ジェットコースターが下るように


片瀬をベッドに寝かせる。







顔は

相変わらず青白い。

だが呼吸は安定してきたように思う。








これから先、コイツはどうなるのだろう









「まぁ、本当に愛する人が現れた時に、その人との子どもを残せる可能性は低い・・・か皆無ね」









「でもどうしてコイツがこんな目に遭わなきゃならないんですか!」








片瀬が一体何ををしたというのだろう。

そりゃあ、仕事でできないで俺に投げつける部分もあるし、逆に俺をからかう位、女性には困っていないだろうし、

でも、ここまで今後苦しむような思いをしなきゃいけないような奴ではなかった。








「そうね。車での事故を理不尽だと嘆くのと一緒のように、鬼という異形のモノの【食事】に巻き込まれてしまった。それを小泉、あなたは嘆いているのと同じだわ」











「そんな理不尽な!!」












そう言うと、女郎蜘蛛は静かにこちらを真っ直ぐ見た。










「人間だってそうでしょう?生きる為に動物を食しているじゃない」










「そんな、それは違」










「違わないの。この世界はあなたが思うほど人間だけのものではないし、あなたは、それに気づけなかった。」











ぐっと言葉を抑える。










「でも知ってしまったら戻れない。小泉。あなたの側には鬼が居た。私と出逢う前から・・・わかるかしら」











胸が痛い。








そうさ、俺の心は今もそちらに向いている。でも、なら、どうして彼女は俺を喰わないのだ。











「桜ちゃん・・・」










彼女から片瀬を喰っている最中の鬼と同じ匂いがした。

ずっとコロンだと思っていたけれど











「あれは、鬼の食事の臭い」











振り向くとそこには先程の少女が居た。

その姿は血にまみれており、それがあの店に居た鬼を全滅させたことを物語る。












「君は?」









「申し遅れました、小泉殿。私は、源灯(みなもとのあかり)。この世で最後の源家の陰陽道を扱う【鬼切】でございます」











陰陽師。鬼切。

ここまで来て、目を背けていたことが全て繋がってくる。










「君たち一族が鬼を斬ってきたから、人間は喰われず、今もこうして生きている。という解釈でいいかな」










「買いかぶりすぎでございます。私達一族でも、こうして未だ討伐できていない鬼は数多おりますゆえ」














そして、俺は続けた。











「そこに情けは」











少女は真顔で一言返した。












「ございません」

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