恋人との時とタイムリミット


「桜ちゃん!」








「小泉さん、やっと連絡取れた・・・」







時刻は15時。逢魔が刻まであと1時間。

それまでに女郎蜘蛛は恋人に会ってきなさいと部屋から出され俺は恋人である桜ちゃんと会えた。








桜ちゃんはうるうると目に涙を浮かべてこちらを見ている。









「学校にも居ないって同僚さんから連絡もらって、慌てて何回も連絡したけれど、小泉さん。繋がらないんだもの・・・」










ごめん!

事情は詳しくは勿論言えない。

桜ちゃんを妖怪やなんやらの世界に引きずり込みたくない。








「裏山で授業で使う古墳の下見を頼まれて行ったんだ。でも電波が通じにくくて・・・」









「裏山の古墳って鬼神遺跡?」







「あ、ああ。そうだよ」







「そんなところに1人で行ったら危ないよ

!山道も厳しいし、それに・・・」







暫しの沈黙。だがここで桜ちゃんを不安にさせるわけにもいかない。俺は桜ちゃんの頭を撫でた。









「ありがとう。でも、ホラ!こうして無事に戻ってきたから!!」







どことなく不安そうな彼女には申し訳ないが笑顔で応える。










「桜ちゃんは今、帰り?早いね」









「うん。カフェの内装をオーナーが変えたいみたいで、それで今日は早く帰っていいよって」









これでカフェがよりゆったり使ってもらえるようになるといいな。なんて言うものだから、内心は抱き締めたかった。

しかし、過去に拒絶されたのを思い出すと、横目で微笑むくらいしかできなくて。












「小泉さんは学校に戻らなくて大丈夫なの?」













正直全然大丈夫ではない。

でも、こんなに不安そうな恋人をここで放っておくわけにはいかない。











「桜ちゃん、今度さ心配させた埋め合わせと言っちゃあなんだけど、一緒に遊園地に行かない?」










譲ってもらったチケットを思い出し話題に出してみる。すると、桜ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。










俺から見たら、こんなに歳が離れたオジさんのどこを好きになってくれたのか。

本当に有り難いことであり、彼女には感謝しかない。











「嬉しいけど、小泉さん。牧場とか、水族館とか映画も連れて行ってくれるだけで十分嬉しいからね。今度は私にもお財布出させてね」








そんなこと気にしなくていいのに

と2人で笑っていた時だった。










「小泉、タイムリミットよ」










最悪のタイミングで女郎蜘蛛が現れた。

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