第14話 衣女 vs 修善寺の僧侶

 さらに、衣女きぬめの身体が大きくなって・・・とうとう身長20mを超える大女になった。京介たちの前に、結衣と同じ顔をして、結衣と同じミニスカートのセーラー服を着た巨大な女性が立ちはだかった。


 京介たちの頭上からの結衣の声がした。衣女きぬめだ。


 「お前たち、もう許さないよ。全員、食ってやろう・・・これでもくらえ」


 衣女きぬめがミニスカートの中の足を大きく後ろへ上げると・・・次にすさまじい勢いで眼の前の鐘楼を蹴り上げた。衣女きぬめのミニスカートが大きく翻った。京介の眼に衣女きぬめのむき出しのオッパイが大きくボヨ~ンと揺れるのが見えた。


 次の瞬間、木造の鐘楼が木っ端みじんに消し飛んだ。木くずの中から、釣鐘が宙を飛んで・・・京介たちの頭上に振ってきた。


 「あぶない・・・」


 咄嗟とっさに京介は結衣と廓代くるわよを抱えて横に飛んだ。さっきまで京介たちが立っていた場所に釣鐘が落ちてきた。激しい音がして地面が震えた。


 ドッドーン・・・


 土煙が上がって、境内に敷いてあった小石が舞った。地面に倒れた京介たちの頭上に無数の小石が広がった。


 京介は急いで、結衣と廓代くるわよの顔を自分のセーラー服のブラウスの胸に押し付けた。


 ゴホン、ゴホン・・・結衣と廓代くるわよが京介のセーラー服にしみ込んだ『たい肥』の臭いにむせた。しかし、京介は構わず二人の顔を自分の胸に押し付ける。そして、眼をつむって、二人の身体の上に自分の身体をかぶせた。


 その上に小石が落ちてくる。


 京介の身体を無数の小石が叩いた・・・京介は身体の痛みに耐えた。


 ようやく、小石の落下が止んだ。京介は顔を上げた。


 眼の前に、満月を背にした衣女きぬめの巨大な身体が立っていた。満月の影の中で、衣女きぬめがにやりと笑うのが分かった。衣女きぬめが右足を上げた。巨大なスニーカーの底が見えた。そして、ものすごい勢いで、その底が京介たちの頭上に落ちてきた。京介たちを踏みつぶそうとしているのだ。


 衣女きぬめの声が聞こえた。


 「死ね・・・」


 もう逃げる暇はない。ものすごい圧力が頭上に迫った。


 駄目だ。踏みつぶされる・・・


 京介はもう一度目をつむった。万事休すだ・・・


 ・・・・・


 京介は眼を開けた。何故か、衣女きぬめの足は落ちてこなかった。


 「どうなったんだ?・・・・・」


 次の瞬間、京介の眼の前がピンク色に変わった。


 何か柔らかいものが頭上から降ってきて、京介、結衣、廓代くるわよの三人を包みこんだのだ。京介が頭上の柔らかいものを触ると・・・ピンク色をした巨大な布だった。


 布?・・・


 見ると、布には大きな穴がいくつも開いている。京介たち三人はその穴の一つから上半身を出して・・・頭上を見上げた。


 京介たちの頭上、わずか数十cmのところに、衣女きぬめのスニーカーの底が見えた。何故かスニーカーが、京介たちの頭上で静止しているのだ。さらに視線を上に上げると・・・衣女きぬめのミニスカートの内部が見えた。衣女きぬめの両手がミニスカートの中にあった。つまり、衣女きぬめは右足を宙に浮かせて、左足だけで立って、ミニスカートの中に両手を置いているのだ。不思議な姿勢だった。


