第8話 友達=期待

「わたしの新しい友達だよ〜」


 幼稚園ニート生活(幼卒への熱い風評被害)にも慣れてきた六月中頃、俺はさとちゃんの組で待たされているとさとちゃんからこう言われた。

 これは到頭とうとう来てしまったね。何が来たって? そんなもの決まってるだろ。


 そう! 『おわまえ』シリーズの幼馴染みメンバーが!

 よっしゃあ! 最近鍛錬とお父様の稽古で幼稚園が癒しの場所となりつつある中やってきた顔合わせイベントにドキドキが止まらない。


 というかお父様の稽古が割とスパルタでついて行くのが精一杯だ。この年齢五歳児でついて行けてる時点で凄いくらいお父様の稽古は疲れる程だ。

 この世界の子供の体力ホントに凄いな。前世の俺だったら確実に疲労困憊でぶっ倒れる自信ある。

 そんな事もあり、中々さとちゃんと幼稚園内で遊ぶ機会がなかったが……疲れてて忘れてたわけじゃないよ? ホントだよ?


 だが遂に俺はと出会える時期がやってきたのだ!


「さとちゃんの新しい友達ですか? 初めまして。私は八坂来栖音です。御二方はどちら様でしょうか?」

「ふん! 聞いて驚きなさい……ワタシはあの『姉ヶ崎家』の長女! 姉ヶ崎姉ヶ崎ヒカリよ! アナタが『八坂家』の一人娘ね! ヨロシクお願いするわ!」

「そんな大声出さなくてもいいでしょヒカねぇ……エイはヒカねぇの妹の姉ヶ崎エイです。これからよろしくお願いしますね、来栖音サン?」

「ヒカリとエイですね。さとちゃんがいつもお世話になっています。此方こそよろしくお願いします」


 出たぁああぁぁあああ! 生ヒカリ様(愛称)と生エイたん(こちらも愛称)だよ!


 という事で、皆から大好評(超絶節穴)のいつもの説明タイムに入ろうか。


 姉ヶ崎姉妹。『おわまえ』シリーズで一番コアなファンが多いとされるキャラクター達だ。

 姉であるヒカリはコバルトブルーの三つ編みを一つに束ねて結んでおり、蒲公英色の瞳孔の中に☆マークがあるのが印象的なキャラクターで首元に白色のチョーカーをしている派手目な子だ。


 よく自身の容姿に自己陶酔しており、そこを度々妹のエイに突っ込まれている。

 前世でのバイト先の先輩がよく「ヒカリ様の裸体を映す鏡になりたいよね? なりたいよな? なれ」と頭が痛くなりそうな事を言っていたがそれが店長にバレて減給されていた。

 その理由が「ヒカリ様の裸体を映すのは俺だからダメ」との事。マジで滅んでしまえばいいのに。

 てかこの人達外伝本編時13歳の女の子の裸体を映す鏡になりたいとかはっきり言って大変御気持ちが御悪い(二重敬語)からやめて欲しい。


「クスネ! そんなにワタシを見つめてどうしたのかしら? まさか……ワタシの容姿に惚れている訳では無いでしょうね?」

「そんな事ありますよ。とても可愛いですね、ヒカリは」

「え…………きゅう」

「あ、普段ド直球に褒められた事ないからヒカねぇがダウンした。流石ですね来栖音サンは」

「エイも十分可愛いですよ」

「────お世辞として受け取っておきますよっと」


 妹である姉ヶ崎エイは髪色はヒカリとお揃いだが髪型をポニーテールにしており、更に言えば瞳が蒲公英色と桃色のオッドアイというオッドアイガチ恋勢達がこぞって姉ヶ崎エイというキャラクターに初恋を奪われたという者が多い。エイも首元にヒカリとお揃いのチョーカーを着けており、姉妹の仲の良さが伝わる。てえてえな……爆発しそう。


 瞳孔の中に♡マークがあり、その所為か『おわはて』の大人の方の同人誌では姉ヶ崎エイを題材にした作品が多い傾向だった。何でそんなこと知ってるかって? それはアレだよ……………………買ったから。


 あ、後はエイ推しの友人がよく紹介してきたからだ。まぁその作品の数々は彼女にバレて二作品を残し焼却処分されていた。自業自得だがそれは泣いていい。


 しかしながら態々わざわざこの話を俺の席の前に来て「俺の情熱がァ!?」と叫んで来た。大学内でそれをやらないで欲しい。全く、迷惑極まりなくてついつい腹パンしちゃったじゃないか。

 あの時はすまなかったと思っているが後悔はしてない。


「むぅ〜……」

「さとちゃん? どうしたの?」

「わたしは、可愛い?」


 え? これもしかして拗ねてる? 自分だけ可愛いって言われてないからって拗ねちゃってますこれ?

 はぁ……しゅき。


「さとちゃんも可愛いです。私が保証しますよ」

「ありがとうだよ〜。くすちゃんも目隠ししてないで目を見せて欲しいな〜」

「私の目……ですか? 別にいいですよ」


 そういやアイマスク着けて生活してるんだった。今世は殆どアイマスクと共に在りすぎて身体の一部と化してしまってたな。


「こんな感じでいいですか?」

「クスネの目はとってもキレイだわ!」

「こう何故か引き込まれる感じがしますね」

「普段は見えないくすちゃんの目は実はとっても綺麗なんだよね〜」


 確かに金色の目なんて相当お目にかかれないもんな。俺も初めの方はエイの言うように随分引き込まれた。


「ん〜? でもは初めて見た気がする〜」

って……クスネの目の中にあるやつの事かしら?」

「何らかの形のように見えますね」

「目の中とは?」


 最近自分の目とか確認してないから皆が気づいた事が分からない。形? ヒカリやエイみたいな三角とかか?


「あ! 分かったよ〜」

「この形がですか?」

「ワタシもわかった!」

「何の形でしょうか?」

「うん。これはね〜」


 さとちゃんは腕をグニョグニョとさせてその形を表現していく。待って、その形って……、


「ヘビの形してる〜!」


 何気ないさとちゃんからの発言に俺は失くしたパズルのピースが見つかったような安心感が得られた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る