショップで、限定発売のカチューシャが売られていたから即購入した。
「じゃあ、ひとまず他のエリアにも行ってみようか」
「そうですね」
そう言って私達はまほプリ装備のまま、イベントエリアを後にした。
ここは
「あ……」
「あ……」
そこで私は斗真君と鉢合わせた。
「と、斗真くん! なんでここに!?」
「僕もたまたま遊びにきてたんです。こんなに広いパークの中で会うなんてすごいですね!」
そう言って斗真くんは嬉しそうに笑った。
いやいや、そりゃね、私だって約束してなかった日に偶然斗真くんに会えて嬉しいですよ。隣にいるのは話に聞いてた亮介君かな?2人で休みの日に遊ぶくらい仲良くなって微笑ましい……んだけど! こんな! オタク全力全開な日に会わなくてもいいじゃないか!!
「菜々子さん?」
「いや……ごめん、何でもない。本当、会うなんてすごいね。。…」
その時、及川先輩が前に進み出た。
「あれ? 久しぶりだね!」
そう言って、斗真くんのお友達の手を取った。
「知り合いなんですか?」
「そうそう! いやー、こんなところで会えるなんてね。そうだ! 積もる話もあるし、ここは一旦別行動って事で! じゃあ1時間後にまたここで!」
そう言って、お友達と走って行ってしまった。
残された私たちは顔を見合わせた。
「えーっと……賑やかな方ですね」
斗真くんが遠慮がちに言った。
「う、うん。職場の先輩なんだけど、思い切りのいい人で……あ、すごく優秀なんだよ!」
「そう、なんですね……」
「じゃあ、私達も1時間楽しもっか?」
「はい」
私達は先輩達と反対方向に歩き出した。
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