第3話 まぁ、燃やしておいてくれ

 ごきげんよう。

 はじめまして。

 またはまた見つけてくれたのだろうか?

 これは私の不満まじりの散文なので暇つぶしにならないならサクッと放棄することをお勧めしよう。

 たいしたことは書いてないからね。

 読んでくれている相手がどんな存在なのか、それは確かに興味のあるお題だとは思う。

 時折り迷宮で発掘される『覚書』は子供の算術稽古の残滓から買い物メモ、恋する乙女の思いの丈から革命妄想の計画書まで千差万別で面白い。

 私のこの手記もそんなもののひとつに過ぎないわけだ。

 むしろ読まれたくない案件かも知れない。

 この棄権できない手記作りに強制参加者になにを書いているのか尋ねる機会を得たので聞いてみた。

 やはり、他の誰かの書いていることは少しばかり興味があったのでね。

 某皇太子は愛しい妻子を見つめていて過ぎる愛を恥ずかしげもなく連ねているらしい。

 その後一刻ほど幼児の愛らしさ。子を抱く妃の慈愛深さを語られた。

 その側近、彼も強制参加者であるので問い掛ければ、少し髪を揺らし遠くを見た後に小さな声で「仮定の反乱計画を。対策が任務ですから、穴探しに楽しいですよ」と答えが返ってきた。わかります。という言葉を飲み込んで、「さすが考えることが違いますね。返すに留めた。

 私の従者も参加しているので問えば「食べ歩いた屋台料理の感想ですね。『国のこと』というお題にそえてるかと」と返ってき、食べ歩きなどしたことのない私には思いつかない案だったと言える。

 皇太子殿下の側近がぼそりと「誰かが読む事もないからな」と攻撃性の高そうな魔力に包まれた手記(反乱計画書)を異界への穴に繋がる術式に放り込んでおられる。

 魔力を持ってあければ大怪我をしかねない。わかりますね。

 だから、少しだけ気掛かりなことはこの手記に出会ってしまったあなたが不快な思いをしていないかだ。

 正直、警告はしているし、何かあっても何もできないことは間違いない。されど、確かにあなたは私の不満含みのこの手記を受け止めてくれたのだから。

 私としては、見知らぬ誰かの負荷になることは本意ではないのでね。

 いや、このように内心を晒すモノを記す不本意さと快感だろうか?


 なにはともあれ、あなたのこれからの時間にあなたにとっての幸いがあることを祈ろう。


 良い時間を。

 また機会があれば。

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異世界に投げる手記 金谷さとる @Tomcat

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