第4話 我が家の風景 

家は一軒家で庭付き。

ついでに、妖怪や霊付き。

まあ、悪さが出来ないものに限る。

家に駐在?している霊は、いつからいるかは、わからないけど、かなり昔からいる霊が住んでいる。

一人は、農耕民族の代表格の農民姿である老人と孫なのか、忘れかけた頃に生まれてきたのか、わからないが、同じように、農民姿の小さな男の子は、常に二人で現れる。

土地に思い出があるのか、思い残しが別な理由なのがわからないが、時が流れすぎても、天に行くことはない。

静かに二人で、家の中にいる。時たま、遊ぶことがあり、子供のほうが、はしゃいでるのをニコニコしながら見てる老人は、ちょっとした家付き守り人みたいなものだ。

彼らを模した人形があり、供養も兼ねて、お供えされている。

甘いものを供えると、より、機嫌が良い。

新入りと言って良いのか、わからないけど、あと、家に駐在?しているのは、旧日本軍兵士の姿をした若者。

これまた、悪さをする訳ではない。

彼は、常に庭を見渡せる部屋から出てこない。のも、我がご先祖のせいである。

祖父の兄弟の一人が、その昔、早世された。

成人を迎える前に、病で亡くなったのだが、とても美しく、その人は、不思議な力を持っていた。彼は、体が弱かった為、出征は免れたが、愛する人を出征させるのは、自分の体を蝕む痛みよりも、辛かった。

彼が出征する旨を伝えにやってきた頃、彼は、最大の過ちを起こす。

愛する人を殺されたくないと強く願い、自分から離れないで欲しいと強く願ってしまった。

彼が出征し、しばらくした頃、病で、静かに息を引き取った。

嘆き悲しむ家族が、葬式を行っている時に、変化が起きた。

成仏していただろうその彼が、まだ部屋にいるのだ。住職の念仏を無視するんじゃない。

彼に会いたいと泣きじゃくるその人に、家族は困った。無理である。出征してるのだ。

戦争がまだ終わっていない。

口を開こうとする家族が、止まった。

そこには、あの日、出征する事を伝えに来たままの姿の彼が立っていたのだから。

後に知ったのだが、彼は出征先で、爆撃にあい、亡くなったらしい。

彼もまた強い想いがあり、魂だけの存在になっても、会いに来たい気持ちが強かった。

だから、そのまま、その日から、いるのだ。

ご先祖様とその若者が。

ちなみに、その彼の家族に、真実は伝えてない。




日向ぼっこをしてる二人は、もちろん、霊体である。母が趣味で植えてる花を愛おしそうに見つめるご先祖様の横で、支えるように、座る彼は、死んでも甲斐甲斐しい。

祖父曰く、生前から、彼は、ご先祖様の世話を焼くのが好きだったらしい。

生きてる頃の記憶が引っ張られるらしいのだ。

体をうまく、動かせなかった彼のために、本を朗読したり、話をしたり、その優しさが、ご先祖様の心を癒やしたのは、言うまでもない。そして、好かれたのが、最後。

まあ、両想いをひた隠しにしていたのだから、結果は良いのか。

ご先祖様の魂が、彼の魂を引っ張り出し、繋ぎ止めてしまった。




「ご先祖様は、独占欲強いね。」

「まあ、いいんじゃん?両想いだし。…あ。振り向いた。」

「地獄耳…!イタっ」

不敬な子孫に天罰。どっから、飛ばしたの?

花の種を飛ばさないで。

「ふたりとも暇なら、私を手伝って。水やりを手伝ってね。」

母が庭から千晃とソラに声を掛ける。





「どいてくださーい。水浸しにしちゃうぞ。」

ホースで水やりをする。庭で遊ぶ小さな者たちやあやかしに注意喚起。

しかし、それすら、遊びの一環。

千晃の守護神たちも庭で遊んでいる。千晃に構って貰って嬉しそう。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る