第17話 校外学習=急襲
校外学習。それは前世での学生生活でもあった宿泊施設に泊まる行事の一つであり、修学旅行や自然体験学習だったりとその名前を変えたりもするが結局のところ、学生のほとんどが楽しみにするモノといったものだ。
当然前世で充分過ぎるほど経験した俺なので今更童心に帰れと言われても、
「あ、さとちゃん見てください! 見たこともない鳥が沢山いますよ!」
「くすちゃん楽しんでるね〜」
帰っちゃうんだよなぁこれが!
誤解のないように言っておくが俺は決して精神が小学生の身体に引っ張られている訳では無い。俺は俺の意思で今この校外学習という一大イベントを楽しんでいる! 今日から三日間滞在するこの自然に囲まれた場所であーんなことやこーんなことができるかもしれない!
『余計惨めなこと言ってるけど大丈夫?』
(細かい事はいいです。今はとにかく楽しむんですよ!)
『目先の幸せに飛びつくのはとても真っ当な人間のする事では無いと思うよ?』
「はーい注目! それでは昼食の時間まで班行動の時間です。各自でこの森を探索してください」
「くすちゃん、くすちゃん。班行動だって〜」
「分かりました。ヒカリとエイは何処ですか?」
「えっと二人なら〜……あ、彼処にいたよ。ひかりん、えいー!」
さとちゃんが呼んでいる方向につられて目を向けるとヒカリとエイが
こーれ国宝級のものです。そこに百合がある、ならば俺が爆発するしかない。あ、代わりにショタ野郎に爆発してもらおっかな。
(爆発してオロチ)
『なんで!?』
どうやらショタ野郎も爆発だけじゃ物足りないらしい。そうだよな……この光景に対して爆発だけじゃヒカリとエイに失礼だよな。
「ひかりんはどこから見たいとかある〜?」
「そうね! ワタシは全部見てみたいわ!」
「お姉ちゃんそれは時間が足りないよ。覚サンは何かありますか?」
「わたしはなるべく他の班とは被らない場所を見て回りたいな〜」
「私はさとちゃんの意見に賛成しますよ」
「お二人がそうならエイとお姉ちゃんもそうしましょうかね」
「そうと決まれば皆! 班のリーダーであり『回帰月蝕』のリーダーでもあるワタシに着いて来なさい!」
「グループのリーダーはまだ決めてないよ〜? くすちゃん、行こ〜」
「はい、分かりました」
お、どうやら
俺はさとちゃんに促されるまま三人と一緒に歩いていく。
「そう言えば、お姉ちゃんはいいとして来栖音サンと覚サンは鍛錬していますか?」
「わたしは小学生になってからだから〜……三年前からやっているよ〜。でもくすちゃんってもっと前からやってたね〜」
「エイとヒカリに出会う前からやっていましたね」
「そんな幼い時からやってたんですね。エイとお姉ちゃんは最近始めたのでお二人は凄いですね」
「クスネは会った時には目隠しをしていたわね。アレは何かの鍛錬なのかしら!?」
…………どうしよう。
「そうですね……これは特に理由は無いです」
「じゃあなんで着けてるの〜?」
うっ!? さとちゃん達を騙すのは気が引ける……だが、やらねば!
「強いて言うならば、これをしなければ私(の予想)が(目が隠れてない)私を(『おわはて』ファンが)許せないから、ですね」
「「「………………」」」
え? 何この気まずい空気。端折りはしたけど特に当たり障りない理由になってたと思うけど。
「くすちゃん」
「はい、なんですか?」
「辛かったら相談していいんだよ」
「え?」
「そんなに自身を追い詰めなくてもいいんすよ、来栖音サン」
「は、はい。もちろんそのつもりですが」
「悩んだら直ぐにワタシ達グループに話すのよ!」
「分かりました……けどどうしたんですか三人とも?」
本当にどうしたんだ。何時になく真剣に話されると却って俺も真面目にならざる得なくなる。朱に交われば赤くなる方式で生きているからな、俺は。
『どの口が言ってるんだろう』
なんかショタ野郎から心底疑問そうな指摘を受けたんだが……なんだコイツ? 蒲焼きにして売るぞ。
まぁ何はともあれそんなに念押して話されたので次からはなんかあったら相談することにしよう。べ、別に話さないままなんかやらかしたら後が怖いからとかじゃないんだからね! 言ってて悲しくなってきたな。
「そんなことより! 彼処に滝が流れてるわ!」
「アレ? でもこんな所に滝ってありましたっけ?」
「細かい事はいいのよエイ! 全員ならんで写真を撮りましょう!」
「お姉ちゃんだからすぐにそうやってくっつかないでよ!」
「わたしはくすちゃんの隣で映りたいな〜」
「──────ぁ」
────不意に俺という前世の記憶が刺激された。不自然な滝、写真、人が少ない、つまりグループの規模が二グループ以下…………そして、
『嗚呼……善き哉善き哉』
その場にいる者全員が組織の幹部の家系である。
…………はぁ。クソッタレだな、この世界は、ホントに。
『久しいのう
五年振りに感じた鬱々たるプレッシャーは色んな意味で重く、のしかかった。
動け、と脳で働きかけても体躯はそれを拒む。
動いたらどうなるか考えたくもないから。
喋れ、と脳で訴えようが口はチャックとチャックが噛んだかのように開かない。
開いたらどうなるか考えたくもないから。
今、この場に
何度も何度もラノベ、漫画、アニメという媒体でその存在を嫌という程、認識していた。
幸いにも俺たち四人は滝をバックに写真を撮ろうと背を向けていたのが唯一の幸運だ……この存在に出会う時点で
『妾は……ふむ、名を
そう言い、その存在……声音的に女か? 女は恐らくケラケラと俺たちを
何せ自身を封じた末裔達だ。さぞ滑稽だと思ってるに違いない。
さて、ココからどうするか、突如出現した
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