大泉でも八雲でもなくて悪かったな
「女郎蜘蛛さん、あの、」
「あら、信じてくれるの?」
嬉そうに笑う女郎蜘蛛にギブアップのポーズを取る
「信じます、信じますから糸を!首が苦しい!」
そう言うと、あらうっかり
なんて返ってくるものだから
力加減を知らないのか、彼女の糸がきつく喉元を締め付け、危うくどこかに行ってしまいそうだった。
ゼーゼーと息を整えている間に
ドアからノックする音が聞こえた
「・・・失礼します」
女の子の声だ。
メイドの格好をして自信なさげに立っている。
「あら、洗濯は終わったのね」
メイド服の女の子の手には俺の服があった。もちろんパンツも。
「あの、女郎蜘蛛様・・・」
「なあに?」
暫しの沈黙そして
パリン!という音が静かな部屋に響いた
女郎蜘蛛が近くにあった花瓶をメイドの女の子に投げた音だった。
「なにしてんだアンタ!」
思わず声を荒げたがなんてことない顔で女郎蜘蛛はメイドを睨む
「服だけ置いて出ていきなさい」
メイドは恐怖に染まった顔をしながら服だけベッドの端に置いて頭を下げて、部屋から出ていってしまった。
「花瓶は後で片付けさせるから心配しなくていいわよ」
女郎蜘蛛は先程の笑顔で平静に戻っていたが、見ていた身としては気分が悪い
「どうしてあんなことをしたんだ!」
「大丈夫よ。あの娘は可能性に気づいていないだけ。あの娘、なんだと思った?」
「気の弱いメイド・・・?」
「土蜘蛛よ。大きな蜘蛛の妖怪。本来なら怖じ気づくことなんて何もないのにあんな態度なのが気に食わないだけ」
可能性に気づかなきゃなんでも無駄に終わるのにね、と皮肉めいたように呟く。
「で、貴方、名前は?」
「本当に突然だな!?せめてパンツくらいは履かせて下さいよ」
慌ててパンツを履き、ホッと一息つく。
パンツって偉大だな・・・
「小泉です」
「小泉洋です」
「大泉じゃなくて?」
「確かに天パですけれど違います」
「八雲でもないのね・・・」
「えっと誰ですか?」
「妖怪界のヒーローよ」
「人間ですか?その人」
ホントにノリが悪いわねえ。
なんて言うその顔は確かに楽しそうにしていた。
これはオモチャにされること間違いないな。
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