鬼の店と陰陽師
「片瀬!!」
ドアを開ける。
・・・・・
しまった。
明らかに見てはいけない場面。
いくら同僚とはいえ、風俗嬢としっぽりだなんてお互いに気まずくて明日から何を話していいかわからない。
「昨日のオネエチャンどうだった?」
なんて聞いて笑う度胸は俺にはない。
いや、よっぽどデリカシーのない人間にしかできない。俺には無理だよ・・・。
「小泉・・・」
そりゃあそうだよな。絶句するのもわかる。趣味はそれぞれだし。本当にごめん。
謎の賢者が自分の中に現れる。
いや、こっちがこんなに冷静に見ているのは明らかに変人だろう。帰るよ、片瀬。
「片瀬、あの、申し訳ないんだけど」
その時、違和感を感じ片瀬に近づく。
脂汗をかいて苦しそうに息を吐いている。
そして、人間の俺でもわかる、血の臭い。
「アンタ・・・せっかく食事の最中だったのに、邪魔してくれたわね」
女がとんでもない形相でこちらを睨んでいる。例の風俗嬢か。
肌が赤くなり、角が2本。
女はどんどん姿を変えていく。
「あんた、人間じゃなくて、鬼だな?」
「へえ、誰かの入れ知恵がある人間なのね。珍しいわ。どこかお寺の子かしら」
ぷっと鬼は片瀬を吐き出した。
俺は、慌てて布で片瀬の傷を縛る。
「うるせえ、俺はただのサラリーマンの子だよ。片瀬、無事か!?」
「小泉、こいつ・・・」
意識はかろうじてあるが、さすがに噛まれた箇所が悪い。青白い顔をしながら片瀬は鬼から逃げるように言おうとする。
「ああ、わかってる。先端喰われただけだよ・・・先輩のこと思えば我慢できるだろ、寝てろ」
そう言い、俺は片瀬を担いだ。
「私達から逃げようっていうの?良い度胸ね。あんたから喰ってやろうかしら」
鬼は舌を伸ばしながらこちらへ走ってくる。同僚を担いだまま逃げるのは俺には至難の技だ!
暫しの沈黙。
そしてギャアアアアアア!!!!という悲鳴が響き渡る。
目を開けると、1人の少女が真剣を持って鬼の目に一撃を食らわせていた。
「小泉、ここまできたら安心よ」
俺の側には女郎蜘蛛が居て片瀬を支えている。
「女郎蜘蛛?あの娘は」
なんの迷いもなく立ち向かう姿は見た目の年齢とは偉い差に見える。
「私の知り合いの陰陽師。さあ、今の内に私の館へ移動しましょ。同僚、心配でしょ?」
俺は黙って頷いた。
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