第34話
私はスマホを置き、額に手をあてた。
「はぁー……」
「いいお話でしたね! 出会いのシーンとか、そのキャラクターらしいというか!……あれ、あんまりよくなかったですか?」
「……違うの、もう良すぎて……余韻にどっぷりはまって、現実に戻れなくなってるからちょっと待ってもらっていい?」
「わ、分かりました……」
数分後、私は現実に戻ってきた。
「もうすっごくよかった! 玻璃ちゃんが最初、らむねちゃんにツンツンしてるところは今の関係性が分かってるからこそ萌えだし、真央ちゃんはさすが人の心を開くのが上手いなぁ! 私も花言葉とか石言葉とか調べてみようかな……」
「はは、それも楽しそうですね。……それにしても、菜々子さんがゲーム強いからサクサク進められましたね」
「まあ、伊達に何年もアイフレオタクやってないからね」
イベントは1話読むごとにライブバトルがあって、それをクリアすることで次のシナリオが開放される。今回はペリドット有利な効果があったから、普段からペリドット最優先で強化してる私にしてみればこれくらいの難易度、チョロいチョロい。
「さーて、イベントシナリオコンプリートしたし、次はガチャかな」
シナリオコンプリートでガチャが引けるアイテム、『ステラ』が手に入った。
イベントガチャは特別キャラの確率が高いけど、必ず出るとは限らない。今回の特別キャラのらむねちゃんは絶対に手に入れたい……!
「斗真君、お願いします!」
私は斗真君にスマホを差し出した。
「僕でいいんですか!?」
「だって、一緒にコラボカフェ行った時も斗真君がらむちゃん引き当ててくれたでしょ。少しでも恩恵にあやかりたい……っ!」
「あれはたまたまでしたけど……菜々子さんがそれでいいなら」
「お願いします!」
「じゃあ、押します……!」
「お願い……!」
斗真君がガチャのボタンを押すと、画面には10枚の扉が映し出された。9枚は白色、残る1枚は金色。
10連だからSランク以上のカードが1枚確定なんだよな……らむちゃん! 私のところに来て!
白色の扉が次々と開き、残るは金色の扉1枚。扉が開く。
部屋には……小さな鉢植えがいくつも並んでいた。そしてカードが映し出される。
「うん、特別キャラの玻璃ちゃんは嬉しい。とても嬉しい。でも、らむちゃんが出るまで回す! 限界まで回すぞ!」
「限界って何ですか……?」
「はぁ……」
「出ない、ですね」
その後2回引いても、特別キャラのらむねちゃんは出なかった。ウィークリークエストなんかをこなして、あと一回10連を引けるくらいはステラを集められるだろう。でもそれで出なかったら……
「さあ斗真君、もう一回だ!」
「行きます!」
画面には8枚が白色の扉、2枚が金色の扉。いい感じだ。
白色の扉が開いて、ノーマルカードが映し出される。次に金色の1枚目。
1枚目は……中村魅亜ちゃんのSランクカード。あと1枚……!
最後の扉が開く瞬間、私は怖くてとっさに目を瞑った。
「菜々子さん!」
斗真君の声に、私は目を開いた。
そこには特別キャラ「花の妖精たち」のらむねちゃんが映し出されていた。
「斗真君!」
私は斗真君に抱きついた。
「斗真君、ありがとう! やっぱり持つべきものは引きの強い良き理解者だね!」
嬉しい。この喜びは言葉では上手く言い表せない。
「な、菜々子さん……」
「あっ、苦しかった? ごめんね!」
慌てて離れる。
「そうじゃ、なくって……」
「?」
斗真君は顔を伏せた。耳が赤い。
「……いつも通りでいようって決めてたのに、こんな……菜々子さんが悪いんですよ……」
「ご、ごめん……」
いつも通りでいてくれようとしてたんだ……その優しさに、赤くなったお顔に、また鼓動が速くなった。
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