 京介は首をひねった。 


 衣女きぬめは何をしているんだろう?・・・


 すると、結衣が周囲のピンクの布を手で触りながら首をひねった。


 「な、何よ、これ? 何の布なの?」


 廓代くるわよも布を手で触りながら答える。


 「こ、これは・・・衣女きぬめのピンクの花柄パンティです」


 京介と結衣がその声に驚いて廓代くるわよを見た。廓代くるわよが二人に説明する。言いにくそうだ。


 「つまり、その・・・これは、山瀬さんが今履いていらっしゃるパンティです」


 結衣が絶句した。


 「ど、どうして、私のパンティが・・・」


 「さっき、衣女きぬめが山瀬さんに化けて・・・『おならダンス』の『おなら』でパンティが破れましたよね。それで、そのまま、衣女きぬめが巨大化したので、破れたパンティもそのまま巨大化したんです。でも、その破れたパンティが衣女きぬめが右足を上げたはずみで落下してしまったんです。・・・だから、これは、山瀬さんが今履いていらっしゃるパンティでもあるわけです」


 結衣が顔を手で覆った。


 「わ、私が今履いてるパンティですって?・・・キャー。恥ずかしい・・・」


 京介が宙に止まっている、衣女きぬめのスニーカーを見上げながら言った。


 「で、でも、槍間やりまさん。衣女きぬめはどうして足を踏み下ろさないの? スニーカーを宙に上げたままで、どうして静止しているの?」


  廓代くるわよが言った。


 「衣女きぬめは足を下ろすことができないんですよ」


 その声に、京介と結衣は再び廓代くるわよの顔を見た。結衣も驚いたようだ。結衣が聞いた。


 「えっ、槍間やりまさん。それはどういうことなの?」


 廓代くるわよがもじもじしながら上を指さした。


 「お答えしにくいんですが・・・山瀬さん、あれなんですよ」


 京介と結衣は、廓代くるわよにつられて、再び頭上を見上げた。


 衣女きぬめの右足のスニーカーは、京介たちの頭上、わずか数十cmのところに止まっている。そして、京介たち三人は衣女きぬめのミニスカートの真下にいる。このため、京介たちの頭上には・・・衣女きぬめのミニスカートの内側が大きく広がっていた。その奥に衣女きぬめの股間が見えた。股間には、ピンクのパンティの切れ端がわずかに残っていて・・・衣女きぬめの両手が、その切れ端をかろうじて押さえていたのだ。


 廓代くるわよが上を指さしたままで言った。


 「足を動かすと、あの切れ端が落ちてしまって・・・その・・・股間が丸見えになるので・・・それで、衣女きぬめは動けないんです」


 京介は上を見上げながら感心した。


 「そ、そうだったのか! 衣女きぬめもやっぱり女性だったんだ!」


 結衣も相槌を打った。


 「そ、そうだったのね! それで、私たち、助かったのね」


 そう言った結衣は・・・次の瞬間、あることに気づいて両手で顔を覆った。


 「えっ・・・? ということは・・・あれは、私の股間じゃないの! イヤ~。恥ずかしい!」


 京介には、結衣の言う意味がすぐには分からなかったようだ。首をかしげながら言った。


 「えっ? 山瀬さんの?」


 京介は衣女きぬめの股間に首を伸ばした。


 そのとき、京介の頬をパシーンと強烈なビンタが襲った。京介が頬を押さえて、のけぞる。


 「ひぃぃぃぃ・・・」


 京介が横を見ると・・・叩いたのは結衣だった。結衣が夜目にも真っ赤な顔で言った。


 「鏑木君。いやらしいわね。私の・・・そ、その・・・そんなとこ・・・見ないでよ」


 そのとき、廓代くるわよが周囲にある『破れたパンティ』のピンクの布を引っ張りながら言った。


 「山瀬さん、鏑木さん。仲間割れしているときではありません。この『破れたパンティ』は、衣女きぬめの左足にかかっています。衣女きぬめは左足一本で立っているわけですから、この『破れたパンティ』を引っ張って、衣女きぬめを地面に倒してしまいましょう」


