第15話
「みんな、お待たせー! それじゃあこれから、特進科『seek red sweet』と商業科『soropachi』のライブバトルを始めるよー!」
らむねちゃんの言葉に、集まった観客からは大きな歓声が上がった。ガーデンステージ上には特進科、商業科、農業科のアイドル、そして対立する生徒たちが揃っていた。
「このライブバトルの目的は文化祭最終日の青空ステージ最後の枠を決めること。バトルで勝った方の学科の生徒が使用する権利を得る。異存はないな?」
真央ちゃんはバトルの発端となった生徒達に視線を向けた。
「ええ!」
「もちろん!」
生徒たちは自信気な顔で頷いた。
「審査は私達peridotが行います。パフォーマンスの順番は事前にくじで決定しました。先行は商業科『soropachi』です」
玻璃ちゃんのアナウンスの後、soropachiとseek red sweetのパフォーマンスが行われた。爽やかで明るい曲調のsoropachiに対し、激しくてカッコいい曲調のseek red sweetはまさに対照的だった。
「審査が終わった。これから勝者を発表する。勝者は……」
真央ちゃんが勝者の名を告げた。
「負けちゃった……」
ステージ裏で楓ちゃんは肩を落とした。
「私がサビの前でステップ上手く出来なかったから……私のせいで……」
すずこちゃんが楓ちゃんの肩をそっと抱いた。
「誰か一人のせいなんかじゃないよ。この負けはこれから糧にして、soropachiのさらなる成長に繋げればきっと大丈夫」
「はい……」
「悔しい……! あたし達を信じてくれるみんなのために……勝ちたかったのに……!」
声を震わせる莉子ちゃんの手を、生徒の一人が握った。
「私達のために3人が戦ってる姿、本当にかっこよかった。やっぱり私達の代表はsoropachiの3人しかいないって思ったよ」
「そうだよ! パフォーマンスから本気なのがすごく伝わってきて感動した!」
「すごいよ! 私達の代表はすごい!」
生徒たちは口々に言って、soropachiの3人の手を握った。
「みんな……!」
その時、向こうから対戦相手の生徒たちが走ってきた。先頭の子が口を開く。
「あの……私達、一緒にステージやらない?」
「え……いいの?」
商業科の生徒が不思議そうに言う。
「うん……今回のバトルを通して、自分の仲間を信じる気持ちと本気のパフォーマンスによる感動を再確認した。それで、対戦相手の子達も同じように信じて、感動したんだって思ったら、ワクワクしてきたんだ。この同じ気持ちを知ってるのは私達とあの子達だけなんだって! だから、さっきまで争ってたのにこんなこと言うのはおかしいかもしれないけど、私達と一緒に青空ステージに出てくれないかな?」
そう言って、手を差し出す。
商業科の生徒たちはお互いの顔を見て、頷いた。
「今回のステージに負けないくらい、最高のステージにしよう!」
彼女たちは握手を交わした。
soropachiの3人はその様子を見守っていた。
「あの子達が納得できる結果になったのならよかった」
すずこちゃんが言った。
「次はあたしたちの勝利でみんなを笑顔にしたい」
「あれ。莉子ちゃん、今日はいつになく素直だね」
「そんなことない! ね、楓?」
「え、えぇ……!?」
楓ちゃんは困った顔をした。
そんな2人の様子を見て、すずこちゃんが笑う。
「あはは。でもそうだね。次は絶対に勝とう!」
「もちろん! どこのアイドルにも負けないんだから!」
「私も! もっともっと頑張ります!」
3人の表情からは闘志が滲んでいた。
ライブバトルに勝利したseek red sweetがもう一曲披露した後、ステージ裏に戻ってきた2人をperidotが待っていた。
「お疲れ様! いいライブだったな!」
真央ちゃんが声をかける。
「ありがとう。あなたたちのおかげで最高のパフォーマンスが出来たわ」
玖藍ちゃんの言葉にらむねちゃんは首を傾げた。
「らむね達は何もしてないよ?」
「ええ、ライブバトルの準備と審査をしたくらいです」
「そのことがうちのメンバーの士気を上げたんだけど……まあ、これは知らなくていい事ね」
そう言って玖藍ちゃんがくすっと笑う。
「気持ちの籠ったいいライブだった。……ほんと、嫉妬しちゃうくらいに」
そう言ってらむねちゃんを先頭にperidotの3人はseek red sweetに近づいていく。
そしてすれ違いざま、らむねちゃんは小さく呟いた。
「次は負けないから」
そのまま歩いていく3人を振り返り、愛実ちゃんが叫んだ。
「次も最高のライブを見せてやるんだから!」
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