再会と蜘蛛の糸

「ここは、どこですか?」









前のメイドに訪ねても照れ臭いのか何なのかこちらを見ない。









「あれだけ堂々と警察署を出たら、俺もう立派な容疑者ですよ?あなたも!」












「それは大丈夫です。ご主人様がすべて消して下さっているので」









消す?何を?

苛立ちながら彼女に問うとくるりとこちらを向いた。その顔は無表情で少しゾッとする。













「あなたにまつわる昨日の出来事。殺害された人間の男の存在。いえ、3人で集まられてバーに行かれたことも抹消されています。つまり」














ギィ、とドアの開く音。

そこには朝に見た黒髪の女性。

そして一言。













「小泉、あなたたち人間なんて私たちの世界では改ざんできるってことよ」












よくあるでしょ、神隠しとか。

あれも今の人間は子どもが消えたことさえ気づいていない。私たちに立ち向かえる「力」のある人間が消えてきているのね。









そう続けるが、走馬灯のように

スーツを真っ赤にされたことを思い出した。
















「そういえばアンタ!俺のこと刺しましたよね?スーツが真っ赤になったの覚えていますよ!それなのにどうして俺は生きているんですか!?」












まあ、慌てないで頂戴。

そう言うと空をグッと掴む仕草。

その瞬間









「痛ててててててててて!!!!」









自分の体に激痛が走る。








スーツを捲りあげて

痛みが走った場所を確認する。










そこには蜘蛛のマークのように痣ができていた。










「そこ、何したところか覚えてる?」












意地悪そうにニヤリと笑うその姿は

間違いなく昨日の女郎蜘蛛そのものだった。











「・・・なにしてくれてんですか」











「怒っているのね」










「親からもらった身体なんです。腹が立たない人なんていないでしょう・・・この痣なんとかならないんですか」












「大家と入居者。結婚の婚約。人間の世界にいくらでもある契約というものをしたら、主導権は強者になるって解っているでしょう?」













「つまり、なんとかする気はないと」











「賢いわね」










俺はクルリと後ろを向いた。












「あら、ここから出たいの?」











「俺は人間です。小泉洋として、親が居て、高校の教師をして、飯を食って生活して・・・恋人もいる。こんな人間が関係ない世界でアンタの手下みたいなことになるのもゴメンです。」












親父譲りのなんでもハッキリ言う性分は昔からのことだ。ここでもしこの妖怪に殺されてしまおうと後悔はなかった。












「小泉、落ち着きなさい。確かに私はあなたと契約した。それはあなたという人間。いや、関係性に疑問点があったからなの」










「疑問点?」









「でもまず、人間として生活を取り戻したいんでしょ?」









俺は頷いた。










「あなたの先輩を殺した犯人を教えてあげる」


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