主人公の仲間の過去に出てくるキャラクターに転生する話 〜原作を見届けるまで絶対に外伝ストーリー中に死んでたまるか！？〜

第19話 反省＝ただいま

　暗く、昏い世界。それが意識が戻って最初に見た景色だった。この場所を見るのは随分と久しぶりだな。

『来栖音がここに来たのはあの時（初対面）以来かな？　とても懐かしく感じるよ！』

「【厄】と戦ってる時にも思ったんですがオロチ、雰囲気変わりました？」

『ん？　いや、気のせいじゃないかな？　そんなことより！　初陣は【ナナシ】とは言え、神獣相手に完璧な立ち回りだったよ』

「それはありがとうございます。殆どがオロチのおかげですけど」

『そんな謙遜しないで。土壇場での勝負強さや相手の弱点を見つけることができたのは来栖音の才能だよ。想像以上に修羅の天賦が発揮されてたね。意外と闘争に飢えてたりするの？』

「そんな訳ないですよ！　ない……はずです」

　何だろうか、自分で言ってて自信が無くなってくるのはどうしてだろう？　というか俺が『奈落の頂』にいるって事は生きてるって事でいいのか。

『そこは言い切って欲しかったな……兎も角、来栖音は二三四覚達を助けられたし自分も無事生還。これは立派な事だから誇るといいよ』

「上から目線がどことなく腹立ちます」

『え？　酷くない？　これでも結構良い事言ったつもりだったんだけど？』

「無自覚でしたらなお悪いです」

　ちょっとオロチの評価を改めようと思ったらすぐこれだよ。恐らく今後もオロチの評価は上がったり下がったりの停滞を繰り返すなと今ここに宣言しよう。

『まあそんな事より。来栖音には何個か反省点も多くあったのも事実だから今はそれを伝えようかな』

「反省点？」

『そ。まずは何と言っても武器！　武器は常に持ち歩いてないと今回みたいに非常事態の時に素手で戦う羽目（ハメ）になっちゃうからね』

「それは……そうですけど」

　流石に普段から携帯するのは気が引けるが……今回の事を鑑みるとそうしなければダメそうだな。

『後は体力無さすぎ！　アレを維持するのに一杯一杯になってるから』

「でも初めてにしてはアレを……『神変闘化（しんぺんとうか）』を出来ただけでも良いでしょう？」

『だとしても想像以上にあの状態を保てなさすぎでしょ！？』

　ずっと言い続けている俺とオロチの共通したアレとは『神変闘化』と言う。それは読んで字の如く、一時的に自分の身体を神（オロチ）へと創り変えて闘うという俺が命名したものになる。

「むぅ……私は成功しただけ良い結果と捉えているんですがオロチは違うんですね」

『アレは今の僕たちにとって唯一の手札と言ってもいいからあの程度の神獣擬きに形態解除される体力じゃあ…………死ぬよ、この先』

「……ッ！」

　何の感情を籠らずにぴしゃりと呟かれた言葉に身の毛がよだった。

『来栖音のフィジカルとかの問題は追々どうにかできるから後回しでもいいか。後は来栖音の技術的な面だからそこは血反吐を吐いて頑張るしかないね』

「は、はい。血反吐を吐い、て？　ちょ、ちょっと待ってください！　そこは吐くレベルとかじゃないんですか！？」

『そんな甘くないよ？　言ったじゃん。あの子……来栖音の初代様以上に鍛えるって。来栖音の初代様は吐いてたよ、血反吐？』

「何やっているんですか初代様！？」

　や、やばいな初代様。俺の中で初代様のイメージが今のオロチの話を聞いて鍛錬狂いの初代様っていう認識になっちゃったんだけど？

『まあそんな来栖音のご先祖様だったからポテンシャルは君に並ばずとも歴代最強の称号をもらったんだろうね。来栖音が天才型ならあの子はきっと努力型とほんの少しの才能で僕たちを制御しきったんだろうね』

「歴代……最強」

　顔も知らない初代様。八坂家にもその存在が詳しく記録に残っていない俺のご先祖様の知られざる一面を知れた。

　何とも言えない感慨に耽っていると以前現実へと別れる際に起こった周囲が霞んでいることに気付いた。って事はもうそろそろお目覚めのお時間か？

『もうお帰りかな？　じゃあ当面の目標は『神変闘化』を一時間弱は持たせるようにしようね』

「え、ちょ――――」

　最後にとんでもないことを口走っていたオロチがいた気がする。問い詰めたいがそんな暇はなく俺は意識を覚醒した。

「——————待ってください！　……ってここは？」

　ガバッと起き上がり辺りを見回す。どうやら見た感じ病院に入院していたらしく前世のドラマで見たことがある精密機器が俺に取り付けられていた。どうやら俺はかなり重症だったらしい。はっはっは……いや笑えんが？

「くすちゃん。今日もおみ、まい……ッ！？」

「クスネ！　ワタシも来て、いる……ッ！？」

「お姉ちゃん、病院では静、かに……ッ！？」

　扉が開き、そこから聞き馴染みのある声が聞こえたので振り向くとそれぞれが呆けた顔を晒していた。それが次第に興奮した様子で俺の病床へ一目散に飛んできた。

　こういう時って何て言うのが正解だ？　…………分からない。ええい、なるようになれ！

「私は……私はちゃんと帰ってきましたよ」

　それに対しての返答が三人からの熱い抱擁だった。これはしばらくこのままの時間が続きそうだなと考えながら短いようで長かった再開の時を過ごした。