 廓代くるわよの声に、京介も結衣も『破れたパンティ』の穴から身体を出した。三人は『破れたパンティ』の外側に回って、パンティの裾をつかんだ。廓代くるわよの声が飛ぶ。


 「さあ、三人でパンティを引っ張りましょう。。。。いいですか? イチ、ニの、サァン」


 三人が力を合わせて『破れたパンティ』を引っ張ると・・・衣女きぬめの左足も引っ張られて・・・衣女きぬめの巨大な身体が、両足を上に上げて、尻から横に建っていた僧房の上に倒れていった。そのはずみで・・・京介の眼に、衣女きぬめが両手で押さえていた、股間の小さな布がどこかに飛んでいくのが見えた。


 衣女きぬめの尻が僧房の屋根に落下した。


 ドドドドド~ン・・・


 巨大な音とともに、僧房の一部の屋根と土壁が吹っ飛んだ。土埃が舞った。僧房の中にいた大勢の僧たちが慌てふためいて外に飛び出してきた。ちょうど夕食時だったのだろう。何人かの僧は椀と箸を持っている。僧たちの混乱した声が飛び交った。


 「なんだ?」


 「どうしたんだ?」


 「何があったんだ?」


 そういう声に交じって、「ご飯がゆっくり食べられないよう・・」という悲痛な声も聞こえた。椀と箸を持った僧が叫んでいるのだ。 


 僧房の上に倒れた衣女きぬめを見て、廓代くるわよが手を叩いた。


 「やったぁ~」


 すると、衣女きぬめが立ち上がった。真っ赤な顔をしている。鬼の形相だ。


 「くそぉ~。お前たち、よくもやったな。もう許さないよ」


 そう言うと、衣女きぬめが左足を軸にして、大きく右足を回転させた。セーラー服のミニスカートが翻って、右足が太ももの付け根まであらわになった。


 そのまま右足が回転して・・・巨大なスニーカーが三人にぶつかってくる・・・衣女きぬめの回し蹴りだ。


 「あぶない・・・」


 京介はパンティを手から離すと、結衣と廓代くるわよを抱いて、そのまま地面に倒れた。三人の上を衣女きぬめの右足がものすごいスピードで通り過ぎていく。京介の背中で風が渦を巻いた。渦が京介の身体を地面から持ち上げた。


 衣女きぬめの右足は僧房から出てきた二、三人の僧にぶつかった。僧たちの身体が宙に浮いた。


 「ヒエエエ・・ェェェェェ・・・」


 僧たちの身体が中空高く舞い上がって、悲鳴が満月のかなたに消えていった。


 その一撃で、僧たちが衣女きぬめの存在に気づいた。僧たちが口々に叫んだ。


 「お~! なんと! 巨大な女の化け物だ!」


 「化け物だぞ。武器だ。武器を持ってこい」


 「明かりも持ってこい。松明たいまつだ」


 椀と箸を持った僧も叫ぶ。


 「ご飯の残りが食べたいよう」


 京介が僧たちを見ると・・・さっき出会った、伊勢いせの新九郎しんくろう宗瑞そうずい隆渓りゅうけい繁紹はんじょうはいないようだった。僧たちの服装は、新九郎しんくろう繁紹はんじょうに比べると誠に地味だった。きっと修善寺の中では下っ端の僧たちなんだろう。


 何人かの僧がまだ建っている僧房の中に戻っていって、刀や槍、弓矢、薙刀などの武器を持って戻ってきた。みんな、火をつけた松明たいまつも手に持っている。それを見たリーダー格の僧が指示する。


 「それ、明かりを化け物にかざせ」


 その声で、僧たちが一斉に松明たいまつ衣女きぬめに向かってかざした。衣女きぬめのミニスカートの中が、松明たいまつの明かりで煌々こうこうと夜空に浮き上がった。さっき京介が見たように・・・衣女きぬめの股間にはもうパンティの布はなかった。すなわち、股間は丸見えなのだ。


