第19話 平和のために

あれから数十人の魔族たちに声をかけた。すぐに承諾してくれる奴も居れば、なかなかうなずいてくれないやつもいた。基本的にみんな戦いを挑んできたのだ。肉弾戦もあれば魔法もあり、何なら知識勝負も挑んできたやつもいたのだ。


もちろん全員叩き潰した。叩き潰したのだが・・・・・・。


「「「「「「リョウ様、私達一同、貴方様に忠誠を誓います!」」」」」」


こんな事になってしまったのだ。

正直俺は、敬われたいとか思っているわけではない。部下を持とうと思っているわけではないし、そもそも論として、魔族たちの主人はフランであって俺ではないのだ。


確かに手伝ってもらいたいと思ってはいる。だが、その後とかは自由にしていただきたいのだ。


「誓わなんでええわアホタレども。君らの主人はあくまでフランでしょうが」

「そ、そのようなことは言わずに! 私達は貴方様にこの忠誠を受け取っていただきたいのです!」

「そうだ! 俺よりも断然強いあんたに従いたいんだ!」

「いや、面倒くさいから本当に嫌なんだけど・・・・・・」


俺なんかよりフランのほうがカリスマ性だってあるし、そもそも俺は今まで平和な日本で生きてきたんだ。戦争などで誰かを動かすなんて事はできるはずがないじゃないか。


「俺はフランよりも弱い。だから君らはフランに忠誠を誓えよ」

「あの方は別です」

「あぁ、別だな」

「なにが別なんだよ! と、とにかく、俺はお前たちを部下にするつもりは全く持ってないからな」

「それじゃあ今回のお手伝いの件はなしということで・・・・・・」

「上司にしようとしているやつを脅すんじゃありませんっ!!!」


くそ、これは言い逃れできなさそうだ。


「フランに部隊を持っていいか聞いてくるから。一応今のところはオーケーだ」

「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」


そう思い、俺は現状承諾をしてしまった。だが、フランが許可をしなければ問題ないのだ。


(そうだよ、フランが許可しなければなんの問題もないじゃないか)

『フラグです』

(うるさい)


俺はフラグブレイカーだと心のなかで叫びながら、フランのところへ行くのだった。




「む、それなら私もその部隊に入るぞ」


などと、よくわからない事を言うフラン。この子はなにを言っているんだろうか。


「ごめん、俺の聞き間違いじゃなければ、フランも俺の舞台に入ると言っているように聞こえるのだが?」

「うむ、そういったのだ!」

「なにを言ってんの?」

「嫌だからだな、私もリョウの部隊に――」

「その言葉の意味は理解しとるんだけどもね? なんで魔王が俺の部隊に入ると言っているのかについて疑問に思っているのだよ」

「浮気されるかもしれんだろう?」

「そんな事するわけがなくないか!?」


あれ、もしかして俺ってそんなに信用がないのかな? 浮気とか絶対にしないぞ!? だってフラン一筋だもん。


「だ、だって・・・・・・私よりもおっぱいの大きい子だっているではないか」

「胸の大きさで俺の感情は変わらないんだけど!?」


そして女性の皆さん胸を隠す動作をしないでくださいフランにブッコロリーされるので。


「男は皆、おっぱいの大きいい娘が好きなのだろう?」

「男全員大きい胸が好きだと思わないでくれるかい!? たしかに大きい娘がいたら視線はそっちの方に言っちゃうかもしれないけど、流石に全員が全員大きい方が好きなわけではないんだぞ!?」

「・・・・・・見るのだな」

「ごめんなさい」

「わ、私だって・・・・・・ないわけではないのだぞ・・・・・・?」

「もうこの話やめない? ねぇ、俺がいたたまれないからやめようぜ? な?」

「うむ、たしかにこんな話、堂々とする内容ではないな。うむ」


そうだ! そんな堂々とする内容ではないのだ。下手したら俺の性癖が語ってしまうからこれ以上の話は厳禁である。


「今日の夜、リョウの部屋に行く」


終わったと思ったら耳元で、俺にしか聞こえない声でフランがそういう。なるほど、夜這いするってことかなるほど。


(せめてもうちょっといい雰囲気のときに言ってほしかったなぁ)


みんなの前で言うことではないと思う。うん。


「それで、舞台を持っていいかと言う話だが、承諾しよう。ただ、リョウは人を動かすより、自分一人で動くほうが楽であろうから基本は部隊で動くことは基本ない。ただ、普段の訓練は絶対に欠かさないようにするのだ。多分リョウが良い訓練を考えてくれるぞ」

「なるほど、そこは丸投げなんすね」

「ついでに私もその部隊に入るのでよろしく頼むぞ」

「おうおうおう勝手に決めちゃってるじゃんか。まぁ彼らがいいなら全然いいけどさ・・・・・・」


と、視線と耳を飛ばしてみると。


「魔王様が私達の部隊に!? 隊長になるのでしょうか・・・・・・?」

「いや、副隊長だと思いますが」

「なんで魔王様が副隊長なのだ。隊長だろう」


ワイワイガヤガヤしている。まぁ、俺は全然副隊長で問題ないんだがな。


「私は舞台に入るが、基本は普通に隊員としているぞ」

「それなら魔王として君臨してくれ」

「それなら私直属の部隊とする!」

「さっきと言ってること全く違いますよフランさん!?」


流石に暴論がすぎるのではないかと思っていたが、以外にも後ろの奴らは涼しい顔をしていた。


「それが一番いいと思いますわ」

「うむ、いい就職先であるな」

「しっかり魔王様をお守りします!」


こういう形のほうがたしかにいい。あくまでフランは魔族の頂点に立つ女なのだ。ふんぞり返れとは言わないが、上でしっかりと民を導いていただきたい。


「ま、最初の仕事は民に水を配るってところからだ」

「「「「「「御意!」」」」」」


え、みんな初対面だよね? 息がぴったりすぎじゃないかな!?

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勇者(ド屑)に敗北した魔王様が強姦されそうになってたので勇者(ド屑)をボコった ナギさん @nagisansa

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