第15話 衣女 vs 伊勢新九郎宗瑞
僧のリーダーが叫ぶ。
「薙刀だ。薙刀を使え。足を払うのだ」
僧たちが薙刀を持って、
「あはははは。そんなもので、アタシが倒されると思うのかい。これでも食らえ」
そう言うと、
ブオオオオオオ~ン!
「あひやあああ・・・ぁぁぁぁぁ」
結衣が叫んだ。
「キャー。何というお下品!」
宙に舞った僧たちの身体はものすごい勢いで、僧房を飛び越えて・・・はるか向こうの夜空に消えていった。
それを見た僧のリーダーが怒った。
「おのれ、化け物め! そうだ。『とりもち棒』だ。『とりもち棒』を持ってこい」
五、六人の僧が僧房の中に走って行った。
京介は首をひねった。
『とりもち棒』だって?・・・そんな武器があったのか?
・・・・・
僧たちは僧房からすぐに表れた。みんなで大きな丸太のようなものを担いでいる。丸太は直径1m、長さ5mほどの大きさだ。丸太の先には何か白いものが塗られていた。
僧のリーダーが大声で叫んだ。
「それ、『とりもち棒』をあの茂みのところに突っ込むのだ」
僧たちが大きな丸太を地面に立てて、「エイサ、エイサ」とみんなで掛け声を掛けながら、それを
結衣の声が飛んだ。
「何よ、あれ? あんたたち、何をすんのよ?」
僧のリーダーの下知も飛んだ。
「それ、あの茂みを『とりもち』で固めてしまえ」
丸太の先端の白いものが
「あの白いものは『とりもち』です。
思わぬ言葉に京介が反応した。
「と、『とりもち』だってぇ?」
「そうです。鳥や昆虫をくっつけて捕まえる『とりもち』です」
結衣が仰天する。
「何ですってぇ、『とりもち』ですって? そんなものを、あんなところに塗らないでよぉぉぉ!」
呆然と僧たちを見ていた
「何だとぉ。『とりもち』だって! おのれ、なんという気持ちのいいことを・・・いや、ヒドイことを・・・」
「お前たち。許さないよ」
そのとき、僧のリーダーの声がひときわ大きく夜空に響いた。
「それ、『とりもち棒』を引っ張るのだ」
僧たちが「エイサ、エイサ」と掛け声を掛けながら、『とりもち棒』を引っ張り始めた。
「ひぃぃぃぃ、い、痛い。引っ張るなぁ・・・」
「キャー、やめてぇ。そんなところを引っ張らないでぇぇ・・・」
「おのれぇ。これでも食らえ!」
すると、
ドドドドドドドド・・・
その水は激流となって地面に落ち、たちまち渦を巻いた。
僧たちの『とりもち棒』も水流に押されて・・
「うわあああぁぁぁぁ・・」
地面に落ちた大量の水は、あっという間に京介、結衣、
京介は咄嗟に結衣と
「山瀬さん、
京介はそう言うと・・半分壊れて、斜めに地面に倒れている鐘楼の屋根に飛び乗った。急いで、結衣と
二人の身体が鐘楼の屋根に上ると同時に・・水が押し寄せてきて、たちまち、鐘楼の周りの地面が見えなくなった。鐘楼の周りで、水がゴーゴーと音を立てて、濁流となって流れている。
結衣が濁流を見ながら、呆然と言った。
「な、何なの、この水は?」
「これは・・その・・
結衣が手で股間を押さえながら、飛び上がった。
「オ、オシッコですって・・なんて、オ下品なのぉ・・いやぁぁぁぁぁ」
すると、
「お前たち、そんなところに逃げても無駄だよ。これでも食らえ!」
そう言うと、
「キャー。
京介たちの眼の前に・・
「キャー。私のお尻を・・そんなに近づけないでぇぇぇぇぇ・・は、恥ずかしぃぃぃ・・・」
京介は周りを見た。ここは、壊れて傾いた鐘楼の屋根だ。周りは、
絶望が京介を襲った。
そのときだ。
隣の僧房の屋根から大音声が聞こえた。
「待てぇぇぇぇ!」
京介たちが声の方を見ると・・僧房の屋根に
新九郎の手には弓が握られている。新九郎の大声が続く。
「妖狐め! 隙を見せたな!」
新九郎の弓から矢が飛び出して・・
非有名観光地不思議旅 永嶋良一 @azuki-takuan
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