逢魔が刻になるまで

「先輩を殺した犯人がわかるんですか!?」











思わず、反応してしまった。









「ええ。元々、私たち妖怪は人間とは違う世界線に住んでいるの。でも、一部除外されている妖怪がいるわ」










「それが、先輩を殺した犯人ってことですか?」










「そのとおりよ」











それはね、普段は人の姿をしていて人に紛れて生活している・・・











俺は息を飲んだ。











「あなたの世界では鬼と呼ばれるモノよ」












鬼・・・









「鬼ってあの、角と牙があるアレですか!?昔話とかで出てくる」











女郎蜘蛛は、私たちからしたら全然昔じゃないけれどねと言う。










「そう、桃太郎とか浦島太郎に出てくるあの、鬼よ」











でもどうして鬼だけが特例なのか?

それは想像がつかなかった。











「特例なのは追々教えるけれど・・・小泉、飲みに行った仲間、もう1人居たでしょ?」












「ああ、片瀬ですか?」










「その人間も今日の夜にその鬼にこのまま行ったら殺されるわ」









「!!!」










どうして片瀬が。







楽しく酒を酌み交わした3人の共通点。

それは・・・










「あのバーか」











あら、そこだけは察しがいいのね。

半分正解。










そうと聞いたら後の半分よりも

片瀬を犠牲者にしないことが最優先事項だ。










「俺をここから出して下さい。片瀬を助けにいきます」









女郎蜘蛛に頼んでみる。

どんなに痛い目に遭ってもここは譲るわけにはいかなかった。









「いいわよ。でももしばらくここで待機するのをオススメするわ」









「どうして!?」











「だって、まだこの時間。逢魔が刻ではないと鬼も出てこない」











オウマガトキ?









「あれですか?夕方の」









「夕方で間違いではないけれど、あんた、モテないでしょ。ロマンチックじゃないわ」










「モテないのは余計なお世話です」










アハハと笑いながら女郎は変なのと笑ってみせた。










「朝と夜が入れ替わる時に、この世ではないなにかと遭遇する。それをヒトは彼岸と言ったり、逢魔が刻と言ったりするのよ」









まあ、何に出会うかはその人間次第だけどね。










「それより小泉・・・」










女郎蜘蛛の手には、俺のスマホ!









「桜って女の子からメッセージが来ているわよ?」









えっ!?

慌ててスマホを見てみる。

そこには確かに「桜」と表示されていた。










しまった・・・今日は彼女と俺の1年記念日だった・・・。






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