 それを見た結衣が叫んだ。


 「キャー・・・やめてぇ! あれは、私の・・・その・・・あれなのよぉ。そんなところを照らさないでぇ!」


 しかし、僧たちには、まさか女性の股間が丸出しになっているとは想像もできなかったようだ。僧たちは、松明たいまつに照らされる股間を指さしながら、「あれは何だ?」と首をひねっている。何人かの僧がさらによく見ようと、衣女きぬめの股間に松明たいまつの明かりを近づけた。結衣の声が高くなる。


 「キャー。ますます明るく照らされるぅぅ・・・。止めてぇぇぇ」


 その明かりに、今度は衣女きぬめがまぶしそうに顔を歪めた。


 「猪口才ちょこざいな。これでも食らえ」


 そう叫ぶと、衣女きぬめは右足を後ろに振り上げた。僧たちにもう一度、回し蹴りを食らわそうというのだ。


 しかし、その姿勢は・・・ミニスカートの下から見上げる京介、結衣、廓代くるわよと僧たちに・・・ますます股間をよく見えるようにしたのだった。松明たいまつの明かりに股間がより鮮明に浮き上がった。


 すかさず、僧のリーダーが叫んだ。


 「あそこだ。きっと、あの奥の茂みがあるところが大女の弱点に違いない。あの茂みを弓矢で狙え」


 何人かの僧が衣女きぬめの股間を目掛けて、持っていた弓で矢を射た。何本もの矢が放物線を描いて、衣女きぬめの股間に向けて飛んだ。結衣の声が飛ぶ。


 「キャー。私のあそこに・・・。矢なんか止めてぇぇぇ」


 結衣の声に重なって、頭上から衣女きぬめの声も聞こえた。


 「しゃらくさい」


 衣女きぬめが前かがみになると胸を大きく揺すった。巨大な左右のオッパイがプルルンと揺れて・・・飛んできた矢を空中で薙ぎ払ってしまった。衣女きぬめがすかさず身体を起こして・・・今度は強烈な回し蹴りを僧たちに見舞った。


 再び、何人かの僧の身体が中空高く舞い上がって・・・悲鳴が満月のかなたに消えていった。


 「ヒエエエ・・ェェェェェ・・・」


 僧のリーダーが叫ぶ。


 「薙刀だ。薙刀を使え。足を払うのだ」


 何人かの僧たちが薙刀を持って、衣女きぬめに迫った。


 衣女きぬめが笑った。


 「あはははは。そんなもので、アタシが倒されると思うのかい。これでも食らえ」


 そう言うと、衣女きぬめが僧たちに尻を向けた。パンティが落ちてしまっているので、裸の尻だ。尻の双丘が松明たいまつに光った。僧たちは、突然、眼の前に現れた巨大な尻に度肝を抜かれたようだ。一瞬動きが止まった。すると、衣女きぬめの尻の双丘の間から巨大な音が響き渡った。


 ブオオオオオオ~ン!


 衣女きぬめが巨大なオナラを僧たちにぶっ放したのだ。たちまち、薙刀を持った僧たちが宙に舞った。僧たちの身体はものすごい勢いで、壊れた僧房の屋根を飛び越えて・・・悲鳴とともに、はるか向こうの夜空に消えていった。


 「あひやあああ・・・ぁぁぁぁぁ」


 椀と箸を持った僧も宙に飛んでいる。その声も虚空に消えていった。


 「ご飯が食べたいようおおお・・・ぉぉぉぉぉ・・・」


 それを見て、結衣が叫んだ。


 「キャー。何というお下品なんでしょう!」


 結衣の声に、僧のリーダーの声が重なって響いた。僧のリーダーの顔が怒りで真っ赤になっている。


 「おのれ、化け物め!・・・そうだ。『とりもち棒』だ。『とりもち棒』を持ってこい」


 五、六人の僧が僧房の中に走って行った。


 京介は首をひねった。


 『とりもち棒』だって?・・・何だそれは? そんな武器があったのか?

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