第16話 激怒
「フラン!」
「あ・・・・・・が・・・・・・」
「クフフ、私は何でもすると言ったでしょう?」
「フランを離せ! このクズ野郎!」
「フフフ、私は悪魔と言われるものなのです。クズなどと、そのような生やさしいものなどではないのですよ」
「くっそが・・・・・・!」
(脳みそをフル回転しろ・・・・・・どうやったらフランを助け出せる? やつの手はフランの首にある。下手に動いて首を折られたらどうしようもできない・・・・・・かと言って何もしなければ酸欠でフランが死ぬ・・・・・・どうする・・・・・・どうすればいい)
「リョ、ウ・・・・・・にげ・・・・・・て・・・・・・」
脳みそをフル回転している時、そのような言葉が耳に届く。
「何言ってんだバカ! お前を置いて逃げるわけ無いだろ!?」
当たり前のように俺はフランのその提案を却下する。そりゃあそうだ。目の前に自分の妻を置いて逃げる夫などあってはならない。家族を守るのが夫として、男として当たり前のことだから。
「リョ・・・・・・ウ・・・・・・――」
ストンとフランの手が脱力したのがわかる。分かってしまう。
「ふ・・・・・・フラン?」
頭が真っ白になる。
「――」
声は一切でない。自分で自分が激怒しているのがわかる。すべて、すべてこの悪魔がやったのだ。そう考え、やつの目を見た瞬間、完全に怒りをあらわにする。
「ぐ・・・・・・う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
獣のような声が漏れる。
「・・・・・・なんですか? その姿は・・・・・・」
やつのその言葉に俺は首を傾げる。相手は何を言っているのだろうか。
「はぁ、まあいいでしょう。私には関係のないことです」
本当にどうでも良さそうにやつはそう言う。たしかにやつの言う通り、体に違和感はあるが、今はそんなことはどうだっていい。
「なぜなら次は、あなたの番ですからね」
「いや、今度は俺が貴様を滅ぼす」
そういった瞬間にやつから高速なエネルギー弾が無数に飛んでくる。そのエネルギー弾を俺は片手で弾く。
「なに!?」
「遅い!」
やつがコンマ数秒戸惑っている内に距離を詰め、腹部にアッパーを叩き込む。
「ぐ・・・・・・調子に・・・・・・乗るなぁ!!!」
やつのフックが俺の左肩に入り、衝撃がくる。少しバランスを崩した俺にやつは追い打ちをかけるように、膝蹴りを俺の顎に叩き込んでくる。そのまま後ろに吹き飛ばされるが、後ろにあった瓦礫に足を付き、そのままやつに飛来して足蹴りをする。
「舐めるな・・・・・・!」
やつは体を傾けることにより避ける。だが、そのまま逆の足を横薙ぎに蹴り、体を傾けて避けたやつを数メートル吹き飛ばす。吹き飛ばされたやつはその場に倒れ込む。
「なに!?」
やつは俺の板方向に目を向けるが、もうそこに俺はいない。なぜなら俺はやつの後ろにいるからである。それに感づいて、後ろを向くが、すでに遅い。やつの体を蹴り上げ、やつの浮いた体にストレートパンチを叩き込み、吹き飛ばす。
「ぐ、ぐぐ・・・・・・ぐあああぁぁ!」
「・・・・・・」
「認めない・・・・・・認めないぞ」
やつの言葉からは敬語が消えていた。余裕がなくなってきたのだろう。
「この私が下等な吸血鬼ごときに・・・・・・!」
「ごちゃごちゃと寝言ほざいてんじゃねぇ」
「ぐ、ぐぐぐ・・・・・・!」
「貴様はもう謝ったって許さない・・・・・・!」
手を前に出し、衝撃波を発する。どうやっているのかは分からない。できるような気が下からやっただけだ。
「なに!?」
数メートルほど後ろの瓦礫にやつは突っ込み、砂埃が舞う。
「・・・・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・・・・ハァァァ」
やつは深呼吸をして、呼吸を整える。
「私としたことが、少々焦って動きが鈍くなってしまいました」
そうやつは言うと、口調が元に戻った事に気が付く。どうやら一旦自分を落ち着かせたらしい。
「冷静に対処すればあなた程度、十分に倒すことができるのに・・・・・・」
頭を抱え、笑いながらやつはこう言い放つ。
「もうここまでです。あなたを全力で潰して差し上げますよ」
と・・・・・・。
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