第3話 ご近所さん

 小金井家が、代々、お世話になっているのが、自宅から徒歩、十分で、着くお寺がある。整備された清潔な空間が広がり、子供たちが、遊び回っている事もある。

 境内には、狛犬の銅像が2体、設置され、見える者からすると、見えてしまう。

 霊力を持つ、この寺の守護神狛犬様だ。

「こんにちは。」

 必ず、来た時は、挨拶をする。

 言葉を発する訳では無いが、答えるように、そよ風が吹く。

 もっと、小さかった頃に、住職が寂しいだろうと思い、小さきものたちに、頼み込み、たまに、遊びに来るように、お願いをした。

 住職は、見える者であり、優しかった。慈愛に満ちた彼は、小さきものたちにも優しかった。故に、小さきものたちは、訪れる度に、彼ら基準の土産を拵えてくる。

 春になれば、花が咲くため、どこぞから、汲み取ってきた酒を用意し、花見酒にしたり、夏になれば、鎮魂のための祭りを真似て、踊り狂い、どこぞから釣ってきた魚を持ってきた。秋になれば、どんぐりをはじめ、稲穂の季節…米俵を担いで持ってきたり、冬は、どこぞから仕入れてきたと不安に思うが、冬野菜を持ってくる。

 住職の妻は、見えない者ではあるが、理解者である為、不思議がりながらも、受け止めてくれている。

 小さきものたちは、この寺の絶対領域を支配する狛犬たちにも、敬意を示しており、土産を贈呈している。

 狛犬たちも、汲み取り、小さきものたちは、許可している。

 小金井家がお寺に来る度に賑やかになる。

 集まりだすからだ。

 ちなみに、小金井家代々の墓もこちらに、お世話になっている。

 兄たちの守護神たちは、悪さをしないし、何よりも、神格持ちの為、狛犬たちも、争わない。穢れてる存在ではないから。

 お墓は出やすいと言われてるが、このお寺にある墓は、出ない。

 家の墓もあるから。何かしらの影響はあると思う。深くは、考えないほうがいい。

 住職の足元にじゃれてるあの猫。普通の猫じゃないよね?野良猫かと思ったけど、違うな。しっぽが二股に分かれてる。悪さはしてないようだから、いいか。



我が家の隣に住むお宅は、素敵なお宅。

町の中でも、目立つ綺麗な家で、庭が十分広く、住人のセンスが光るガーデニング。

四季折々の花々が咲き乱れ、美しい。

品種改良をされた花もあり、その中で、お気に入りがCHOCOLATEDIARYと名付けられたチョコレート色のバラが好きである。

汚れても構わないジャージを着ているが、モデル撮影の為に、スポーツ雑誌に記載されるのではないかと思うほど、着こなしている彼こそ、この家の住人であり、緒方 天元。

端正な顔立ちをしていて、整っている。良く、異性から声を掛けられている様を見てきた。

軍手をつけ、シャベルで土を掘り起こしてるのを、ただ、ひたすら見つめている。

「暑くないの?中に入れば良いのに。母さんが用意してくれた冷たいお茶もあるんだから。」

「花いじりを見るのは、好きだから。…邪魔?」

「んー?大丈夫。帽子を被りな。熱中症になる。また寝込んじゃうよ。」

「いつの時を言ってるの?もうそんなこと、しないよ!」

調子に乗って、暑さの中、帽子を被らず、ガーデニングの様を見ていたから、暑さに参ってしまい、ダウンした。

しばらく、寝込んたが、回復した。

「ポッケに何を入れてるか、当てようか。」 

「何が入ってると思う?」

「…イチゴ味の飴玉。」

ゴソゴソ、ポッケから取り出す。

指摘した通り、イチゴ味の飴玉だ。

「当たった。」

「流石。」

静は、透視できる能力を持っている。

箱の中に、何が入ってるか、当てることも出来るし、見えない状態の紙の内容も当てられる。

この能力を持ってしまったが故に、苦労してきた。

静の場合は、レベルが高い透視能力を持つ。

対象者の未来、過去を読み取ることが出来る為、幼い頃は、トラブルが多かった。

「ソラよりは、弱いんだけどね。驚いたよ。自分よりも遥かに強い子がいるなんて。世の中は広いことを知ったよ。」

「興味ないやつの過去、未来に興味はないけどね。うっかり、口に出さないようにしなきゃいけないから、ちょっとやだ。」

「名前を言い当てたりしちゃうと、気味悪がられたりするからね。神経は使うね。」

本来なら知り得ない情報を得てしまっている。他人ができない事だと、わかるには、そう時間は掛からなかった。

「イチゴ味の飴玉あげる。」

「ありがとう。…甘い。」

甘いイチゴ味の飴玉が、口内に広がる。







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