女郎の爪痕
ようやくスーツを着られた所で一緒にあった鞄に目が行く。
そうだ、スマホ!
俺は慌ててスマホを着ける。
スマホの電源が入り皮肉めいたように桜ちゃんとの写真が写る。
「ねえ、あなたの彼女」
真横に女郎蜘蛛の顔。
整った目鼻立ちに思わず赤面する。
「なんですか!?」
「それ、彼女でしょ?」
そうですけどなにか?と問うと
女郎蜘蛛はニヤリと笑った
「・・・あなた、何も気づいていないのね。」
「・・・は?何をですか?」
「この娘、ワケありよ。その娘は」
桜ちゃんが?この画像を見ただけで女郎蜘蛛には何かがわかっているのだろう。
その目は確信を得ているようで、きっと人間には視えないレベルの何かがわかっているのだろう。でも
「お断りします」
俺は女郎蜘蛛を突き放した。
「な?!」
一瞬驚く姿にたじろいだが引き下がれない
「どうせ、彼女のことで人間である俺と契約して外の世界に出て行こうとか何かたくらんでいるんでしょ?筋書きがアニメ過ぎるし観てましたよ!そういうの!悪いか!」
暫しの沈黙。
きょとんとした女郎蜘蛛は口元を再びニヤリと戻す。
「威勢がいいわね・・・、首を蜘蛛の糸で締められてもそれだけ言い返して開き直って・・・情けないけれど。気に入ったわ」
女郎蜘蛛は糸を再び首に巻き付け手繰り寄せる。
「小泉洋。コイズミヒロシ。あなたの名前は把握した。それは魂の端。人間の大切な心臓部。それを知った私はあなたに蜘蛛の印を押すことができる。」
シュッと女郎蜘蛛の爪が伸びた。
これは、もしかしなくてもヤバい?!
今さら大の大人がバタバタと暴れても動けない!
「女郎蜘蛛の血印をあなたに押してあげる。そしてあなたは真実に直面するといいわ。その代わり」
ドスッ!!
やめろと声を荒げる前に女郎蜘蛛の爪が何かを貫いた。
それをゆっくり追っていくと考えたくもない。
ああ、せっかく着たスーツが台無しだ。
こんなにも赤く染まっている。
目の前が暗くなり、俺は意識を失った。
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